Editorial

消化器疾患を楽しく学ぶ!
「大便強ドリル」

中野弘康
大船中央病院 内科

 消化器症状を訴えて、プライマリ・ケア医を訪れる患者さんはとても多いです。“下痢”、“便秘”、“血便・黒色便”、“腹痛”、“食欲不振”などのコモンな症状から、「健診を受けたらたまたま肝障害を指摘されました」「ピロリっていわれたけど、除菌はどうしたらよいの?」「最近便秘と腹痛で会社に行けません!」「天ぷら食べた後からおなかが痛い」等々まで、その訴えはさまざまです。

 これらすべてに対応することは困難でも、日々フロントラインで患者さんの悩みに真正面から向き合っておられる先生方に向けて、「“消化器領域の知識を整理できる問題集”を作ることができないか」そんなことを漠然と考えていました。

 ちょうどその頃、特集『日本一マジメな おしっこドリル――今これだけは押さえておきたい腎・泌尿器のモンダイ』(本誌2018年11月号)を手に取る機会があり、その素晴らしい内容と構成に感動しました。そこで、企画者であった敬愛する山中克郎先生にお力添えをいただき、多忙を極めるプライマリ・ケア医に役立つクリニカル・パールをたくさん盛り込んだ、「消化器病勉強ドリル=“大便強ドリル”」を企画させていただきました。

 このドリルを開けば、消化器病で悩み・困っている患者さんを助けられるヒントがたくさん詰まっています。この問題集を解くことで、消化器疾患に対する興味が自然と沸いて、読者の皆様の日常診療のレベル向上につながれば幸いです。

 お忙しい中「大便強ドリル」にご執筆いただいた先生方に、心より感謝を申し上げます。


山中克郎
福島県立医科大学会津医療センター

 歳をとると物忘れが激しくなる。妻からの頼みごとを忘れるなんてしょっちゅうだ。

 こんなことがあった。病棟の廊下を歩いていると、向こうから80歳くらいの女性患者が満面の笑みを浮かべながら、ゆっくりとこちらに近づいてくる(どこかで会ったような気がするのだが、どこで会ったのか思い出せない)。

 次第に距離が狭まる(ダメだ。全く覚えていない。差し障りのない話題から話すか。話しているうちに、きっと思い出すだろう)。

 「今日はいい天気ですね。お体の具合はいかがですか?」

 「入院してから少しずつ糖尿病は良くなっています」

 「そうですか。よかったですね」(そうか! 糖尿病の患者さんか。外来で糖尿病患者は何人か治療しているから、外来から入院させた患者さんだな。こんな人がいたようにも思うけど、さて、誰だったかなぁ)

 10分くらい世間話をしていたが、もう話すことがなくなり、「では、お大事にしてください。転ばないように気をつけてね」と別れを告げた。

 反対方向に歩き出した患者さんが突然振り返り、言った。「先生は、水谷先生ですよね?」

 いったい私は誰なんだ!?

 身体診察に熱い闘志を見せる中野弘康先生と、今回は消化器疾患を楽しく学ぶためのドリルを作りました。厳しいご批判をお待ちしています。