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特集の理解を深めるための30題


問題1

細菌性髄膜炎について,正しいものはどれか.

A
患者の1%に聴力障害を合併する.
B
腰椎穿刺の前には全例で頭部CTを施行すべきである.
C
肺炎球菌ワクチンは入院中に接種すると混合診療に該当する.
D
抗菌薬の先行投与がある場合でも,デキサメタゾンを投与してよい.
E
年齢が50歳以上では,Listeria monocytogenes を念頭に置いて治療を選択すべきである.

問題2

肺炎随伴性胸水の患者において,持続ドレナージが必要な所見として間違っているものを2つ選べ.

A
大量胸水
B
吸気時に増悪する胸痛
C
胸水pH 7.1
D
胸水グラム染色にて菌体証明
E
胸水糖80 mg/dL

問題3

急性化膿性胆管炎において抗菌薬を選択するにあたり,通常考慮しない菌を2つ選べ.

A
Escherichia coli
B
Streptococcus pneumoniae
C
Moraxella catarrhalis
D
Enterococcus spp.
E
Bacteroides spp.

問題4

65歳の男性.年始に餅つきをした後に腰痛が出現し,発熱を認めたため近医の整形外科を受診.鎮痛薬で改善が乏しかったため紹介受診し,化膿性脊椎炎と診断された.血液培養からはStreptococcus anginosus が同定された.CTに加え,感染症の精査と治療方針を決めるために必要な検査はどれか.

A
心エコー
B
髄液検査
C
脳血管造影検査
D
冠動脈造影検査
E
頭部MRI

問題5

急性単関節炎の鑑別診断として,一般的ではないものはどれか.

A
感染性関節炎
B
外傷性関節炎
C
痛風
D
関節リウマチ
E
偽痛風

問題6

16歳男性,高校の寮に居住している.昨日夜まで元気であったが,本日の朝,部屋でぐったりしているのを発見され救急搬送となった.来院時血圧70 mmHg(触診),脈拍140/分,体温37.8℃,呼吸数30/分,SatO2 94%(室内気).身体所見では口腔粘膜からの出血傾向,四肢末梢にチアノーゼ,紫斑を認め,一部は壊死を伴っていた. 直ちに必要な処置を2つ選べ.

A
血液培養採取
B
抗菌薬投与
C
髄液穿刺
D
詳細な病歴聴取
E
全身CT検査

問題7

カンピロバクター腸炎に対して抗菌薬治療を行う場合に,第一選択とすべき薬剤はどれか.

A
ニューキノロン系抗菌薬
B
マクロライド系抗菌薬
C
カルバペネム系抗菌薬
D
テトラサイクリン系抗菌薬
E
ST合剤

問題8

以下のうち,発熱性好中球減少症のリスク分類であるMASCCスコアに含まれない評価項目はどれか.

A
重症度
B
血圧低下
C
脱水の有無
D
耐性菌感染症の既往
E
年齢

問題9

固形臓器移植患者においてサイトメガロウイルス(CMV)感染症を疑った際に行う可能性のある検査を2つ選べ.

A
CMV IgG
B
CMV IgM
C
CMVアンチゲネミア
D
CMV定量PCR
E
ウイルス培養

問題10

広範囲熱傷後に,早期から考慮すべき治療を2つ選べ.

A
予防的抗菌薬の全身投与
B
外科的デブリードメント
C
高圧酸素療法
D
早期からの中心静脈栄養
E
自家皮膚移植

問題11

高血圧の既往がある60歳男性.脊柱菅狭窄症に対する椎弓切除術を受けた.術後経過は良好であったが,術後5日目に38.5℃の発熱を認めた.バイタルサインは血圧145/90 mmHg,脈拍95/分,呼吸数17/分,SpO2 98%(室内気).診察で左膝関節の疼痛・腫脹・熱感を認め,痛みのため膝の屈曲・伸展が困難である.その他の身体所見に異常なし.診断に必要な検査を選択せよ.

