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特集の理解を深めるための28題


問題1

68歳の男性.咳嗽,喀痰,喘鳴および呼吸困難を主訴に来院した.
2年前から階段を昇る時に息苦しさを感じていた.3週間前に感冒様症状を自覚し,その後,湿性咳嗽,喘鳴および息苦しさが持続するために受診した.喫煙歴は30本/日×48年.
来院時に最も可能性の低い診断はどれか.

A
気管支喘息
B
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
C
喘息-COPDオーバーラップ症候群(ACOS)
D
咳喘息
E
特発性間質性肺炎

問題2

60代男性.
COPDの診断で,5年前から長時間作用性抗コリン薬(LAMA)吸入を続けている.約1年前から病状が悪化傾向にあり,この間,増悪による入院歴がある.約半年前から月1回程度,夜間・早朝に咳嗽と呼吸困難が出現し覚醒するようになり,この数カ月はその頻度が増えている.さらに,1カ月ほど前より,日中の安静時にも発作性の咳嗽と呼吸困難を生じるようになった.呼吸困難に対しては短時間作用型β2刺激薬(SABA)の吸入が一時的には有効である.血液検査では好酸球の増多を指摘されている.また,小児喘息の既往がある.
現在の治療では,コントロール不良であると考えられ,治療薬の変更を行うことにした.
最も適切な治療と考えられるものを選べ.

A
長時間作用性β2刺激薬(LABA)
B
LAMA+LABA
C
LAMA+テオフィリン徐放製剤
D
LAMA+経口ステロイド薬
E
LABA+吸入ステロイド薬(ICS)またはLAMA+ICS

問題3

呼気一酸化窒素濃度(FeNO)との関連が確立しているのはどれか.2つ選べ.

A
喘息診断
B
喀痰好酸球増加
C
喘息でのICS反応性
D
COPDでのICS反応性
E
安定期喘息でのICS減量成功

問題4

Type 2免疫反応型喘息のメディエーターではないのはどれか.

A
IL-13
B
IL-5
C
IL-8
D
TSLP
E
CRTH2/PGD2

問題5

気管支喘息の診断と検査に関して正しいものを2つ選べ.

A
胸部の聴診でwheezesを認めたら気管支喘息の診断となる.
B
気管支喘息の診断には,呼気NO検査は呼吸機能検査より有用である.
C
可逆性検査においてFEV1が13%かつ210 mL増加した場合は,可逆性ありと判定する.
D
PEFの日内変動で14%の増減を認める場合は,可逆性ありと判定する.
E
特異的IgE検査は患者教育に有用である.

問題6

COPDの確定診断に最も有用な検査はどれか.

A
COPD-PS質問票
B
スパイロメトリー
C
胸部高解像度CT検査
D
経皮的酸素飽和度測定
E
mMRC呼吸困難スケール

問題7

気管支喘息のCT所見について,誤りはどれか.1つ選べ.

A
気管支壁肥厚
B
気管支拡張
C
浸潤影
D
エアトラッピング
E
多発腫瘤影

問題8

閉塞性換気障害の診断で,COPDの特徴とならない項目はどれか.2つ選べ.

A
10パック/年以上の喫煙歴
B
末梢血好酸球数>5%あるいは>300/μL
C
DLco/VAが80%未満となるような肺拡散障害
D
胸部CTでの気腫性変化を示す低吸収域の存在
E
気道可逆性試験でFEV1.0の400 mL以上の改善

問題9

呼吸苦を訴える喘息患者(成人)が救急外来を受診した.トリアージの段階で,この患者の呼吸状態急変の予測因子となるのは次のうちどれか.1つ選べ.

A
心拍数≧120回/分
B
呼吸回数≧25回/分
C
経皮酸素飽和度(室内気)≦90%
D
ピークフロー値が予測値または自己ベストの30%以下
E
上記のすべて

問題10

咳喘息について誤っているものはどれか.1つ選べ.

A
典型的喘息に移行しうる.
B
好酸球性炎症が特徴である.
C
気管支拡張薬は無効である.
D
慢性咳嗽の最多の原因疾患である.
E
吸入ステロイド薬の長期継続が必要である.

問題11

ヒスタミンH1受容体拮抗薬が有効な慢性咳嗽はどれか.1つ選べ.

