Editorial

「疑わないと気づけない中毒症」を
疑えるようになるために

高岸 勝繁
京都岡本記念病院総合診療科

 医学が進歩し、今まで解明されなかった病態が明らかになり、新薬も続々と開発されています。それに伴い薬剤の副作用や中毒症も増えています。目新しいものとしては、免疫チェックポイント阻害薬による免疫関連有害事象(irAEs)(本特集内、名取・陶山論文p.183参照)でしょうか。また、最近使用頻度が増加し、今後もさらに増えると考えられるオピオイドの依存症や副作用・中毒症についても、個人的に注目しています(本特集内、鬼塚論文p.174、野木論文p.178参照)。

 そのような新薬や既存薬剤による副作用の把握や対応は、患者の薬剤歴やお薬手帳を確認することで気づくチャンスがあり、その“アンテナ”(「薬剤の副作用に注意する」という意識)がある医師ならば、見逃すことも少ないと思います。

 その一方で、OTC薬剤やカフェインによる中毒症状、一般外来に受診するような一酸化炭素中毒は、「疑わないと気づけない中毒症」であると考えています。医療者が中毒症を疑い、その病歴を意識して聞き出すことが診断の“キモ”であり、処方薬の副作用や中毒症の診療とはまた違ったアプローチが必要となります。

 本特集では、「症例+解説」を基本とし、そのような「疑わないと気づけない中毒症」を疑えるようになることを、1つの目標として企画しました。

 またそれに加えて、「救急外来で嫌われる症例No.1(註:個人の感想です)」である急性アルコール中毒を、少しでも興味深く診療することができるようになるために、洛和会丸太町病院の上田剛士先生に、実に33編もの文献を引用し、学術的に解説していただきました(p.156)。

 さらにさらに、「一般外来で最も困るNo.1(註:個人の感想です)」である、ベンゾジアゼピン依存症への対応について、南多摩病院の國松淳和先生に、不定愁訴外来のふんだんな経験のもと、語って(解説して)いただきました(p.169)。

 コラムでは、キノコ毒、フグ毒や銀杏中毒など、ちょっとマニアックな自然毒について触れています(p.190、192)(註:個人の趣味です)。

 最後に、本特集の読み方を以下にまとめます(個人の推奨です)。

「免疫チェックポイント阻害薬の副作用」と「オピオイド依存症:ケアと注意点、副作用」、「オピオイドの急性中毒」は、本特集内でしっかりと読み込み、勉強してください。
他のOTC薬剤関連の副作用や、カフェイン、アセトアミノフェン、一酸化炭素中毒、コラムは、気楽に読み物として読んでいただき、「このような薬剤・物質で、このような症状が生じうるのだ」という索引を、頭の中に作成してください。興味を持てば、さらに深く掘り下げてください。
「急性アルコール中毒」は、内容を覚えて、救急外来で後輩に自慢してください。
「ベンゾジアゼピン依存症」は、明日の臨床から生かしてください。