HOME雑 誌medicina誌面サンプル 44巻4号(2007年4月号) > 連載●外来研修医教育への招待
●外来研修医教育への招待

第4回

いよいよ研修医がやってきた
まずはじめの一歩

山本亮(佐久総合病院 総合診療科)


 これまでの3回では,研修医が外来研修をやることの意義や目的,そして患者さんへの利点などをお話ししてきましたが,今回からは実際的なやり方についてお話ししていこうと思います。まずは,前回お話しした,外来研修の実際的な方法について,順を追ってお話ししていくことにします。前回の「ポイント」で示した「指導医の役割」を確認しながら進めていきましょう。


まず問診票から

 みなさんの病院の外来では,初診患者さんに対して,問診票(予診用紙)を書いていただいているでしょうか? 佐久総合病院総合診療科では図1に示したような,簡単な問診票を患者さんに記入してもらっています。研修医が外来診療を行う前に,まずこの問診票を利用します。

 問診票には,主訴に加えて,年齢,性別が記載されています。この限られた情報から,考えられる病態について簡単にディスカッションをします。例えば,「1カ月間続く咳」が主訴の40代男性を診察するとします。「何を考える?」と質問することで,研修医が考えている疾患を知ることができます。ここで,「上気道炎,肺炎,うーん。他には思いつきません。」と答えるようなら,おそらく十分な診察を行うことはできないでしょう。つまり,ここでは,その研修医の今の状態の確認(学習者診断)を指導医は行います。と同時に,1カ月続く咳(=慢性咳嗽)の原因としてどのようなものがあるのか,それを十分に理解することは今後の課題としても,まずとりあえず目の前の患者さんのこれからについて必要な最低限のことをここでは確認します。具体的には,緊急性のあるものの除外についてや,必ず聞くべきこと,あるいはとるべき身体所見などの確認です。指導医は,これから研修医とともに診ることになる患者さんの状態についての注意を払い,それをもとに,きわめて実際的なアドバイスを研修医に行います。

 このケースの場合,主訴から緊急性のあるものの可能性は低そうですが,この主訴は,いわゆる慢性咳嗽という範疇に入りそうだということを研修医に気づかせ,その原因として,胃食道逆流,post infectious cough,post nasal drip syndrome,喘息,内服薬(特にACE阻害薬)が頻度の高いものとして挙げられるものの,絶対に見逃してはいけない疾患,例えば,肺がんや結核などの存在を意識させることは必要でしょう。そして,それらを診断,あるいは除外するために必要な問診項目,診察項目について確認することも必要かもしれません。ただし,これも,研修医のそのときに実力でどこまでを求めるかは変化します。。。

(つづきは本誌をご覧ください)


山本亮
1996年筑波大学医学専門学群卒。同年佐久総合病院初期研修医。初期研修終了後2年間の一般内科研修後,無床の国保診療所にて3年間勤務。昨年度聖隷三方原病院にて緩和ケア研修を行い,現在,佐久総合病院総合診療科医長として診療と研修医教育に関わりながら,緩和ケアチーム,末期がん患者の在宅訪問診療も行っている。