A
咳喘息
B
アトピー咳嗽
C
心因性・習慣性咳嗽
D
副鼻腔気管支症候群
E
胃食道逆流による咳嗽

問題12

43歳男性.
小学生時より慢性副鼻腔炎があり,2回の手術歴がある.30歳ごろから咳嗽,粘膿性痰,喘鳴が出現するようになり,1年前から坂道,階段での息切れを自覚するため来院した.喫煙歴はない.
胸部の聴診では,両側に吸気時のcoarse cracklesおよび呼気時のwheezeを聴取し,手指に軽度のバチ状指を認めた.来院時の血液検査では,白血球9,800/μL,CRP 3.4 mg/dL,血沈41 mm/1時間,寒冷凝集素価512倍,大気下動脈血ガス分析でpH 7.415,PaO2 67 Torr,PaCO2 43 Torrであった.喀痰からムコイド型の緑膿菌が検出され,HLAのタイピングではB54が陽性であった.胸部X線写真および胸部単純CTでは両肺に小葉中心性のびまん性粒状陰影,気管支拡張像などが認められた.
この患者の治療で適切なのはどれか.

A
プロピオン酸フルチカゾン800 mg/日 吸入
B
アモキシシリン750 mg/日 内服
C
エリスロマイシン600 mg/日 内服
D
シクロスポリン100 mg/日 内服
E
プレドニゾロン30 mg/日 内服

問題13

リンパ脈管筋腫症(LAM)の特徴に関して誤っているものを2つ選べ.

A
閉塞性換気障害を呈する.
B
拘束性換気障害を呈する.
C
拡散能は病初期から低下していることが多い.
D
胸部CTでは肺内に境界不明瞭な嚢胞が見られる.
E
肺嚢胞は肺内にびまん性に均一に分布する.

問題14

以下の検査項目のうちアレルギー性気管支肺アスペルギルス症(ABPA)の診断に有用なものはどれか.2つ選べ.

A
アスペルギルス特異的IgM抗体
B
アスペルギルス特異的IgA抗体
C
アスペルギルス特異的IgG抗体
D
アスペルギルス特異的IgE抗体
E
アスペルギルス抗原(ガラクトマンナン)

問題15

EGPAの予後不良因子(FFS)に該当しないものはどれか.1つ選べ.

A
高齢発症(65歳以上)である.
B
ENT症状がある.
C
消化器病変がある.
D
心障害がある.
E
腎不全がある.

問題16

喘息,COPDの治療において,正しいものを2つ選べ.

A
ロイコトリエン受容体拮抗薬(LTRA)はCOPDの増悪頻度を減らす.
B
いずれの病態でも経口ステロイド薬が第1選択である.
C
喘息において,キサンチン誘導体の効果には十分なエビデンスがある.
D
LABA貼付剤は,吸入薬と比較し効果は劣る.
E
COPDにおいてSABAは呼吸困難感の改善効果がある.

問題17

42歳男性.
35歳頃に初めて喘息と診断された.吸入薬を処方されたが,症状が出た時だけ断続的に吸入していた.40歳の時,飲酒後に大発作を起こし救急搬送,挿管され入院加療を受けた.その後,禁煙し,治療は厳格に順守した.最近1年ほどは,低用量の吸入ステロイド薬のみで落ち着いていた.3カ月前,転勤で当地に単身赴任し,ストレスからか1カ月半前と2週前の夜間に喘鳴があり,それぞれ朝には治まったという.また,昨夜も朝方喘鳴があり,吸入薬もなくなりそうだったため,当院を初診した.身体所見には異常を認めず,%FEV1は110%と正常であり,血液中好酸球数は500/μL,喀痰中好酸球は5%程度認められた.
本例の治療として最も良いものはどれか.1つ選べ.

A
中用量の吸入ステロイド薬に変更する.
B
現行の治療の低用量吸入ステロイド薬を継続する.
C
抗IL-5抗体の良い適応であり,専門医を受診させる.
D
現行治療相当の吸入ステロイド薬とLABAの合剤に変更する.
E
現行治療に加えて経口ステロイド薬20 mgを3~5日分,追加で処方する.

問題18

60歳女性.
35歳の時に初めて喘鳴発作が出現し喘息と診断され,ブデソニド・ホルモテロール配合薬を1日6吸入している.半年前と2カ月前に感冒を契機に喘息の増悪をきたし,プレドニゾロン30 mgを1週間服用した.それ以後は日中・夜間の症状ともほぼ消失している.スパイロメトリーでは1秒量は予測値の90%,1秒率は72%であった.本症例について正しいものを1つ選べ.

