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特集

すぐ役に立つ
呼吸器薬の標準的使い方

蝶名林直彦(聖路加国際病院呼吸器内科)


 呼吸器疾患ほど,発症機序の異なる疾病を含む臓器別疾患はなく,それは呼吸器が体外と交通した臓器であり,他臓器と強い関連をもちながらひと時も休むことなく体内で機能しているからです.さらに各疾患には慢性と急性があり,またしばしば増悪という両者の間に突発する不測の事態をもつ疾患もあります.投与薬剤の種類としては,癌や感染症・アレルギー疾患をはじめ,種々の肉芽腫性疾患・肺循環障害,多岐にわたる病因による間質性肺炎などに対する治療薬が存在し,しかも投与経路は経口薬のみならず,吸入薬・貼付薬・点滴静注など多彩です.

 次々と現れる新薬に対して,使用法を理解し病態の適切な時期に適量を投与していくことは並み大抵のことではなく,また肺炎,喘息やCOPDなどのガイドラインが次々と改訂され,第一選択薬も時代により変化します.そのため,治療薬の知識をアップデートしていかなければ従来薬の使用を続けざるを得なくなる可能性があります.さらに近年の医療構造の変化から,病院から病診連携を通じて在宅医療への方向性が強まり,大病院で治療を受けていた慢性呼吸器疾患(肺の悪性腫瘍を含む)の患者が,一般開業医で経過観察を受け,増悪期のみ病院での入院加療を行うことが増えつつあります.

 本特集は,このような呼吸器疾患の薬物治療の現状に対して,2014年秋を焦点に,各疾患における薬剤選択と病期ごとの使用法,副作用・相互作用などを,各領域の専門家に解説していただきました.加えてわが国では患者の高齢化がどの先進国よりも進んでおり,処方するのみでは実際の服薬や有効な吸入などに至らない場合もあり,服薬指導の具体的方法も随所に記載していただきました.また,座談会では,外来でも患者数の多い気管支喘息とCOPDを取り上げ,各ガイドラインの概要や最近登場した吸入薬を交えた臨床現場での薬剤選択について,忌憚のないご意見をお聞きしながら,今後の治療の方向性をもお示しいただきました.

 いつの時代にも有り続ける標準的治療薬はないのかもしれませんが,このような月刊誌の特徴を生かし,現在の成書にはないstandardな呼吸器治療薬の知識を,本特集によって少しでも多くの医師の方々に吸収していただければ幸いです.