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●聖路加Common Diseaseカンファレンス

第21回[アレルギー膠原病科編]

アレルギー疾患の基本診療を身につけよう

上地英司・山口賢一・岡田正人(聖路加国際病院アレルギー膠原病科)


アレルギー疾患の診断  まずはここを押さえよう
  1. アレルギー疾患では,まずI型(IgE)によるものかそれ以外によるものかを考える.
  2. I型に一致する発症様式と症状であるかを確認し,既往歴,家族歴,生活環境も含めた社会歴も合わせて聴取する.
  3. 皮疹を診た際には薬疹を必ず鑑別診断の一つと考え,健康食品,市販薬を含めた詳細な薬剤歴を確認する.
  4. 抗原回避と除去を薬物療法に併用し,より副作用が少なく効果の高い治療を目指す.

■症例1
蕁麻疹,呼吸困難にて紹介となった38歳女性

飛行機内で,蕁麻疹,下痢,喉の絞扼感,呼吸困難,チアノーゼが出現した.1カ月後にも飛行機内で同様の症状を認めた.近医を受診し,血液検査を行ったが,原因は判明せず,抗ヒスタミン薬,プレドニゾロン5 mg屯用を処方された.2カ月後自宅にて再度同様の症状が出現し,近医を受診し応急処置がなされた後に,精査のため当科に受診となった.


指導医 通常の外来診療の手順(表1)を踏まえて診療していきましょう.

表1 外来診療の11 ステップ
  1. 訴えを聞く
  2. ROS(review of systems)および定型問診
  3. 鑑別診断を考える
  4. 鑑別診断に関してフォーカスを絞った問診をする
  5. 鑑別診断を絞る
  6. 身体診察をする
  7. 残った鑑別診断に関して検査を考える
  8. 検査結果を予測する
  9. 結果が陽性,陰性(正常,異常)の場合,治療計画がどう変わるかを考える
  10. 結果がマネージメントに影響を与える場合のみ,検査をする
  11. 結果をみて治療計画を立て直す

ROS(review of systems)は呼吸困難,蕁麻疹,下痢があり,既往歴ではアレルギー性鼻炎があり,家族歴では父親に気管支喘息があります.鑑別診断を考えましょう.

研修医 アナフィラキシー,パニック発作,気管支喘息,急性胃腸炎などが挙がります.

指導医 そうですね.次にフォーカスを絞った問診をしましょう.

研修医 症状出現前の状況は,食事の内容など,パニック発作についてはパニック発作の既往や環境の変化やストレスの有無などを聞きたいです.

指導医 飛行機内では機内食とナッツのおつまみを食べていたようです.自宅ではナッツ菓子を食べていました.いずれも食べて20分以内で症状が出ています.パニック発作の既往はなく,環境の変化や強いストレスは確認できませんでした.気管支喘息の既往はありません.現時点では鑑別診断は?

研修医 アナフィラキシーでしょうか.2度の発作時ともナッツが一致しているのでナッツによる食物アレルギーが最も考えられます.

指導医 そうですね.アレルギー疾患の鑑別診断の進め方では,①アレルギーか非アレルギーかをまず考えて,アレルギーなら②Ⅰ型(IgE型)か非Ⅰ型(non IgE型)かを考えることが重要です(表2).

表2 I型(IgE 型)アレルギー疾患と非 Ⅰ 型(non IgE 型)アレルギー疾患
IgE 型反応←──────────────────→non IgE 型反応
蕁麻疹 アトピー性皮膚炎 接触性皮膚炎
アナフィラキシー 薬疹 Stevens-Johnson 症候群,薬剤熱,血清病様反応,溶血性貧血
喘息 アスペルギルス性気管支肺炎 過敏性肺炎
アレルギー性鼻炎
(花粉,ホコリ)
慢性鼻副鼻腔炎 (血管運動性鼻炎)
即時型食物アレルギー 好酸球性胃腸炎 蛋白誘発性腸炎
口腔アレルギー   Scombroid 症候群,乳糖不耐症
 アレルギー類似疾患

どのような点に注意して問診をしますか.

(つづきは本誌をご覧ください)