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病院 2013年2月号(72巻2号)巻頭言

特集
医療の公益性とは
─医療法人制度改革の現状

猪口 雄二(医療法人財団寿康会 寿康会病院 理事長)


 医療の非営利性,公益性については,「医業経営の非営利性等に関する検討会」報告書(2005年)などに集約されている.2006年の第5次医療法改正により,かつての「持分あり医療法人」は経過型となり,新たな法人の設立は「基金挙拠出型医療法人社団」「医療法人財団」等,持分の定めのない医療法人となった.さらに「医療の公益性」についても一定の基準が設けられ,この基準は「社会医療法人」の創設に繋がった.

 しかし,「持分の定めのある医療法人社団」は現在も医療法人の大多数を占めており,移行に伴う課税問題もあり,容易に基金拠出型や持分なしに移行できない.また,そもそも持分を放棄する気のない法人も数多く存在する.

 今回,医療の非営利性や公益性などの考え方,さらに持分の定めなしへの移行の実態などについて,様々な観点から特集を組んだ.

 まず,経済学分野より岩井克人氏に,そもそもの経済のなり立ち,「信任」の考え方について,医療における倫理性など,多岐にわたる話をうかがった.そして,日本の医療の非営利性・公益性について,その纏めの中心におられた田中滋氏に経過も含めて解説をお願いするとともに,高嶋裕一氏には公益事業の視点から医療のあり方を提言いただいた.また,医療法人制度の現状と今後については厚生労働省医政局指導課の小川貴夫氏に,医療法人制度の変遷と課題については医療法人協会の伊藤伸一氏に解説いただいた.さらに,持分なし医療法人への移行の実態については公認会計士の川原丈貴氏,新医療法人制度の検証を医業経営コンサルタント協会の佐久間賢一氏に寄稿をお願いした.

 執筆いただいた論文には,多くの考え方や現状が網羅されている.はたして近未来には,医療そのものが非営利であり公益事業である,と言えるようになるであろうか.また,経過型である「持分の定めのある医療法人」は整理されるのであろうか.そして,医療への株式会社参入は今後も「悪」と決めつけられるであろうか.

 多くの事柄を考えさせられる特集であり,読者と共にさらに考え方を深める必要がある.