A
関節穿刺
B
下肢静脈エコー
C
血清CRP値測定
D
血清尿酸値測定
E
膝関節MRI

問題12

単発性の脳膿瘍の原因として,頻度の高い疾患はどれか.

A
肺炎
B
歯源性感染症
C
蜂窩織炎
D
尿路感染症
E
急性腸炎

問題13

一般的に低体温をきたさない疾患はどれか.

A
副腎不全
B
偶発性低体温
C
敗血症
D
悪性症候群
E
急性薬物中毒

問題14

60歳の女性.左下腿の腫脹と疼痛のため家族に付き添われ受診した.3日前から左足部の腫脹を自覚していた.最近の外傷歴はない.既往に未治療の糖尿病がある.Japan Coma Scale(JCS)Ⅰ-1.身長150 cm,体重70 kg.体温38.0℃,心拍数110/分・整,血圧120/60 mmHg,呼吸数20/分,SpO2 98%(室内気).腹部は平坦・軟で,圧痛はない.左下腿に発赤,熱感および圧痛を伴う腫脹がある.下腿のCT検査にてガスを伴う皮下脂肪織の濃度上昇を認めた.
血液・血清生化学所見:WBC 12,100/μL,Plt 10万/μL.AST 35 IU/L,ALT 25 IU/L,Cre 1.4 mg/dL,尿酸7.8 mg/dL,血糖400 mg/dL,HbA1c 8.9%,CRP 1.6 mg/dL.
直ちに行うべき行為はどれか.

A
局所切開
B
外用抗菌薬塗布
C
アドレナリン静注
D
下肢MRI検査
E
ステロイドパルス療法

問題15

68歳の男性.自宅で倒れているところを友人に発見され,救急搬送された.
意識レベルJCSⅡ-10,体温37.8℃,血圧86/52 mmHg,脈拍96回/分,呼吸数22回/分,SpO2 98%(室内気).髄膜刺激徴候や運動麻痺などの神経学的異常所見なし.そのほか,身体所見上異常所見なし.
血液検査:WBC 6,800/μL,Hb 12.8 g/dL,Ht 41.0%,Plt 15.5万/μL,Na 131 mEq/L,K 5.1 mEq/L,BUN 10.2 mg/dL,Cr 0.5 mg/dL,AST 20 U/L,ALT 12 U/L,T-Bil 0.8 mg/dL,Glu 35 mg/dL,CRP 2.3 mg/dL.
経静脈的にブドウ糖を投与すると意識が改善し,会話可能となった.昨日から強い倦怠感を自覚し,本日は体の力が入らず動けなくなったという.糖尿病の既往はない.患者は「膠原病で通院し薬をもらっているが,薬がなくなったので5日前から飲んでいない」と話している.手術歴はないが,1週間前に歯科で抜歯を受けた.
次のうち,この時点で優先度の高い対応を2つ選べ.

A
状態が改善したため,かかりつけ医を受診するよう指示して帰宅させる.
B
かかりつけ医に連絡をとり,病状や処方内容を確認する.
C
髄液検査を実施する.
D
頭部MRI検査を実施する.
E
血液培養検査を実施する.

問題16

結核の発病リスクが最も低い集団はどれか.

A
最近の結核感染(感染後1~2年以内)
B
10年前に判明した無治療の潜在性結核感染症
C
糖尿病
D
透析
E
胸部X線画像で線維結節影(未治療の結核性陳旧性病変)

問題17

Lyme病の治療として適切でないものはどれか.

