特集の理解を深めるための28題
問題1
ポリファーマシーにより生じる事象として不適切なものはどれか?
- A
- 薬物有害事象のリスク増加
- B
- 服薬アドヒアランスの向上
- C
- 医療費の増加
- D
- 服薬過誤
- E
- 処方カスケードの発生
問題2
咳嗽に関する質問で正しいのはどれか.1つ選べ.
- A
- 慢性咳嗽は4週間以上持続する咳嗽である.
- B
- 百日咳を単血清で診断する場合,抗PT-IgG抗体が10 EU/mL以上であれば確定できる.
- C
- 咳喘息は,聴診上wheezeを伴わない.
- D
- GERDによる慢性咳嗽はわが国ではまれである.
- E
- SBSに対する治療は対症療法である.
問題3
4週間を超えるステロイド薬(プレドニゾロン換算で20 mg/日以上)の全身投与を開始する際に検討すべき検査,治療として誤っているものはどれか? 1つ選べ.
- A
- 喀痰の抗酸菌検査
- B
- 骨密度の測定
- C
- B型肝炎スクリーング検査
- D
- ST合剤の予防内服
- E
- 大腸内視鏡検査
問題4
80歳男性.COPDと診断された.認知機能は年齢相応であるが,1秒量730 mL(38%)と低値.心筋梗塞の既往があるが不整脈はない.並存疾患として前立腺肥大症を治療中だが,排尿障害が残存している.適切と思われる薬剤はどれか,1つ選べ.
- A
- シムビコート®
- B
- スピリーバ®レスピマット®
- C
- フルティフォーム®
- D
- アノーロ®
- E
- オンブレス®
問題5
46歳,女性.最近微熱と乾性咳嗽があるとのことで受診した.咽頭痛や喀痰,息切れや倦怠感はない.口の苦味があり喉が詰まる気がするが,肥満改善目的で最近内服し始めた市販の漢方製剤が苦いせいだと思う,とのことであった.体格はガッチリしていて暑がり.もともと体力には自身があるが,神経質で几帳面な性格. この患者に対して行うべきことを選べ.
- A
- 聴診
- B
- 画像検査
- C
- 柴朴湯の投与
- D
- 採血検査
- E
- ステロイドパルス療法
問題6
肺がん患者の呼吸困難感を緩和するのに最も適切な薬剤はどれか.1つ選べ.
- A
- フロセミド
- B
- フェンタニル
- C
- セフトリアキソン
- D
- プレドニゾロン
- E
- モルヒネ
問題7
βラクタム系抗菌薬が無効な肺炎の原因微生物はどれか.1つ選べ.
- A
- インフルエンザ桿菌
- B
- レジオネラ・ニューモフィラ
- C
- モラクセラ・カタラーリス
- D
- 肺炎球菌
- E
- 黄色ブドウ球菌
問題8
72歳の男性.3日前に発熱・咳嗽・膿性痰が出現し,改善しないため,同居の息子夫婦に付き添われて来院した.5年前から糖尿病の内服治療中,3年前に腹部大動脈瘤を指摘され,経過観察中である.薬剤アレルギーなし.食事は普通に摂取でき,飲水もできている.意識は清明.体温38.6℃.脈拍107/分,整.血圧125/76 mmHg,呼吸数18/分,SpO2 97%(room air).左下胸部でcoarse cracklesを聴取する.血液所見:白血球13,900/mm3(分葉核好中球83%,単球2%,リンパ球15%),血小板23.4万/mm3.血液生化学所見:AST 52 U/L,ALT 44 U/L,尿素窒素13 mg/dL,クレアチニン0.7 mg/dL,血糖140 mg/dL.CRP 9.6 mg/dL.胸部X線写真で左下肺野に浸潤影を認め,喀痰グラム染色で白血球とグラム陽性双球菌を認める.尿中肺炎球菌迅速抗原検査が陽性である. この症例に対する適切な治療方針を選べ.
