特集の理解を深めるための27題
問題1
以下の意識障害を呈する疾患のうち,頭位変換眼球反射の異常を呈さないものを2つ選べ.
- A
- 鈎ヘルニア
- B
- 脳底動脈頂症候群
- C
- 両側中大脳動脈領域梗塞
- D
- ベンゾジアゼピン中毒
- E
- 心因性反応
問題2
くも膜下出血について,正しいものはどれか.
- A
- 94~100%の症例が雷鳴頭痛で発症する.
- B
- 『慢性頭痛の診療ガイドライン2013』では,画像検査としてMRI T2*像が最も推奨される.
- C
- CTにおける発症24時間以内の感度は100%である.
- D
- 画像診断において発症24時間以内の偽陰性の割合は,MRIに比べCTのほうが高い.
- E
- 脳動脈瘤破裂の場合は,椎骨動脈解離よりも早急に外科的治療を考慮する.
問題3
めまいの特徴について,正しいものはどれか.
- A
- 典型的な良性発作性頭位めまい症(BPPV)では,頭位変換すると直ちにめまい症状が惹起される.
- B
- 典型的なBPPVでは,注視によって眼振が増強する.
- C
- 新たに前頭部痛が出現した例では,脳血管障害を疑う.
- D
- 前庭神経炎では,急性期に健側向きの一側性眼振を認める.
- E
- 立位が取れない高齢者では,脳血管障害の可能性は乏しい.
問題4
急性~亜急性発症の失語症を鑑別するうえで,有用ではない検査はどれか.
- A
- 髄液検査
- B
- 脳画像検査(CT,MRI)
- C
- 脳波検査
- D
- 反復刺激試験
- E
- 採血検査
問題5
65歳女性.後頸部~背部の痛みに続いて,急に左片麻痺が生じた.発症1時間後に救急搬送されたが,意識は清明で,脳神経症状も認めない.アルテプラーゼ静注療法の適応を検討するうえで,頭部MRIに加えて行うべき検査を2つ選べ.
- A
- 頸部動脈エコー
- B
- 胸部造影CT
- C
- 頸椎MRI
- D
- 脳血管造影検査
- E
- 髄液検査
問題6
脊髄損傷に関する記載で,誤っているものはどれか.
- A
- 重篤な脊髄損傷においては急性期に障害レベル以下の腱反射が消失する.
- B
- 皮膚分節の指標としては,乳頭部でTh4~5,臍部でTh10が目安となる.
- C
- 病変部位が感覚障害レベルよりも頭側に存在することが多い.
- D
- 完全麻痺とは,障害レベル以下の筋力の半数以上が0となることを指す.
- E
- S4~5領域の運動・感覚機能は肛門括約筋反射で評価する.
問題7
39歳男性.4日前から両足のピリピリするような異常感覚が出現した.症状は徐々に悪化傾向にあり,昨日から両手にも感覚異常が出現,本日夕方から歩行がしづらくなってきたため,夜間緊急来院した.診察上,両上下肢遠位部に自覚的な異常感覚,触覚低下,および筋力低下を左右対称に認めた.深部腱反射は全体的に減弱~消失していた.本症例の対応として最も適切なものはどれか.
- A
- 症状は軽微であるため,安心させて帰宅とした.
- B
- 速やかに頭部CT検査を依頼し,神経内科にコンサルトした.
- C
- 上気道炎症状や胃腸症状など先行感染の有無を聴取した.
- D
- ただちに副腎皮質ステロイドによる治療を開始した.
- E
- 脳神経系の異常はみられない疾患なので,診察を省略した.
問題8
初回非誘発性発作における,発作再発のリスク上昇に関連する臨床項目として誤っているものを2つ選べ.
- A
- 若年発症
- B
- 覚醒時の発作
- C
- 先行する脳損傷
- D
- 有意な脳画像異常
- E
- てんかん性脳波異常
問題9
嚥下障害をきたしている患者において,次の状況で緊急性が最も低いのはどれか.
- A
- 吸気性の喘鳴を伴う.
- B
- 発熱を伴い,SpO2が低下.
- C
- めまいを伴い,吃逆が出現.
- D
- 少量の液体の嚥下ですぐに咳むせる.
- E
- 朝はなかった嚥下障害が夕方に急に出現.