A
30歳妊娠女性.マダニ流行地域に居住.発熱,頭痛,筋肉痛,倦怠感あり.─アモキシシリン500 mg・1日3回経口(14~21日間)
B
6歳男児.体重20 kg.遊走性紅斑あり.─セフロキシム300 mg・1日2回経口(14~21日間)
C
25歳男性.マダニに刺された疑い.Ⅲ度房室ブロックあり.─セフトリアキソン2 g・1日1回静脈注射(21~28日間)
D
10歳女児.体重35 kg.流行地域でマダニに刺された.発熱,頭痛があり,髄膜炎疑い.─セフトリアキソン2 g・1日1回静脈注射(10~28日間)
E
56歳男性.森で狩りに行き,ダニに刺された後,膝関節に発赤腫脹,関節炎が出現.─ドキシサイクリン200 mg・1日2回経口(14日間)

問題18

71歳女性.若年時より頭痛の既往があり,3週間前からの右側頭部の頭痛を訴えて内科外来を受診した.髪をとかすだけでも痛むとのこと.担当医の診察にて患者が訴える頭痛部位に皮膚表面の触診による痛みの誘発を認めた.同部位に皮疹は認めない.巨細胞性動脈炎とともに考えられる鑑別疾患を2つ選べ.

A
片頭痛
B
帯状疱疹
C
緑内障
D
顎関節症
E
緊張性頭痛

問題19

40代女性,生来健康な介護施設職員.年末に急な発熱と咽頭痛とともに,鼻汁,咳,頭痛,関節痛,下痢などの症状があり,解熱薬を服用して様子をみたが,翌日に胸痛とともに強い動悸息切れを感じ,救急外来を受診.
意識清明,体温40℃,脈拍数90/分,血圧85/50 mmHg,呼吸数35/分,SpO2 87%(室内気).顔面紅潮し咽頭発赤と前頸部リンパ節腫脹あり,四肢末梢は蒼白で冷たく,両側肺底部に吸気末期捻髪音を聴取する.咽頭インフルエンザ迅速抗原陰性.心電図で全範囲にST上昇あり.診断確定に最も「有用でない」検査はどれか.

A
咽頭ぬぐい液のインフルエンザPCR
B
喀痰グラム染色と培養
C
血清プロカルシトニン
D
心エコー
E
血清高感度トロポニン-I

問題20

“食欲低下”や“全身倦怠感”のような,鑑別診断が多岐にわたる主訴のケースにおいて,最初に考慮すべき診断ツールを2つ選べ.

A
問診(システムレビューを含む)
B
系統的な身体診察
C
心電図
D
胸部X線検査
E
全身CT検査

問題21

下痢の原因となる以下の疾患のうち,感染症予防法に基づいて全例直ちに保健所へ届出をする必要のないものを2つ選べ.

A
細菌性赤痢
B
A型肝炎
C
非チフス性サルモネラ
D
腸管出血性大腸菌
E
アメーバ赤痢

問題22

A群溶連菌による壊死性筋膜炎の治療で,ペニシリン投与以外に重要なマネジメントを2つ選べ.

A
高圧酸素療法
B
イムノグロブリンの投与
C
外科的デブリードメント
D
クリンダマイシンの追加
E
ゲンタマイシンの追加

問題23

80歳女性が散歩中に転倒したため救急外来を受診した.転倒直前に下肢に力が入りにくいように感じたとのこと.頭部外傷はなく,意識消失もなし.過去数カ月にわたり,転倒の頻度が増えている.既往歴には高血圧,脂質異常症,アレルギー性鼻炎,不安症,腰痛症がある.内服はヒドロクロロチアジド25 mg/日,アトルバスタチン10 mg/日,ロラタジン10 mg/日,エチゾラム1.5 mg/日,アセトアミノフェン600 mg/日.患者によると,不安症状はここ数年間自覚していない.診察では血圧135/70 mmHg(立位で変動なし),脈拍75/分,呼吸数16/分,SpO2 97%(室内気).両膝に小さい擦過傷あり.
次のうち,転倒の原因として最も考えられる薬剤はどれか.

A
ヒドロクロロチアジド
B
アトルバスタチン
C
ロラタジン
D
エチゾラム
E
アセトアミノフェン

問題24

施設入所中の85歳男性.起床時にベッドより起き上がれなかったため,家族同伴で救急搬送された.初期評価として適切でないものはどれか.