- A
- 入院治療 抗菌薬点滴を開始
- B
- 外来治療 レボフロキサシン1回500 mg,1日1回
- C
- 外来治療 クラリスロマイシン1回200 mg,1日2回
- D
- 外来治療 セフジトレンピボキシル1回100 mg,1日3回
- E
- 外来治療 クラブラン酸/アモキシシリン(125 mg/250 mg)1回1錠,1日3回+アモキシシリン1回250 mg,1日3回
問題9
非定型病原体による肺炎(非定型肺炎)を考慮しない臨床状況はどれか.
- A
- 2週間前に子供がマイコプラズマ気管支炎になったという発熱,咳嗽を呈する基礎疾患のない30歳女性.
- B
- ビルの古い冷却塔のメンテナンス工事に行き,数日してから発熱,呼吸苦,見当識障害を呈して来院した,基礎疾患のない69歳男性.
- C
- 1週間ほど感冒症状が続いた後,急激に発熱と咳嗽・喀痰,呼吸苦が出現し,グラム染色でグラム陽性双球菌が確認できた基礎疾患のない48歳男性.
- D
- 2週間前からひたすら痰を伴わない咳嗽が出ていて徐々に発熱もしてきたため来院し,聴診所見では異常を認めなかった基礎疾患のない40歳女性.
- E
- 季節性A型インフルエンザに罹患し,解熱後すぐに再度発熱し,咳嗽と膿性痰が出るようになった,基礎疾患のない50歳男性.
問題10
医療・介護関連肺炎(NHCAP)について正しいものを2つ選べ.
- A
- NHCAPの重症度判定には,I-ROADを使用する.
- B
- NHCAPの治療にあたり,疾患終末期や老衰としての肺炎の場合は,本人・家族の意向を確認して治療方針を決定する.
- C
- NHCAPは耐性菌が検出されることが多いので,初期治療には全例広域抗菌薬を投与する.
- D
- NHCAPでは,誤嚥のリスクをもつ症例が多いことを反映して,口腔内常在菌や嫌気性菌が起因菌となることも多い.
- E
- NHCAPでは,肺炎球菌よりも緑膿菌やMRSAなどの耐性菌が多く検出される.
問題11
院内肺炎(HAP),人工呼吸器関連肺炎(VAP)の抗菌治療に関する以下の記載のなかで正しいものはどれか.1つ選べ.
- A
- HAP,VAPの初期抗菌薬を決定する際は,重症度や死亡リスクを考慮する必要はない.
- B
- HAP,VAPの原因菌はCAPとほぼ同様で,肺炎球菌が最多である.
- C
- 耐性菌リスク因子には,過去の抗菌薬投与歴,過去の耐性菌検出歴などが含まれるが,地域差や施設間差はあまりないことが知られている.
- D
- HAPの初期抗菌薬を決定する際,ガイドライン通りに行えばよく,自施設のアンチバイオグラムは参考にする必要はない.
- E
- 多剤耐性菌のリスクが高い場合には,抗緑膿菌活性を有する抗菌薬2剤±抗MRSA薬の広域抗菌薬による治療が選択肢となるが,原因菌判明後はde-escalationすることを心掛ける.
問題12
23-valent pneumococcal polysaccharide vaccine (PPV23)について間違っているのはどれか.1つ選べ.
- A
- 集団免疫効果を認める.
- B
- ワクチン血清型肺炎を減少させる.
- C
- 5年ほどで効果が減衰する.
- D
- 再接種が認められている.
- E
- インフルエンザワクチンと同時接種可能である.
問題13
65歳男性.3カ月続く咳嗽と喀痰で来院.胸部X線では,右上肺野に粒状影を認め,喀痰検査のTB-PCRにより肺結核の診断となった.このなかで優先順位の低いマネージメントは次のうち,どれか?
- A
- 担当保健師との情報共有
- B
- 起こりうる副作用の説明
- C
- 感染性の確認
- D
- クオンティフェロン(QFT)もしくはT-スポットの測定
- E
- 標準治療の開始
問題14
肺MAC症の診断・治療について正しいのはどれか.1つ選べ.
- A
- 検診で異常陰影を指摘された54歳女性.喀痰検査でM. aviumが同定されたが,症状なく軽症であったため有症状時受診を指示した.
- B
- 70歳女性.肺MAC症には有効な薬剤はなく副作用が多いため,治療を行わないことを勧めた.
- C
- 患者がエサンブトール視神経炎を心配するため,代わりにレボフロキサシンを使用した.
