今月の主題

末梢血検査異常
何を考え,どう対応するか

奈良信雄(東京医科歯科大学医歯学教育システム研究センター)


 血液疾患として扱われる疾患は,貧血や白血病などを中心とした造血器疾患,血漿蛋白異常症,リンパ系疾患,止血血栓系異常症などである.このほか,肝疾患,腎疾患や膠原病などの全身性疾患に伴う貧血,薬剤の有害事象としての貧血や無顆粒球症,重症感染症や悪性腫瘍に随伴する播種性血管内凝固症(DIC)などがある.

 血液疾患は内科系疾患に属してはいるものの比較的頻度は低く,特殊な疾患としてみられがちである.実際,ベテランの内科医ですら血液疾患は苦手という声をしばしば耳にする.その理由は,血液疾患は迅速に適切な処置を施さなければ重症の出血や感染症で致命的になってしまうことにあると思う.

 しかし,血液疾患もほかの全身性疾患と同じく,患者の症候を的確に把握し,適正な検査を行いさえすれば,確実な診断を下すことが簡単にできる.そして,病態に基づいた治療法も確立しており,旧来のように診断がついてもお手上げといった状態ではない.つまり,もはや血液疾患は「手に負えない」といった病気ではなくなった.

 本特集では,血液疾患を専門とする血液内科医だけでなく,他分野の専門医,総合診療医,研修医,医学生にとっても血液疾患を正しくご理解いただき,日常の診療の参考になるように企画した.

 この特集をご覧いただき,血液疾患は「手に負えない」疾患であるといった誤解や,「できれば診たくない」と敬遠したい気持ちを払拭していただければと願う.