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病院 2013年1月号(72巻1号)巻頭言

特集
病院の評価
課題とこれから

伊関 友伸(城西大学経営学部教授)


 1997(平成9)年,日本医療評価機構が病院機能評価事業を始めてから,わが国の病院において医療や病院マネジメントの評価は着実に定着してきた.2012(平成24)年2月現在で,評価事業の認定病院は,全国8650病院中2440病院,全病院の28.2%に達している(日本医療機能評価機構調べ).

 最近では,品質マネジメントシステムの国際規格であるISO 9001の病院への導入や世界基準としての病院評価であるJCI(Joint Commission International)の認定を受ける病院も増えてきている.また,DPCデータ等を二次利用して臨床指標を算出し,医療の質の評価を行う試みも始められている.2010(平成22)年度から開始された,厚生労働省による「医療の質の評価・公表等推進事業」に参加した日本病院会,全日本病院協会,国立病院機構の3団体はDPCデータを活用した医療の質の評価も行われている.さらには,病院現場の改善ツールであるTQM(Total Quality Management)も日常的なものになってきている.

 筆者も,かつて病院に事務職として勤務していた時に病院機能評価(バージョン4.0)を受審し,受審事務の担当者となったことがある.12月24日のクリスマスイブに訪問審査となり,受審の準備で忙しい年末となったのは懐かしい思い出である.

 病院における評価が当たり前のものとなってきている一方,本来「手段」であるはずの評価が「目的」となってしまい,効果が疑問視されたり,職員に「評価疲れ」が起きているなどの問題も指摘されている.

 そもそも,病院の評価を行う場合,数値で定量化して比較しやすいものと,定性的で指標化しにくいものがある.手術の成績などは数値化しやすいが,病院の運営システムなどは数値化しにくい.また,時代の変化により評価の基準そのものが変わることもある.どの評価ツールも万能ではなく限界があり,評価が行われることでツールの改善が行われ,ツール自体の質が向上されていくべきものである.病院における評価が効果を持つには,病院関係者が評価を行うかの目的は何かについてよく理解をし,目的に一番効果のあるツールを選択し,評価の活動を行うことが必要と考える.

 本特集が,わが国における病院評価の質の向上につながる契機となることを期待する.