- D
- 標準治療を行い,症状と陰影の改善が得られたため12カ月後に治療を終了した.
- E
- 治療開始6カ月後の喀痰検査が培養陽性であったため,アミノグリコシドの追加を検討した.
問題15
気管支喘息(非喫煙者)の診断を支持しない検査所見はどれか.1つ選べ.
- A
- SABA吸入後の呼吸機能検査にて,一秒量(FEV1)12%かつ200 mL以上改善
- B
- %DLco:70%
- C
- 呼気一酸化窒素(FeNO):40 ppb
- D
- 環境アレルゲンに対する特異的IgE抗体陽性
- E
- 喀痰中好酸球比率3%
問題16
妊娠中の喘息管理について正しいものを選べ.
- A
- 妊婦が喘息発作を起こしても胎児への影響はない.
- B
- 中心となる薬剤はステロイドの内服薬である.
- C
- ブデソニドの吸入は安全性が低い.
- D
- 発作時の全身ステロイド投与は,胎盤移行性の少ないプレドニゾロンやメチルプレドニゾロンが勧められる.
- E
- 抗原回避,禁煙,安静も重要である.
問題17
アスピリン・NSAIDs過敏喘息が疑わしい患者に投与不可となるものはどれか.1つ選べ.
- A
- デキサメタゾン点滴静注
- B
- ベタメタゾン点滴静注
- C
- ハイドロコルチゾン点滴静注
- D
- 経口プレドニゾロン
- E
- アドレナリン皮下注
問題18
難治性喘息について誤っているものはどれか.1つ選べ.
- A
- 喘息による死亡者数は毎年2,000人以下であり,その多くが65歳以上の高齢者である.
- B
- 喘息死に至った症例の死亡前1年間の喘息重症度はほとんどが重症である.
- C
- 呼気一酸化窒素(FeNO)検査は喘息の診断と治療効果反応予測に有用である.
- D
- オマリズマブは血清IgE値と体重に基づき投与量と投与回数を決定する.
- E
- ベンラリズマブ,メポリズマブ,デュピルマブは血中好酸球数が多いほど,喘息の増悪抑制効果が大きい傾向がある.
問題19
以下のうち誤りを2つ選べ
- A
- COPD増悪の抑制効果は,LAMAのほうがLABAより優れる.
- B
- COPDの管理目標は,現状の改善と将来のリスクの低減である.
- C
- COPDにおけるICSの使用は,肺炎のリスクを上昇させない.
- D
- 吸入薬は複数のデバイスのほうが単一のデバイス(配合剤)よりよいアウトカムをもたらす.
- E
- SITT(single inhaler triple therapy)は増悪抑制・肺機能改善において最も効果の高い吸入薬である.
問題20
COPD増悪の治療において,まず考慮すべき薬物療法を1つ選べ.
- A
- 抗菌薬
- B
- 短時間作用型気管支拡張薬
- C
- 長時間作用型気管支拡張薬
- D
- ステロイド(内服,点滴)
- E
- 吸入ステロイド
問題21
以下の特発性肺線維症(IPF)の記載のうち誤りはどれか? 1つ選べ.
- A
- 抗線維化薬が標準治療薬である.
- B
- HRCTでUIPパターンを認めれば,必ず特発性肺線維症と診断できる.
- C
- Fine cracklesを聴取することが身体診察の特徴である.
- D
- 抗線維化薬を内服することによって1年後の努力肺活量の悪化割合を改善させることができる.
- E
- HRCTでUIPパターンを認めることは,肺生検時に組織学的なUIPパターンが存在することを示す.
問題22
特発性間質性肺炎(IIPs)のうち,0.5~1 mg/kg/日程度のステロイド単独投与が標準的な治療の選択肢としてガイドラインに記載があるものはどれか.
- A
- 安定期IPF(Idiopathic interstitial fibrosis)
- B
- IPF急性増悪
- C
- 非特異性間質性肺炎(fibrotic NSIP)
- D
- 特発性器質化肺炎(COP)
- E
- UIPパターンを示すもの
問題23
薬剤性肺障害について,間違っているものを1つ選べ.
- A
- 漢方薬は薬剤性肺障害を起こしうる.