問題10
感覚障害において,温痛覚が選択的に障害される部位はどれか.
- A
- 延髄外側
- B
- 延髄内側毛帯
- C
- 視床
- D
- 脊髄後索
- E
- 末梢神経
問題11
76歳女性.Alzheimer型認知症で施設入所中.ある日,夕食中に突然立ち上がり,頭を抱えて食堂内を歩き回った後に1回嘔吐した.その後も普段と様子が異なるので救急車で来院.血圧198/105 mmHg,体温36.0℃,SpO2 98%.意識レベルJCS Ⅰ-3.ストレッチャー上で絶え間なく身体を動かし続け,装着したモニターを外してしまう.身体のどこを診察しても大声で痛いと叫び,手で払いのける.特に頭部を軽く振ったり前屈させると,顔をしかめながら抵抗する.そのほか診察可能な限りでは,明らかな局所神経徴候はない.血液検査(血糖,血算,生化学,CRP),心電図,頭部単純CTに明らかな異常はない.内科当直医として,次に行うべき対応で適切でないものはどれか.
- A
- 家族や施設職員から,病歴や認知症状,普段のADLを簡潔に聴取する.
- B
- 入院するとせん妄がひどくなるので,リスペリドンを処方して帰宅させる.
- C
- ハロペリドールで軽く鎮静のうえ,腰椎穿刺を行う.
- D
- ハロペリドールで軽く鎮静のうえ,頭部血管造影CTまたは頭部MRIを行う.
- E
- 神経内科(脳卒中内科)または脳神経外科にコンサルトする.
問題12
以下の文章のうち,誤っているものを2つ選べ.
- A
- 動眼神経麻痺では散瞳がみられることがある.
- B
- カバー・テストでは障害側の眼球で内側の像が消える.
- C
- 甲状腺眼症では必ず甲状腺ホルモン値の異常を認める.
- D
- 重症筋無力症では朝方より夕方に症状が増悪する日内変動がみられる.
- E
- 重症筋無力症の簡便なスクリーニング法であるアイスパック・テストは,温度変化による酵素活性の変化を利用したものである.
問題13
以下のうち,正しいものはどれか.
- A
- 相対性求心性瞳孔反応欠損(RAPD)は,両眼に交互に光を当てることにより検出可能で,光を当てて縮瞳した眼が患側である.
- B
- 急性に同名半盲をきたす疾患としてまず考えるのは,高血圧性脳内出血である.
- C
- 初発の視神経炎には,ステロイド内服治療が第一選択である.
- D
- 見えにくさと頭痛で来院した患者では,緑内障を鑑別診断に挙げる.
- E
- 視神経脊髄炎は,水受容体の1種アクアポリン4に対する抗体が特徴的な疾患であり,治療は多発性硬化症と同じように,インターフェロンやフィンゴリモドが使われる.
問題14
以下のうち,薬剤性の運動障害を引き起こしにくい薬剤はどれか.
- A
- クロルプロマジン(ウィンタミン®)
- B
- メトクロプラミド(プリンペラン®)
- C
- スルピリド(ドグマチール®)
- D
- ハロペリドール(セレネース®)
- E
- ビペリデン(アキネトン®)
問題15
以下のうち,右半球の障害を疑わせるものはどれか.
- A
- 口頭命令で「歯磨きの真似をしてください」と言われたができない.
- B
- 「箸を使ったり,ボタンを留めたりする作業」が苦手になってきた.
- C
- 立方体の絵を模写することが困難である.
- D
- マッチでタバコに火をつけるなどの一連の動作が困難である.
- E
- 検者の動きを真似して「兵隊の敬礼」をすることができない.
問題16
片頭痛の特徴について,誤っているものはどれか.
- A
- 家族性がある場合,父親由来よりも母親由来のほうが多い.
- B
- 乗り物酔いしやすさは片頭痛の発症前症状である.
- C
- 生あくびは片頭痛の予兆の1つである.
- D
- 片頭痛発作に傾眠を伴うことは極めて稀である.
- E
- におい過敏/嫌悪は片頭痛の随伴症状の1つである.
問題17
髄膜炎よりも脳炎を示唆する症状を2つ選べ.
- A
- 痙攣発作
- B
- 記憶障害
- C
- 頭痛
- D
- 発熱
- E
- 運動麻痺
問題18
次のうち,Guillain-Barré症候群(GBS)について正しいものはどれか.
