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第7回 医療用医薬品【添付文書の読み方】 井上雅博(ファイザー株式会社)
医薬品に必ず添付されているいわゆる添付文書は,「読みにくい」あるいは「必要な情報がどこに書いてあるかわかりにくい」と思われている方も多いようです. しかし添付文書には医薬品を処方するにあたって必要な用法・用量,さらに安全性にくわえ,開発時からの重要なデータが含まれています.初めて処方なさる時には,ぜひお読みいただくことが,医療事故を防ぐことをも可能にします. 添付文書には何が書かれているか添付文書は,「医療用医薬品の投与を受ける患者の安全を確保し,適正使用を図るために必要な情報を医師,歯科医師および薬剤師などの医療関係者に提供する目的で,医薬品の製造販売業者が薬事法に基づいて作成し医薬品に添付する文書」であり,薬事法第52条により記載すべき事項が定められています. 「添付文書」は1997(平成9)年4月25日に出された課長通知「医療用医薬品添付文書の記載要領について」によって,原則,A4版4ページ以内と規定されているため,欧米の添付文書と比較すると概して,情報が少ないといった指摘があります1). この添付文書を補完する文書として表1のようなさまざまな情報があり,各社のホームページからダウンロード可能となっています.また,添付文書は独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)のホームページにも掲載されており,手元にないときには,そこから必要な医薬品について検索が可能です.
さて,実際の添付文書を読むうえで,以下の3点は,知っておくと臨床医にとり便利です. (1)重要な情報は前段に記載されている. 実際の添付文書を見ると,赤字で印刷された【警告】は必ず最初に記載され,次が【禁忌】となっており,以前よりわかりやすくなっています.そして副作用の項目の前に,慎重投与,基本的な注意,併用禁忌などが記載されています. どうやって最新の情報を入手するか予期せぬ重大な副作用など,薬の安全性に関して緊急かつ重篤な情報の伝達が必要な場合は,厚生労働省の指示で製薬企業が文書の配布や添付文書の変更を行います.また,類似薬や海外で認められた重篤な副作用について,必要と判断されれば,添付文書の【警告】欄あるいは「使用上の注意」に記載が追加されます. このように,添付文書の記載は不変ではなく,副作用・感染症報告制度や製造販売後調査などで得られた情報に基づいて,適時必要な改訂が行われ,添付文書の改訂内容について「緊急安全性情報」や「お知らせ文書」などの形で医療従事者に情報提供が開始されます.添付文書の改訂を知った時は,項目ならびに変更内容について確認してください. 近年,電子カルテやオーダリングシステムがある場合は,重複投薬や併用禁忌について警告機能をもつシステムもあります.しかし,現状の電子カルテでは,他院の処方の監視は不可能であり,個々の医師・薬剤師による地道な努力により医薬品の安全性の確保がなされているのが現状です.患者さんの持参する「おくすり手帳」の内容も含め,薬を処方する際は細心の注意が求められます. 医薬品を処方する際には,ぜひ最新の添付文書はもちろん各社の提供する医薬品インタビューフォームを手元にそろえていただき,緊急安全性情報が発された時は当該薬剤だけでなく,類薬についても注意していただけると幸いです. 医薬品を適正に使用するには,的確な診断に基づき,患者の全身状態にかなう最適な薬剤,剤形で,適切な薬が正しい用法・用量で処方され,十分に患者さんに薬剤について説明がなされ,正確に使用されることが求められます. 添付文書は,医薬品の適正使用に必須な文書であり,併用禁忌例を見逃したり,漫然と変更なく長期の処方がなされることがないように常に最新版の確認をお願いします. 文献 日本製薬医学会(JAPhMed)とは |