Editorial

手術・手技による「薬物副作用」の軽減
徳田 安春
臨床研修病院群プロジェクト 群星沖縄

 手術・手技が医学的適応となる患者さんに、適切なタイミングで、適切な方法で行うと、患者さんにとってのアウトカムやQOLをよくするだけでなく、「薬物療法の副作用」から患者を救うことにもなる。短期的に使用する程度であれば副作用の少ない薬剤でも、長期に使用すると思わぬ重大な副作用をもたらす場合があるからだ。

 本企画のパート1(2020年2月号)では循環器・消化器・神経疾患を取り上げたが、今回は「感染症」「内分泌疾患」「整形外科疾患」を取り上げた。

 感染症においては、深部膿瘍(p.1048)などに加え、骨関節や体内異物への細菌感染(p.1055)に対して、抗菌薬投与のみでは治療失敗をもたらすことがある。しかしドレナージなどの手技や手術によって、抗菌薬の使用期間を短くすることができる。

 これには、「薬剤耐性」や「腸内細菌」の課題に対してもプラスの効果がある。抗菌薬の使用は薬剤耐性を誘発するが、抗菌スペクトラムの広い抗菌薬を長期に使用し続けることが、薬剤耐性菌の発生を促す効果が強い。また腸内細菌叢の変化は、さまざまな疾患の部分的な原因であることがわかってきた。肥満や大腸癌、炎症性腸疾患などは、小児期での抗菌薬投与による腸内細菌叢の変化も影響すると考えられている。

 内分泌疾患は、潜在的に発症し緩徐に進行するため見逃されやすい。Cushing症候群や先端巨大症などは、アトラスで断片的な写真を見せられると、その顔貌でsnap diagnosisができる。しかし、高血圧症や糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病の患者さんが多数受診するような外来では、さまざまな体型の肥満者が受診するので、見落とされやすい。普段一緒に生活している家族も、顔貌の変化に気づいていないことがある。むしろ、久しぶりに再会する知人によって指摘されることもある。“財布生検”が役に立つのは、このような場合だ。

 原発性アルドステロン症(p.1067)であれば“手術で寛解する高血圧症”、Cushing症候群(p.1068)であれば“手術で治る可能性のある糖尿病”ということになる。高血圧症や糖尿病の患者が多数いるなかで、この両疾患を見つけ出すことができるかどうかが、最も重要であると言えよう。高血圧や糖尿病の薬物療法にも、副作用はある。薬でコントロールが困難な薬剤抵抗性の高血圧や糖尿病になると、長期合併症で苦しむことになる。

 整形外科領域の症状で多いのは、関節痛や腰背部痛、神経障害性疼痛である。これに対して、「非ステロイド性抗炎症薬」や「オピオイド」が使われることがある。短期間の使用であればよいが、数週間以上の長期投与になると、特に高齢者での合併症が心配となる。非ステロイド性抗炎症薬による腎機能障害や消化性潰瘍、血圧上昇、心不全増悪などがあり、オピオイドには転倒やせん妄、呼吸抑制の問題がある。手技や手術による治療を選択することが、薬物療法の副作用を軽減させる方法にもなると言えることから、その適応を知ることは大切である。