- A
- わが国におけるGBSは,ほとんどが脱髄型である.
- B
- GBSでは,数%に再発がみられる.
- C
- GBSの初期の診断には,髄液検査が最も有用である.
- D
- GBSでは抗AQP-4抗体陽性がみられる.
- E
- GBSの診断には腱反射の消失が必須である.
問題19
Lewy小体型認知症と他の認知症疾患との鑑別に有用でない検査を2つ選べ.
- A
- 頭部MRI
- B
- 123I-MIBG心筋シンチグラフィ
- C
- MMSE(mini mental status examination)
- D
- 脳波検査
- E
- ドパミントランスポーターシンチグラフィ
問題20
68歳男性(体重65 kg,クレアチニンクリアランス70 mL/分,P-gp阻害薬の投与なし).2年前に急性心筋梗塞を発症して冠動脈インターベンションを施行され,1年前からは抗血小板薬が2剤から1剤(クロピドグレル75 mg・1日1回)に減量となっていた.今回,塞栓性機序と推測される脳梗塞を発症し,入院中に一過性心房細動が同定され,抗凝固薬(直接経口抗凝固薬:DOAC)が通常量で開始となる.脳梗塞発症から1カ月後,歯科治療で抜歯する必要が生じた.抗血栓薬に関して,正しい対応はどれか.
- A
- 抗血小板薬,抗凝固薬の双方を中断し,ヘパリン置換を実施する.
- B
- 抗血小板薬は継続し,抗凝固薬は中断する.
- C
- 抗血小板薬は中断し,DOACは減量基準で投与継続する.
- D
- 抗血小板薬,抗凝固薬とも投与継続する.
- E
- 抗血小板薬は投与継続し,DOACも減量基準で投与継続する.
問題21
次のうち,正しいものはどれか.
- A
- 糖尿病性ポリニューロパチーでは手から痺れることはない.
- B
- 筋の脱力がなければ運動障害は生じない.
- C
- 通常,血管炎では急性発症のポリニューロパチーを示す.
- D
- 下垂手の原因は尺骨神経の圧迫による.
- E
- 腱反射の低下は運動神経の障害による.
問題22
多発性硬化症に関する記述として,誤っているものはどれか.
- A
- 欧米白人,女性に多い.
- B
- 血中に抗アクアポリン4(AQP4)抗体が検出される.
- C
- 出産・妊娠で再発率が変わる.
- D
- MRIで空間的・時間的多発を確認できる.
- E
- 急性期はステロイド治療を行う.
問題23
次のうち,重症筋無力症と関連の強いものを2つ選べ.
- A
- 胸腺腫
- B
- 抗カルジオリピン抗体
- C
- 眼瞼けいれん
- D
- 症状の日内変動
- E
- 脳梗塞
問題24
次のうち,薬剤性Parkinson症候群をきたさないものはどれか.
- A
- メトクロプラミド
- B
- チアプリド
- C
- スルピリド
- D
- ドンペリドン
- E
- リスペリドン
問題25
以下のうち,筋萎縮性側索硬化症(ALS)に認められないものはどれか.
- A
- 筋萎縮
- B
- 腱反射亢進
- C
- 嚥下障害
- D
- ALSの家族歴
- E
- 感覚障害
問題26
通常は急性の脊髄障害を起こさない病態はどれか.
- A
- 視神経脊髄炎
- B
- 頸椎後縦靱帯骨化症の患者の転倒
- C
- 脊髄梗塞
- D
- 転移性脊椎腫瘍
- E
- 脊髄髄内腫瘍
問題27
終夜睡眠ポリグラフィ(PSG)について,誤っているものを2つ選べ.
- A
- 睡眠時無呼吸症候群を調べるためだけの検査である.
- B
- 検査中に動画を記録することで,夜間の異常行動を具体的に把握することが可能である.
- C
- 終夜睡眠PSGによりナルコレプシーの診断が可能である.
- D
- 世界的な標準としては,終夜睡眠PSGに精通した技師が,常時監視下に実施し,同施設内で責任をもって解析し医師に報告する検査である.
- E
- 検査当夜の睡眠の質と量(時間)を調べることができる検査である.
(解答は本誌掲載) |