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特集

免疫反応と疾患

山本一彦(東京大学大学院医学系研究科アレルギーリウマチ学)


 免疫システムは微生物から生体を防御するために存在していると言ってよい.自然免疫系は,病原体と宿主を区別するための分子と細胞でできており,病原体と接触して数時間以内に活性化される.一方,獲得免疫系は,リンパ球とリンパ球により作られる抗体からなり,無限の抗原を認識できる可能性はあるが,病原体との接触から数日かかって機能し始める.獲得免疫系は,微生物に特異的であり,免疫記憶として維持され,再び同じ感染が起こった時には素早く機能する.

 感染症を克服する手段として開発されてきたワクチンは,アジュバントなど自然免疫の力を使いつつ,生体に抗原特異的な獲得免疫とその記憶を獲得させるためのものであり,人類に大きな貢献をしている.しかし,免疫が関与する疾患は感染症以外にも多くある.自己免疫疾患,アレルギー疾患,癌,移植など,多くの疾患に免疫応答が関係している.これらの各疾患でどの程度自然免疫がかかわっているのか,どの程度免疫記憶を伴う獲得免疫がかかわっているのかの詳細は不明である.しかし,疾患の成立と進展におけるこれらの事象を正確に理解できないと,われわれは免疫機能を理想的にコントロールすることができない.これらは疾患の理解と副作用のない免疫治療法を達成するための大きなハードルであり,免疫学がチャレンジしなければならない領域である.

 臨床に携わる医師もこれらの流れの概略を理解しておくことは,疾患の理解と日常診療に重要であると考える.本企画は,臨床医が日常の臨床で知っておくべき免疫学のエッセンスを提供すべく企画した.お役に立てれば幸いである.