病院 2012年6月号(71巻6号)巻頭言
特集
変化の時代に事務長に求められるもの
伊関 友伸(城西大学経営学部 マネジメント総合学科 教授)
事務長は,理事長・院長を助けて病院のマネジメントを行う重要な役割を担っている.病院をめぐる経営環境は,年々厳しくなっており,事務長に求められる役割もますます高まっている.しかし,医療現場を訪問すると「よい事務長候補はいませんか」と聞かれることも多い.「よい医師は探せばいるが,よい事務長は探してもいない」という話も聞く.
病院において事務職は,医療資格職でないことから院内での立場が弱く,優秀な人材がなかなか集まらず,いても辞めてしまう.生え抜きの病院職員も,与えられた仕事に籠もってしまい,事務長としての資質が身につかない傾向があったようにも思われる.
本特集では総論として,筆者が「変化の時代に事務長に求められるもの」について論じた.また,「病院事務長に求められる資質」をテーマに,近森会常任理事の川添曻氏,東京大学医学部附属病院事務部長の竹田幸博氏,倉敷中央病院常務理事の富田秀男氏,神奈川県済生会業務担当理事の正木義博氏の4氏に座談会をお願いした.
さらに各論として,今給黎病院事務局長の野口桂一氏,石狩病院常務理事の盛牧生氏,公立芽室病院事務長の江口美生男氏,茨城県立こころの医療センター事務局長の加藤進氏,浅ノ川総合病院理事の谷寛憲氏の各氏に,事務長としての現場報告などをご執筆いただいている.
今回の特集では,筆者を除き,座談会および論文の執筆はすべて病院事務責任者の方々にお願いしている.また,筆者も埼玉県立精神医療センターの総務職員担当主幹の勤務経験があることから,すべて事務職経験者によって作られた特集であるとも言える.
事務長の仕事について,それぞれの想いを発表していただくようお願いしたが,全員が事務長としての「つらさ」や「悩み」より,「喜び」や「感動」を強調されていたことが印象的であった.病院事務長や事務職員にとって,元気が出る特集になったものと考えている.
日本の医療をよくしていくためには,事務部門とりわけ事務長の能力向上が必要と考える.本特集がその一助になれば幸いである.