- B
- 重症例の治療にはステロイドパルス療法を選択する.
- C
- ブレオマイシンは抗がん剤のなかでも薬剤性肺障害の頻度が高い薬剤である.
- D
- Drug lymphocyte stimulation test(DLST)が陽性であれば必ず原因薬剤である.
- E
- 内服歴などの病歴を中心に,血液検査,画像検査,病理検査などから多角的に診断する.
問題28
EGFR遺伝子変異陽性進行・再発非小細胞肺がんの一次治療で用いる薬剤として最も適切なのはどれか?
- A
- ペムブロリズマブ
- B
- アレクチニブ
- C
- オシメルチニブ
- D
- アテゾリズマブ
- E
- カルボプラチン+ペメトレキセド
問題25
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の病態として誤っているものを1つ選びなさい.
- A
- 肺血管抵抗の上昇
- B
- 気道抵抗の上昇
- C
- 肺コンプライアンスの上昇
- D
- 肺サーファクタントの機能不全
- E
- 換気血流比の不均等分布
問題26
サルコイドーシスに(サ症)おいて誤っているものを選べ.
- A
- サ症は原因不明の「非乾酪性類上皮細胞肉芽腫」を特徴とする肉芽腫性疾患である.
- B
- サ症の診断では,罹患臓器における組織学的な肉芽腫の証明は診断に必須ではない.
- C
- サ症の診断に至った場合には,罹患臓器にかかわらず早急に初期治療を導入する.
- D
- 皮膚サルコイドーシスにおいては抗菌薬が選択されることもある.
- E
- サ症の診療においては定期的な心臓,肺,眼などの臓器への発症をスクリーニングする.
問題27
気管支喘息との関連が深い疾患はどれか.1つ選べ.
- A
- 急性好酸球性肺炎(AEP)
- B
- 慢性好酸球性肺炎(CEP)
- C
- 特発性肺線維症
- D
- サルコイドーシス
- E
- Hodgkinリンパ腫
問題24
30歳女性.X-1年前の第1子出産後より労作時の息切れを自覚していたが,疲労によるものと考えて放置していた.徐々に息切れの症状は強くなり,自宅の2階への階段の昇り降りが辛く感じるようになってきた.また,最近は立ちくらみや短時間の意識消失と両下腿の浮腫も認めるようになり精査目的に当院初診. 既往歴:29歳 第1子帝王切開にて正期産で出産 家族歴:父,心筋梗塞 初診時現症:身長156 cm,体重46 kg,血圧100/64 mmHg,脈拍92回/分・整,呼吸数20回/分,SpO2 95%(室内気),仰臥位45度で頸静脈怒張あり 胸部:Ⅱ音亢進あり,胸骨左縁中部に汎収縮期雑音あり(吸気で増強),呼吸音 清明,腹部:平坦軟,四肢:両側前脛骨部に圧痕性浮腫を認める. 〔初診時検査所見〕 血液検査所見:生化学:AST 24 IU/L,ALT 10 IU/L,LDH 285 IU/L,CK 693 IU/L,Na 136 mEq/L,K 3.5 mEq/L,Cl 106 mEq/L,BUN 9 mg/dL,Cre 0.8 mg/dL,UA 8.3 mg/dL,BNP 728 pg/mL,CRP 0.60 mg/dL 血算:白血球7,300/μL,赤血球410×104/μL,Hb 11.2 g/dL,Plt 40.1×104/μL,凝固PT 80%,PT-INR 1.0,APTT 32.8秒,D-dimer<1.0 μg/mL,抗核抗体陰性,その他各種自己抗体陰性 画像所見:胸部X線では肺動脈拡張と心拡大を,心電図では右心負荷所見を認めた.心エコー検査では,収縮期・拡張期とも心室中隔の圧排と右心系の拡大を認めた.また,三尖弁圧格差は80 mmHgと著明に高値であった. この疾患の確定診断のために最も有用な検査はどれか? 1つ選べ.
- A
- 呼吸機能検査
- B
- 血液検査(血算,生化学,凝固系,BNPを含める)
- C
- 心臓超音波検査
- D
- 肺換気・血流シンチグラフィ
- E
- 心臓カテーテル検査
(解答は本誌掲載) |