HOME雑 誌medicina誌面サンプル 47巻7号(2010年7月号) > 連載●アレルギー膠原病科×呼吸器内科 合同カンファレンス

●アレルギー膠原病科×呼吸器内科 合同カンファレンス


第4回

結節性紅斑とTNF阻害薬は偶然か?

岡田正人(聖路加国際病院アレルギー膠原病科(成人・小児))
仁多寅彦(聖路加国際病院呼吸器内科)


(写真は本誌をご覧ください)
図1 結節性紅斑
図2 抗TNF製剤開始時のX線
図3 胸水出現時(抗TNF製剤開始11カ月後)
図4 胸水出現時のCT
図5 胸腔鏡所見と生検時の画像
後期研修医 今回は複雑な症例なので,経過をまず提示させていただきます.患者さんは60歳の女性で,2年2カ月前から手指の関節炎を自覚し,2年前に近医整形外科からアレルギー膠原病科外来に紹介されています.典型的な分布の対称性多関節炎がPIP(proximal interphalangeal joint;近位指節間関節),MCP(metacarpophalangeal joint;中手指節関節),MTP(metatarsophalangeal joint;中足指節関節)に認められ,リウマトイド因子陽性,抗CCP抗体強陽性などもあり,関節リウマチの診断にて治療を開始されました.サラゾスルファピリジン,メトトレキサートに加えて1年6カ月前からTNF阻害薬を開始され関節リウマチは寛解状態でした.1年3カ月前に結節性紅斑(図1)を発症し皮膚科に入院なさいましたが,安静のみで軽快し10日間で退院しておられます.結核などの感染症は否定的で,薬物も特に新規に開始したものはありませんでした.

呼吸器内科医 TNF阻害薬投与中の患者さんですので,慎重に結核を除外する必要がありますが,どのような検査がされていますか.

後期研修医 呼吸症状は全くなく,胸部CTは撮られていませんが胸部単純X線写真は正常でした(図2).TNF阻害薬投与前に行われたツベルクリン反応(ツ反)も陰性でした.

アレルギー膠原病科医 結節性紅斑の鑑別としては,どのようなものが挙げられますか.

後期研修医 感染症,薬剤,自己免疫疾患が挙げられると思いますが,特発性で特に誘因の認められないものも多いと思います.この患者さんの場合は,症状も自然に改善し,TNF阻害薬も開始から3カ月たっており,継続しても皮疹の再発はありませんでしたので,特発性と考えられていました.その後,順調に経過していましたが,半年後に血清KL-6の軽度上昇が認められ,特に呼吸器系の自覚症状はありませんでしたが,胸部単純X線写真を撮影したところ,右側優位の両側胸水の貯留を認めました(図3).呼吸器内科にコンサルトし,胸部CTと胸腔鏡検査が行われています.ご解説いただいてもよろしいでしょうか.

呼吸器内科医 まずCT(図4)ですが,縦隔条件では,単純X線写真でも指摘されているように右側優位の両側胸水を認めます.胸膜の石灰化やプラークはありません.造影はされていませんが縦隔や肺門リンパ節の石灰化や明らかな腫大はなさそうです.肺野条件では肺野に明らかな結節性病変や浸潤影はありませんでした.細かい所見ですが,右中葉と右下葉の葉間の胸膜に不整な肥厚があることが気になったので,胸水検査を行う際に,局所麻酔下に胸腔鏡検査も施行しました.胸水は赤褐色で混濁はなく,生化学検査・培養検査・細胞診を提出しました.胸腔鏡所見(図5)では,胸腔内はフィブリンの析出や胸膜の癒着はなく胸膜の観察は容易でした.胸膜はやや発赤が目立ち,表面が一部白色になっている部分があったため,壁側胸膜側を生検し病理組織検査に提出しました.

(つづきは本誌をご覧ください)