Editorial

オンコ・ジェネラリスト宣言!!
東 光久
福島県立医科大学 白河総合診療アカデミー
白河厚生総合病院 総合診療科

 本稿を執筆している8月初旬は、稀に見る猛暑の夏である。そして、テレビでは通算100回を迎えた夏の甲子園で、高校球児たちが必死で白球を追っている。気がつけば、私はいつの間にか彼らの親の世代となり、毎年わが子を見るような目で選手宣誓を聴いている。

「笑顔だけでは乗り越えることのできない哀しみがありました。しかし甲子園は、勇気・希望を与え、日本を平和にしてきた証しです」

 この言葉は、そのまま筆者の胸を熱くした。

 故 河合隼雄氏は、「病に対する最大の処方は、希望である」というフレーズを好んで用いたという。球児が甲子園で白球を追うがごとく、私たちは医療界で、必死にがん患者と向き合い寄り添っている。今回、私は「オンコ・ジェネラリスト」を、「がんを特別視せずにコモンディジーズの1つとしてとらえ、“患者の人生”という大局的視野をもって、がん診療を実践できる医師」として定義した(p.1188)。オンコ・ジェネラリストは、究極的には、がん患者さんとともに「勇気」と「希望」をつむぎ、日本のがん医療に安寧をもたらす存在となることを強く願ってのことである。

 そう、がん患者さんにも、医療者にも、笑顔だけでは乗り越えることのできない哀しみ・怒り・絶望がある。しかし患者さんは、必ず自分の足でそこから這い上がろうとする。医療者は、手を差し伸べ、支え、歩むべき道を一緒に考える。そこでは、さまざまな不安・悩み・葛藤が表出される。そして、「悩んでも悔やんでも仕方ない」と意を決した患者さんは、それぞれ自分の決めた道を、自分なりの歩幅とペースで一歩一歩前を向いて歩き出す。医療者は、そばに寄り添い、声をかける。選んだ道は、意外にもそれほど険しくはなく、茨の道でもなく、そのたしかな足取りに、患者も医療者もかすかな自信が芽生えてくる。そして、選んだ道に自信をもち、人生に感謝する。

 だからこそ、どの患者さんにも、どの医療者にも、贈りたいフレーズがある。

「ああ、栄冠は君に輝く」

 本特集号を編集・執筆するにあたり、さまざまな提案をしてくださった本誌編集委員の先生方、そして私の意を汲んで快く玉稿をお寄せいただいた各執筆者の先生方に深く感謝の意を表したいと思います。