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●できる医師のプレゼンテーション-臨床能力を倍増するために

第4回テーマ

プレゼンテーションのフォーマット(各論1)
――主訴・プロファイル・現病歴・ROS

川島篤志(市立堺病院・総合内科)


ある日のカンファレンスで
研修医:80歳の方で,主訴は胸痛です。
(聴衆):(虚血性心疾患のリスクも高いかもしれないな。既往歴を聞いておこう)
(聴衆):(80歳だと脳血管障害とか起こしてそうだな。どんなADLだろ?)
(聴衆):(お年寄りのおばあさんは腰も曲がってて,膝も悪いんだろうな。退院設定も大変そうかもな)
研修医:現病歴です。マラソン大会のスタートで,若い人と激しく胸をぶつかった後から……。
(聴衆):……(え,そんな元気な方なの?)。
研修医:(プロファイルまで終了)。現病歴です。3月29日に発熱で近医を受診した際の血液検査の結果ですが,白血球が9,500でCRPが5.3でした。それで抗生物質投与で経過をみられていましたが,改善が認められないため,昨日,近医を再受診しています。胸部X線をとられ,肺炎や気管支炎などが疑われています。結核や肺癌も否定できないといわれていたそうです。それで本日当院を受診するようにいわれたそうです。当院外来に紹介になったときに,身体所見上,右肺にpan‐inspiratory cracklesを認め……。検査では,白血球も15,000,CRPが15.2に上がっており……。本人の呼吸困難も増強しており,本日4月2日に入院となりました。それで検査所見ですが……。
指導医:……(あ,今は現病歴をしゃべってたのか!あれ,発症は何日前だったっけ?)。

 前回は総論を述べました。今回から3回にわけて各論をお話しします。

■主訴

 プレゼンテーションに関する書籍や指導者の声を聞くと,主訴は「患者さんの言葉を使うべきだ!」という意見と,「医学用語を使うべきだ!」という意見があります。これに関してはそれぞれの立場でさまざまな考えがあると思いますので,あまりこだわらず,施設/科単位で決定すればいいと思います。診断に直結するような,もしくは印象に残る言葉でなければ,医学的な表現に変えたほうがわかりやすいと個人的には,思っています。

 日本では検査目的での入院も少なくありません。ただ,「主訴はありません」というと,不要な突っ込みが入ってくる可能性が高いです。医療機関を受診したきっかけというのはあるはずなので,「現在は無症状ですが……」とか,「○日前に△△が主訴で××を受診し……」と始めたうえで,検査入院であることを伝えるとスムーズかもしれません。また,健康診断/検診での異常の場合も同様です。

 主訴からは想像しにくい,何らかの検査異常で入院となることもあるかもしれません。そういった場合に最終的な検査異常を述べてもいいと思います。クイズではないので,伝えることが大切です。

 発症の経過(突然,急性,亜急性,緩徐)を伝えるとさらにいいと思います。

 次に述べるプロファイルやReview of Systems(ROS)の2項目は日本ではあまり教育されていない部分かもしれません。逆にこの2つが押さえられているプレゼンテーションを聞くと,プレゼンテーション教育を受けているのかな,と感じます。

■プロファイル

 患者さんの元々の状態と,今回の入院に関連する情報を交えて1~2文で表現することが求められています。目の前にいない患者さん・自分しか診ていない患者さんを,いかにほかの人に伝え,理解してもらうかということを意識する必要があります。病歴や身体所見を含めて患者さんを把握し,病態を理解することによって,伝わりやすいプロファイルが完成します。

(つづきは本誌をご覧ください)


川島篤志
1997年筑波大学医学専門学群卒業。京都大学医学部附属病院で内科研修のあと,市立舞鶴市民病院にて3年間,内科・救急を研修。2001年より米国Johns Hopkins大学 公衆衛生大学院に入学し,公衆衛生学修士(MPH)取得。2002年秋より,現職。総合内科の臨床,研修医への指導や研修システムの確立,病院内での生涯教育にも興味をもち,携わっている。