HOME雑 誌medicina誌面サンプル 44巻13号(2007年12月号) > 連載●外来研修医教育への招待
●外来研修医教育への招待

最終回

教育をとおして 「目指す医療」 の実践へ

川尻宏昭(名古屋大学医学部附属病院 在宅管理医療部 地域医療センター)


 いよいよ,最終回となりました.ここまで,この連載を読んでくださった方に感謝いたします.この連載は,あくまでも,私たちの経験に基づく内容で,読者の方には,「え,これは,うちの施設ではできないな……」と感じられたことが多くあったかもしれません.私たちとしては,そのようなことは承知のうえで,「私たちの経験のなかから,何か今後の外来研修に役立つものを見いだすことができるのではないか」と考え,今までの経験を見直してみました.おそらく,決して多くはないと思いますが,皆さんの施設や皆さんが置かれている状況,あるいは直面している問題に対する何らかのヒントを提示できたのではないか,と思っています.最終回では,今までの繰り返しになるかもしれませんが,外来研修医教育をめぐる本連載のまとめをしてみたいと思います.


■外来研修医教育の目標は?

 「目標を立てる」「目標をもつ」ということは,大変重要なことです.「外来研修の目標は?」と問われて,研修医および指導医がそれぞれ,「それは……」と答えられるでしょうか.「外来診療を行えるようになる」もちろん,これが大きな目標であることには間違いありません.しかしながら,少し抽象的で実感しにくい目標である気もします.

 目標は,その目標に到達する研修医がどんな状況か,によっても違ってきますし,研修を行う病院や施設がどのような状況か,にも影響されるでしょう.一方で,特に初期研修医の外来研修という視点では,どのような状況で研修しても,必ず修得しなければいけない共通した目標というのもあると思います.

 それらを踏まえたうえで,確認しておきたいのは,「目標はしっかりともってください」ということです.つまり,この施設で研修をしたら「こうなる,こうなれる」という「目指す姿=目標」をそれぞれの施設でつくってほしいと思います.その目標をつくるのには,指導医,コメディカルスタッフがそれぞれの施設で,「研修医に,ここで学ぶことでこうなってほしい」という思い(教育目標)を形にし,研修医自身が「自分はこうなりたい」という思い(学習目標)を形にし,その両者をうまくブレンドする作業が必要です.これをぜひ行ってください.そして,その作業を行う過程で最も大切なことは,「患者さんに対してよい医療を行う医師とは?」という問いではないかと,私たちは思っています.

■外来研修医教育での指導医とは?

 本連載第3回で,指導医の役目ということについて,少しお話しさせていただきました.「指導医は一度にいろいろなことに気を配り大変である.それをうまくやるには……」という内容でした.ここで,再度そのことを持ち出すつもりはありません.確認したいことは,私たち指導医は完璧でなくてよく,自らも不完全であることを自覚したうえで,現場から逃げず,常に研修医とともに学ぶ姿勢を持たなければいけないということです.そして,研修医のよき援助者として,患者さんの安全を守る管理者として,研修医,患者さん,スタッフ,病院をつなぐ要であるべきだということです.

(つづきは本誌をご覧ください)


川尻宏昭
1994年徳島大学医学部卒.同年,佐久総合病院初期研修医.2年間のスーパーローテーションおよび2年間の内科研修の後,病院附属の診療所(有床)にて2年間勤務.2001年10月より半年間,名古屋大学総合診療部にて院外研修.その後,佐久総合病院総合診療科医長として,診療と研修医教育に従事.2006年12月より現職.