Editorial

総合診療の力が上がるほど、
専門領域の力も向上する!

陶山 恭博
JR東京総合病院 リウマチ・膠原病科

 『総合診療』で特集企画を、というお話をいただきとても戸惑いました。しかし、ふと、本誌編集委員の山中克郎先生(福島県立医科大学 会津医療センター 総合内科)にかけていただいたコトバが蘇ってきました。「あなたの経験を、これからは継いでいってくださいね」というやさしい声が。すると、私が医師人生を送るなかで憧れた親炙する方々、私淑する方々から教えていただいた知恵を継ごう、と光明が差しました。学年が上がるほど“総合診療力”を磨くチャンスは減ってしまいましたが、より“専門力”を高めるためにも、それが大切だとも実感します。そこで、「リウマチ・膠原病ミミック」というお題で、私自身がもう一度、ベッドサイドや病院の廊下、あるいは講演会などで拝聴したいテーマを、読者のみなさまとシェアする特集を企画させていただきました。

 総合診療力は、きっと診断力を高めてくれます。理想的な“除外”は、専門領域でない疾患を見つけて、さらに治療し治すことによる、「やっぱり専門じゃなかった」という証明でしょう。究極の除外診断は、これは違うと除外を重ねることで非典型的なプレゼンテーションの専門疾患に気づくことでしょう。そこで、“the great mimicker”、そして“the great imitator”と呼ばれる「結核」(p.780)と「梅毒」(p.788)をピックアップしました。梅毒を梅毒と、結核を結核と、診断・治療することへ背中を押してくれる内容です。また、鑑別の思考プロセスについては、膠原病のなかでも除外診断こそが重要な疾患「血管炎」(p.808)と「成人Still病」(p.813)のミミック集をお願いしました。さまざまな全身症状を呈することからウイルス性疾患は臨床家を惑わせますので、「パルボウイルス」(p.793)に気づくヒントもお願いしています。

 「総合診療力=非専門力」があるほど、専門領域に集中できるはずです。併存する非専門領域に上手に対応できるほど、専門領域が残されていきます。意識して落とし穴を上手に避けつつ前に進む経験は、より研ぎ澄まされた、至高のプラクティスにつながります。非専門領域を学ぶ近道は、その道のエキスパートに習うことです。そこで、「顔が赤い+α」(p.798)という見た目へのアプローチ、「腎機能障害」(p.818)の整理の仕方、そして「間質性肺炎」(p.827)の歩き方について、皮膚科・呼吸器内科・腎臓内科からの視点を大盤解説していただきました。

 さらに、総合診療力は、診療のカンを高めてくれます。専門にも非専門にも当てはまらないクリニカルコースで、「何か違うな。変だな」と気づきます。違和感を覚える原因の代表格は、「薬剤性疾患」(p.770)です。膠原病ミミッカーとなる薬剤も取り上げました。

 1つひとつの項だけで1つの特集となるような、エネルギーに溢れた玉稿を頂戴いたしました。最後になりましたが、貴重な知識・経験を文字に起こしていただきましたこと、この場をお借りし、重ねて御礼申し上げます。