HOME雑 誌medicina誌面サンプル 47巻5号(2010年5月号) > 連載●アレルギー膠原病科×呼吸器内科 合同カンファレンス

●アレルギー膠原病科×呼吸器内科 合同カンファレンス


第2回

関節炎+間質性肺炎=膠原病?!

岡田正人(聖路加国際病院アレルギー膠原病科(成人・小児))
仁多寅彦(聖路加国際病院呼吸器内科)


後期研修医 関節炎と間質性肺炎にて紹介されてきた,特に既往のない49歳女性です.来院1年ほど前から肘,手首などに関節痛があり,来院数カ月前からは肩の痛みを自覚していました.入院2週間前に咽頭痛と気道感染症を疑う症状があったため胸部単純写真を撮り,間質性肺炎を認めたため,膠原病疑いで紹介となりました.

アレルギー膠原病科医 第一印象はどうでしたか.

後期研修医 リウマチ肺を疑われていたのですが,手の関節,MCP(metacarpophalangeal joint;中手指節関節),PIP(proximal interphalangeal joint;近位指節間関節)などにも腫脹はなく,関節リウマチではないという感じがしました.

アレ そうすると,関節リウマチ以外で関節炎と間質性肺炎を合併する膠原病を鑑別する必要がありますね.どのようなものが挙げられますか.

後期研修医 全身性硬化症,SLE(全身性エリテマトーデス),顕微鏡的多発血管炎などたくさんありますが,今回の患者さんのように膠原病としての全身症状がはっきりしないうちに間質性肺炎が先行しやすいものとしては,皮膚筋炎・多発性筋炎(polymyositis/dermatomyositis:PM/DM)が挙げられると思います.間質性肺炎を合併する筋炎患者のうち,間質性肺炎が先行する患者,筋炎症状と同時に起こる症例,筋炎ののちに間質性肺炎が合併してくる場合がだいたい3分の1ずつという報告があります.ということで,主に筋炎を念頭に追加問診と診察をして基本的な検査を行いました.

アレ そうですね.外来では特にそうですが,患者さんの話を聞き鑑別診断を考え,その鑑別診断を標的として特異的な問診をし,その後に通常の診察をして,またフォーカスを絞った診察も行い,また鑑別を考えて結果によって決定が変わるかどうかを考えて検査を組み立てていくという当たり前のことの繰り返しが大切ですね.具体的には,何がわかりましたか?

後期研修医 「肩の痛み」というのは,「上腕の筋肉痛」で,肩の上での上肢の運動が筋力低下のため少し困難だったことが原因でした.下肢の筋力は比較的保たれていましたので歩行や立ち上がりは問題なく,本人もあまり筋力低下に気づいていなかったようです.

(写真は本誌をご覧ください)
図1 メカニックハンド
親指と人差し指の対側面に角化を伴う皮疹が認められる.
図2 Gottron 皮疹
膝の伸側の皮疹

 皮膚筋炎を思わせるような皮疹1)は顕著ではありませんでしたが,よく見るとメカニックハンドのようなカサカサした皮疹が人差し指の内側にあり(図1),Gottron徴候も指の伸側にはありませんでしたが,膝にありました(図2).

 結局,筋電図,筋生検も筋炎に一致する所見でしたので皮膚筋炎と診断し,年齢相応の悪性腫瘍のスクリーニングを行い,免疫抑制薬投与前のスクリーニングを行い治療を開始しました.自己抗体としては抗Jo-1抗体は陰性でしたが,大学病院にお願いして検査したところ抗aminoacyl-tRNA synthetase(ARS)抗体のひとつである抗PL-12抗体が検出されています.

アレ 抗Jo-1抗体をはじめとする抗ARS症候群は,間質性肺炎を伴う皮膚筋炎として有名ですが,間質性肺炎以外の筋外症状を挙げられますか.

後期研修医 発熱,関節炎,Raynaud現象,メカニックハンドで,一般に治療に完全には反応しにくいとされています2)

 間質性肺炎に関して解説していただいていいでしょうか.

呼吸器内科医 一般的に,PM/DMに間質性肺炎を伴う頻度は,検査方法にもよりますが,5~38%といわれています.ただ,抗PL-12抗体陽性症例では90%と高率に間質性肺炎が合併するという報告もあります3)

(つづきは本誌をご覧ください)

文献
1)Euwer RL, et al:Dermatologic aspects of myositis. Curr Opin Rheumatol 6:583-589, 1994
2)Yoshifuji H, et al:Anti-aminoacyl-tRNA synthetase antibodies in clinical course prediction of interstitial lung disease complicated with idiopathic inflammatory myopathies. Autoimmunity 39:233-241, 2006
3)Kalluri M, et al:Clinical profile of anti-PL-12 autoantibody;Cohort study and review of the literature. Chest 135:1550-1556, 2009
4)American Thoracic Society/European Respiratory Society International Multidisciplinary Consensus Classification of the idiopathic interstitial pneumonias. Am J Respir Crit Care Med 165:277-304, 2002
5)日本呼吸器学会:びまん性肺疾患診断と治療の手引き.特発性間質性肺炎診断と治療の手引き,南江堂,2004
6)Kinder BW, et al:Idiopathic nonspecific interstitial pneumonia;Lung manifestation of undifferentiated connective tissue disease? Am J Respir Crit Care Med 176:691-697, 2007