A
内服薬の確認
B
施設職員やケアマネジャーへの連絡
C
普段と来院直前のADLの確認
D
頭部から骨盤までの全身CT
E
神経診察

問題25

特に著患のない35歳男性.昨日より38℃の発熱・関節痛を認めたため,救急外来を受診.来院20日前~15日前まで仕事でフィリピンを訪れていた.以下の疾患のうち,可能性が低いものを2つ選べ.

A
チクングニア熱
B
腸チフス
C
インフルエンザ
D
デング熱
E
レプトスピラ症

問題26

45歳の女性.民族舞踊の専門家として西アフリカに3年間滞在していた.西アフリカの複数国を拠点に活動し,4日前に帰国した.3日前から39℃の発熱,悪寒があり来院した.
バイタルは血圧110/59 mmHg,脈拍80回/分,呼吸数20回/分,体温38.5℃.覚醒し,見当識障害はなかったが,つらそうな様子である.身体所見として,頭頸部は咽頭に発赤なし,リンパ節腫脹なし.心臓・肺に異常所見はなく,肝臓,脾臓は触知せず.また,四肢に皮疹は認めなかった.
この患者を診断するために,最も適切な検査は次のどれか.

A
尿検査
B
フェリチン
C
末梢血スメア
D
喀痰のグラム染色
E
プロカルシトニン

問題27

重症度および頻度が高い南米からの渡航感染症を2つ選べ.

A
ジカウイルス感染症
B
シャーガス病
C
腸チフス
D
急性HIV感染症
E
マラリア

問題28

特記すべき既往歴のない33歳男性.5日前から発熱,全身倦怠感,全身の疼痛が出現し,症状が次第に悪化したため病院を受診した.眼瞼結膜の黄染を認め,診察した医師はレプトスピラ症を鑑別診断の1つとした.レプトスピラ症と最も関連が低いと思われる病歴はどれか.

A
東京在住.数年前から自宅にネズミが頻繁に出現している.発症の5日前にもネズミの糞尿を素手で処理した.
B
静岡県在住.発症の10日前に地元で開催されたトライアスロンに参加した.スイムは地元の河川で行われた.
C
北海道在住の中国人.2カ月前に1週間沖縄を旅行し,那覇市近郊の海で泳いだ.
D
ヨガ留学のため1年前からインド在住の日本人.毎朝欠かさずガンジス川で沐浴をしている.
E
沖縄本島北部地域に在住のマングローブカヤックツアーガイド.この1カ月仕事が忙しく,休みが取れていない.

問題29

Vibiro vulnificus による壊死性筋膜炎に関して,正しいものはどれか.

A
Vibiro vulnificus は寒流域に生息する菌であるため,北日本からの報告が多い.
B
ほぼ全例が肝疾患を背景とするため,肝疾患がなければ除外してよい.
C
適切な抗菌薬を使用すれば,予後は良好である.
D
初期診断としてLRINECスコアが有用であり,陰性であれば壊死性筋膜炎を否定してよい.
E
最適治療として,β-ラクタム系とドキシサイクリンの2剤治療が推奨されている.

問題30

43歳男性.4日前にネコに咬まれ,全身倦怠感と熱っぽさを自覚していたが,自宅で様子をみていた.今朝から発熱,強い倦怠感を認め,救急車搬送となった.来院時,血圧75/40 mmHg,脈拍124回/分,体温35.0℃,呼吸回数23回/分.40歳時に交通外傷のため脾臓摘出の既往がある.入院時に採取した血液培養において,糸状のグラム陰性桿菌が陽性であった.
想定すべき微生物はどれか.

A
Fusobacterium necrophorum
B
Pasteurella multocida
C
Neisseria meningitidis
D
Bartonella henselae
E
Capnocytophaga canimorsus

(解答は本誌掲載)