Editorial

臨床写真で臨床の世界をより深く広く!!
忽那賢志
国立国際医療研究センター 国際感染症センター 国際感染症対策室

レアな疾患の診断は非常に難しい。なぜなら、レアだからである。これまでに診たことがない疾患は、医師の中にその疾患のイメージがないため、鑑別診断として疾患を想起することができず、診断につなげることができない。

その解決策の1つとして、疾患のイメージを共有することがあげられる。レアな疾患の症例が、どういった病歴で受診し、どのような身体所見があり、どのような検査所見を呈するのか。そのイメージを、科内あるいは研修医の同期たちと共有することで、共有された医師は次から、初めて診る疾患でも鑑別診断にあげ、診断につなげることができるかもしれない。各地域で開催されている症例カンファレンスの醍醐味の1つも、このレアな疾患の情報共有にある。

本特集は、それを「臨床写真」でやっちゃおう、というものである。ご存知のとおり、近年、臨床写真の領域への注目度は凄まじいものがあり、さまざまなジャーナルへの臨床写真の投稿がかなり活発に行われるようになっている。昨年には日本臨床写真学会も設立され1)、ついに臨床写真は医療の一領域としての立場を確立したものと思われる(自作自演含む)。

臨床写真は、1枚の写真に非常に多くの情報を含めることができる。実際に診察をしていない人が、病歴・身体所見・検査所見を丁寧に吟味しても、どうしても診断できないような場合も、写真を見れば一目瞭然ということも時に経験する。本特集は、そのようなレアで診断が難しい疾患における「一目瞭然」な臨床写真を集めた夢の企画である。ちょっと珍しい疾患から、「いや、一生出会うことないやろ」という疾患まで、幅広いスペクトラムの「レアな疾患のコモンな所見」が一堂に会した素晴らしい特集となった。ご執筆いただいた先生方には、この場を借りて感謝申し上げたい。これを読破していただければ、明日から本特集に掲載されている疾患を見逃すことはきっとないだろう、と私は確信している。

本特集は、「レアな疾患を診断できるように」ということで、主に後期研修医や指導医以降の中堅・ベテラン医師を対象とする、いわば<上級編>である。これとは別に、先ごろ発売された羊土社『レジデントノート』増刊(Vol.21 No.11)では「コモンな疾患のコモンな所見」を集めた臨床写真特集を企画しており、こちらは初学者を対象としている。併せて、医学生や初期研修医の指導にご活用いただければ幸いである。

文献
 1)  日本臨床写真学会:第1回日本臨床写真学会学術集会開催.GM Group Dynamics,総合診療 29(1):1,2019.