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【特集】

症状・治療歴から考える
薬の副作用の診断プロセス問題集60題

宮田 靖志(愛知医科大学医学部地域総合診療医学寄附講座・医学教育センター)


 さまざまな身体・精神症状を訴えて患者さんは外来受診され,医師は問診,身体診察,血液・画像検査によってその症状の原因を探っていきますが,諸検査にて異常がないとき,もしかするとこの症状は薬の副作用なのではないかと考えるような診断プロセスをとることが多いと思います.あるいは,病歴聴取の始まりに薬による副作用の可能性に気づいて,診断プロセスを進めることもあります.

 患者さんの症状を薬の副作用と考えて診断プロセスを進めるとき,患者さんの現在の治療歴からどのような薬が出ているかを想像し,その後,実際に処方歴を確認し,副作用を生じている被疑薬によって患者さんの症状が説明できるかを添付文書やさまざまな教科書で裏付けを得て仮診断に至り,何らかの対応をして症状が改善した場合に薬による副作用が原因の症状であったことを確信します.

 一つの薬の副作用は多岐にわたり,そのすべてを覚えて診療することは不可能です.どのようにして患者さんの症状が薬の副作用と考えることになったのか,その思考プロセスと,薬の副作用と判断した根拠を,経験豊かな臨床医がその診断プロセスを提示し,それを皆が共有することで薬の副作用の診断力の向上,ひいては薬の副作用の回避につながります.

 本特集では,患者さんの主訴の原因は薬の副作用であることを前提としています.患者さんの病歴,現在の治療歴などからどのような薬が処方されているのかを想像し,治療薬と副作用についての思考過程を整理します.その後,提示される実際に処方されている薬の内容からどの薬が症状を引き起こしているかを考えることを,さまざまな症状を呈した60症例で繰り返し思考のトレーニングをします.多くの症例を疑似体験することで,薬の副作用の診断プロセスを鍛えることにつながることを期待します.