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●東大病院内科研修医セミナー

第2回テーマ

骨形成不全症の一例

浦野 友彦・大内 尉義(東京大学医学部附属病院老年病科)


Introduction
・骨形成不全症とは,どんな病気でどんなときに疑うか?
・骨形成不全症に対する薬剤の効果をどのように評価するか?

■CASE

症例】 61歳女性

主訴】 腰痛

現病歴】 小学生の頃に右鎖骨骨折が2回あり,これ以外にも捻挫することが多かった。また,長く歩いたり走ることができなかった。36歳時,尻餅をついた際に坐骨骨折。もともとアザができやすいことは自覚していたが,40歳頃右手首のうっ血を指摘され某大学病院を受診,血管異常を指摘された(詳細不明)。49~50歳時に肋骨骨折が3回ほどあり,52歳頃から腰痛が出現したため某大学病院を受診。骨粗鬆症と診断され,経口カルシウム薬内服にて経過観察となった。54歳時に腰痛が悪化し近医を受診,同医にて55歳時よりエルカトニン(エルシトニン®)20U/週の筋注開始となった。56歳時よりホルモン補充療法を開始し,60歳頃よりエチドロネートに変更するも,効果はみられなかった。2001年7月(61歳時)より腰痛が増強し,脊椎の多発骨折を認めたため2001年10月4日に当科を受診,10月29日に当科第1回入院となった。

家族歴】 親族において多数,青色強膜を有する(図1)。父:噴門癌,母:腎不全・骨粗鬆症(60代より),兄:肝炎,妹:結核・紫斑病,長女:歯科にて歯の異常を指摘(詳細不明),肋骨骨折を疑わせる胸痛あり,おじ・おば(母方):骨粗鬆症。

身体所見】 身長146.5cm,体重48.2kg,BMI22.5,体温36.1°C,血圧136/88mmHg,脈拍68/分・整。頭頸部:眼球結膜;青色(図2),歯;異常色素沈着あり,聴力;左が低下。四肢:手関節の可動域亢進を認める(図3)。

検査所見】 大腿骨頸部骨密度:young-adult mean(YAM)53%。骨代謝マーカー:骨吸収マーカー;尿中デオキシピリジノリン/Cre21.5nM/mM/Cr(2.8~7.6),尿中I型コラーゲン架橋N-テロペプチド/Cre128.4BCE/mmol/Cr(14~52),骨形成マーカー;オステオカルシン13.8ng/ml(2.5~13.0),I型プロコラーゲンC末端プロペプチド193ng/ml (<160)。内分泌ホルモン検査:intact-PTH46pg/ml(10~65),TSH0.96μU/ml(0.57~4.0),fT40.87ng/dl(0.91~1.82),fT33.5pg/ml(2.7~5.5),ACTH16.9pg/ml(9.0~52.0),17-KS4.1mg/day(2.4~11.0),17-OHCS12.4mg/day(2.4~11.0),尿中コルチゾール25.5μg/day(11.2~80.3)。その他の検査:尿中M蛋白(-),RAテスト<20,抗核抗体(-),IgG1,210mg/dl,IgA352mg/dl,IgM125mg/dl

画像検査所見】 胸部X線:CTR49.6%,CPA sharp,lung field;clear,大動脈蛇行(+)。胸腰椎X線ならびにCT:胸椎および腰椎に圧迫骨折を認める(Th12,L1~5),骨棘形成(+)(図4)。

入院後経過】 2001年10月29日(63歳時)に当科入院し,青色強膜・骨量減少・難聴の臨床症状から骨形成不全症I型(歯芽形成不全を認めずIA型)と診断された。11月5日実施の大腿骨骨密度測定にて,YAM53%と骨量減少を認めた。各種検査より他の続発性骨粗鬆症をきたす疾患(副甲状腺機能亢進症,甲状腺機能亢進症,Cushing症候群,多発性骨髄腫など)は除外された。オステオカルシン13.8ng/ml,尿中デオキシピリジノリン/Cre21.5nM/mM/Cr(2.8~7.6)と,高代謝回転型の骨粗鬆症を認めた。そのため,骨吸収抑制の目的にてアレンドロネート内服を開始,外来にてフォローアップとなった。2003年5月の骨密度測定の結果,YAM55%,骨代謝マーカー値は血中オステオカルシン13.2ng/ml,尿中デオキシピリジノリン/Cre9.1nM/mM/Crと,骨吸収マーカーの抑制ならびに骨量増加が確認された。したがって,本症例においてはアレンドロネートの効果はあると考えられ,以後もアレンドロネートが内服を持続し,定期的に骨密度測定ならびに骨代謝マーカー測定を行いフォローアップしていく予定である。

Problem List
・骨形成不全症(IA型)
・骨形成不全症を原因とする続発性骨粗鬆症

骨代謝マーカーならびに骨密度測定より高代謝回転型の骨量減少が確認されたため,骨吸収抑制薬であるビスホスホネート製剤(アレンドロネート)を選択し,内服を開始した。

(つづきは本誌をご覧ください)