HOME雑 誌medicina誌面サンプル 47巻9号(2010年9月号) > 連載●アレルギー膠原病科×呼吸器内科 合同カンファレンス

●アレルギー膠原病科×呼吸器内科 合同カンファレンス


第6回

関節リウマチ患者の胸水
自己免疫は膠原病から? 呼吸器疾患から? それとも?

岡田正人(聖路加国際病院アレルギー膠原病科(成人・小児))
仁多寅彦(聖路加国際病院呼吸器内科)


後期研修医(アレルギー膠原病科) 今回は,関節リウマチに胸水を合併した患者さんですが,胸水の診断に関して意見が分かれた症例です.

 20年前から関節リウマチに罹患している67歳の女性です.当院に紹介受診となった3年前からは,サラゾスルファピリジンにメトトレキサートを追加し低疾患活動性(DAS28 2.9)のコントロールでした.しかし,お茶の先生で足首が痛いと正座ができないので困るとのことで,1年半前からインフリキシマブを開始され,その後は寛解状態を保たれておりました.今回の入院8週間前に左冠動脈前下行枝の急性心筋梗塞で循環器内科に入院しステントを留置されています.入院4週間前に38.3℃の発熱,咽頭痛,左胸部に“チクチク感”があり外来を受診されましたが,胸部X線,心電図検査では前回退院時と変化なく,上気道炎の診断でアセトアミノフェンを処方され解熱し症状もいったんは改善しています.しかし,入院1週間前に再度発熱37.8℃,左胸部のチクチク感,軽度の咳嗽が出現したため外来を受診なさり,胸部X線にて胸水貯留を認め入院となっています.

(写真は本誌をご覧ください)
図1 入院時胸部単純X線写真
図2 入院時胸部CT

呼吸器内科医 胸部単純X線写真(図1)では,心拡大と左胸水の貯留を認めます.肺野には浸潤影はなく,血管影の増強も目立ちません.同時に施行した胸部単純CT(図2)での追加の所見としては,左側だけでなく右側にも少量の胸水が認められ,心外膜の肥厚を伴った心嚢液の貯留が明らかになりました.縦隔・肺門のリンパ節の腫大はありませんでした.

 この時点では鑑別としてはどのようなものを考えましたか.

後期研修医(アレルギー膠原病科) 入院時は関節リウマチ自体による胸水も考えられますが,免疫抑制剤,特にTNF阻害薬を使用中の患者さんですので結核を含めた感染症の除外が必要と考えました.

呼吸器内科医 TNF阻害薬投与前には結核のスクリーニングをすると聞いていますが,この患者さんではどうでしたか.

後期研修医(アレルギー膠原病科) 開始前スクリーニングではツベルクリン反応陰性で胸部画像的にも問題ありませんでしたのでイソニアジドの予防投与も行っていません.半年前には投与開始1年ということでクオンティフェロン(QFT)も行っていますが陰性でした.最近の結核曝露歴もありませんでした.

(つづきは本誌をご覧ください)