HOME雑 誌medicina誌面サンプル 44巻9号(2007年9月号) > 連載●外来研修医教育への招待
●外来研修医教育への招待

第9回

こんな場合はどうする?
その5

鄭 真徳(佐久総合病院 総合診療科)
川尻宏昭(名古屋大学医学部附属病院 在宅管理医療部 地域医療センター)


 前回・前々回と,「軸を利用した問題解決法」を利用しても,初診時のみの診察では問題解決に至ることのできない患者さんの対応について一緒にみてきました.特に前回は,そのような対応の難しい患者さんについては振り返りカンファでじっくり掘り下げることが重要なステップであることを示しました.そして今回は,いよいよ実際の再診のときの対応についてみていきましょう.まずはケースのおさらいです.


■ケース

45歳,男性
予診用紙:3カ月ほど前からときどき頭が痛い.市販の鎮痛薬を飲んでいたがよくならない.CTの検査をしてもらいたい.

 研修医Aは病歴・身体所見より,「緊急性のある病態」や「緊急性は高くないが見逃してはいけない疾患」は否定的と考えました.指導医とのディスカッション後に一緒に診察を行い,頻度の高い機能性頭痛について検討しましたが,診断には至らず2週間後に再診の予約を取りました.その日の振り返りカンファでは,患者さんの「受診動機」や「解釈モデル」を確認して,心理社会的問題へのアプローチも試みようという指導医からの提案がありました.

■再診時の対応

 初診の日から2週間が経ちました.指導医と相談のうえ,研修医Aは,まず1人で患者さんにその後の様子を聞きました.振り返りカンファレンスでアドバイスされたことを参考になんとか頑張ったようです.その後,指導医に相談に来ています.

研修医A:先生,2週間前の頭痛の患者さんですが,よろしいでしょうか?
指導医:いいですよ.どうでしたか? その後は?
研修医A:頭痛のほうはあれから少し楽になったようですが,まだ続いているそうです.アセトアミノフェンは飲むと数時間は効いているようですが,完全には痛みはなくならないようです.今日も一通り診察させていただいたんですけど,やっぱり特に異常所見はありませんでした.
指導医:そう.悪化はしてないんだね.それで,前回出ていた受診動機や解釈モデルは聞けたかな?
研修医A:聞いてみたんですけど,あんまりはっきりしたことを言ってもらえなくて…….
指導医:そうか…….で,どういう風に聞いてみたの?
研修医A:えっ,どういう風って…….ふつうに「どうして受診しようと思いましたか?」と「頭痛の原因についてどうお考えですか?」って聞きましたけれど.
指導医:なるほど.うまくいかなかったかな? じゃ,ちょっと一緒に話してみようか.
(一緒に診察室へ)
指導医:Bさん,度々申し訳ありません.また少しお話を伺ってもよろしいでしょうか?
Bさん:ええ…….
指導医:症状は,悪くはなっていないのですね.
Bさん:ええ,悪くなっているというよりは少し良くはなっていると感じます.ただ,すっきりはしないですね.
指導医:そうですか.いままでA先生と私とでいろいろ話を聞かせていただき,診察させていただきました.私たちとしては,Bさんの頭痛の原因を,いろいろと検討しました.その結果をお話ししますね.まず,頭痛で気をつけないといけないものとして,脳内の出血や腫瘍など頭の中の問題や目の病気で緑内障の発作があります.しかしBさんの頭痛は,今までの診察や経過からはそれらを疑うような感じではありません.

(つづきは本誌をご覧ください)


鄭 真徳
2001年群馬大学医学部卒業.同年佐久総合病院初期研修医.2年間の初期研修後,佐久総合病院総合診療科で3年間の後期研修を行う.2006年4月より総合診療科スタッフとして診療と研修医教育に携わっている.

川尻宏昭
1994年徳島大学医学部卒.同年,佐久総合病院初期研修医.2年間のスーパーローテーションおよび2年間の内科研修の後,病院附属の診療所(有床)にて2年間勤務.2001年10月より半年間,名古屋大学総合診療部にて院外研修.その後,佐久総合病院総合診療科医長として,診療と研修医教育に従事.2006年12月より現職.