A
過去4週間の症状が安定していることから,難治性喘息ではない.
B
呼吸機能が正常範囲内であることから,難治性喘息ではない.
C
増悪を繰り返していることから,難治性喘息である.
D
まず,吸入手技とアドヒアランスをチェックする.
E
まず,増悪抑制を期待して長時間作用性吸入抗コリン薬を追加する.

問題19

以下のうち誤りを2つ選べ.

A
COPD治療では,配合薬の選択としてLABA/LAMAよりもICS/LABAが優先される.
B
COPD増悪の抑制効果は,LAMAのほうがLABAより優れる.
C
COPD治療では,禁忌がない限りLAMAを第一選択とする.
D
COPDの慢性期治療の目標は,現在の症状の改善と将来の増悪リスクの軽減である.
E
COPDにおけるICSの使用は,肺炎のリスクを上昇させない.

問題20

喀痰の膿性化を伴うCOPD増悪の治療で,優先順位の低いものを2つ選べ.

A
抗菌薬
B
短時間作用型β2気管支拡張薬の追加ないしは増量
C
内服グルココルチコステロイド
D
吸入グルココルチコステロイドの追加ないしは増量
E
去痰薬の追加ないしは増量

問題21

インフルエンザ罹患後の二次性肺炎の原因菌として最も多いのはどれか.1つ選べ.

A
インフルエンザ菌
B
モラキセラ・カタラーリス
C
緑膿菌
D
肺炎球菌
E
肺炎桿菌

問題22

禁煙治療について正しい記載はどれか.2つ選べ.

A
バレニクリンはニコチンを含む製剤である.
B
バレニクリンの副作用で最も多いのは嘔気である.
C
ニコチンパッチは心血管系疾患の急性期は禁忌である.
D
ニコチンパッチを貼付すると,喫煙本数が減ってくる.
E
禁煙の意志のない喫煙者は,速やかに禁煙外来で治療する.

問題23

日常活動性(身体活動性)評価に使用可能なのはどれか.2つ選べ.

A
心肺運動負荷検査
B
6分間歩行試験
C
シャトル・ウォーキング試験
D
St. George's Respiratory Questionnaire(SGRQ)の活動性スコア
E
3軸加速度計

問題24

気管支サーモプラスティ(BT)に関して,誤っているのはどれか.1つ選べ.

A
ペースメーカーを挿入している患者は適応外である.
B
大規模臨床試験において,自覚症状の改善と重篤な喘息増悪回数,救急受診回数の減少が報告されている.
C
重篤な合併症として,喀血が報告されている.
D
手技の際には,喘息発作を予防するため,経口ステロイド薬の予防投与が必須である.
E
気道収縮の抑制のみならず,気道炎症も改善させる.

問題25

以下のうち正しいのはどれか.1つ選べ.

A
在宅酸素導入患者は気管支鏡的肺容量減量術(BLVR)の適応にならない.
B
一方向弁によるBLVRで効果を得るためには,治療標的肺葉への側副換気がない症例を選択する.
C
形状記憶型コイルによるBLVRは葉間胸膜が保たれた症例を選択する.
D
気管支拡張症による閉塞性換気障害もBLVRの良い適応である.
E
気胸は一方向弁より形状記憶型コイルによるBLVRでより多く発症する.

問題26

COPD患者の日本における肺移植医への紹介のタイミングとして最も適切ではないものはどれか.1つ選べ.

A
在宅酸素を導入した後
B
高二酸化炭素血症を伴う急性増悪の治療後
C
最大限の内科的治療を行っても症状が進行する時
D
肺高血圧症を合併しているのが判明した時
E
腎不全を合併して透析を導入した後

問題27

ACOについて正しいのはどれか.

A
喘息とCOPDの特徴が乏しい病態と定義される.
B
日本での診断基準は示されていない.
C
アトピー素因の存在は診断に有用でない.
D
呼気一酸化窒素濃度は上昇しない.
E
吸入ステロイドが第一選択薬となる.

問題28

気管支喘息および慢性閉塞性肺疾患(COPD)に対する吸入ステロイド(ICS)の使用について正しいものはどれか.1つ選べ.

A
気管支喘息発作の際に投与される.
B
COPDの薬物治療の第一選択薬である.
C
気管支拡張作用がβ2刺激薬より強力である.
D
COPDにおいて増悪頻度が高い例で推奨される.
E
COPDにおける肺炎発症との関連は否定的である.

(解答は本誌掲載)