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特集の理解を深めるための27題


問題1

78歳女性.2日前からの発熱,倦怠感が出現し,某日意識障害に陥り,救急搬送された.初療室ではうわごとを言っており,バイタルサインは意識JCSⅡ-10,呼吸数24回/分,脈拍124回/分,血圧82/40 mmHg,SpO2 90%(室内気),瞳孔3 mm/3 mm,対光反射緩慢,体温は38.9℃だった.すぐに行うべき検査を2つ選べ.

A
頭部CT
B
血液ガス分析
C
胸腹部造影CT
D
迅速超音波検査
E
頭部MRI

問題2

【症例】27歳男性(173 cm, 65 kg).
【現病歴】1週間ほど前から体調の悪さを自覚していたが,4日前までは仕事に行っていた.3日前からは38~39℃の発熱と食欲不振がみられた.徐々に妻の言うことにも反応せずに同じ言葉を繰り返すようになり,水分は少量のみ摂取,1日中ベッド上に臥床していた.トイレなどには妻が支えて運んでいたものの,本日になってベッド上で尿・便失禁をし,動けなくなったため救急要請された.本人は「痛い,痛い」と繰り返しているが,どこが痛いか聞いても返事はなく,意思疎通は困難な状況である.
アレルギー,既往歴,内服歴はなし.最終食事摂取は3日前で,普段と変わったものは食べていない.明らかな外傷歴などはなし.先行感染などの症状はなし.周囲に同様の症状の人間はいない.
【社会生活歴】建設業勤務,喫煙歴:なし,飲酒歴:機会飲酒,家族は妻と1歳の子ども.
【バイタルサイン】GCS E2V3M5,血圧167/78 mmHg,心拍124/分,呼吸数24/分,SpO2 98%(室内気),体温39.8℃.
【身体所見】頭部:明らかな打撲痕はなし.瞳孔3+/3+.頸部:明らかな甲状腺の腫大などはない,項部硬直は軽度.胸部:肺音 清,心音Ⅰ→Ⅱ→Ⅲ(-)Ⅳ(-)・心雑音(-).腹部:腸蠕動音 やや亢進,腹部 平坦・軟,明らかな圧痛などで顔を歪める動作はない.McBurney sign(-),Murphy sign(-).背部:CVA叩打痛ははっきりしない.直腸診:明らかな前立腺の圧痛はない.神経:明らかな麻痺症状はなし.
【検査所見】採血:WBC 18,000/μL(%NE 85%),CRP 3.0 mg/dL,AST 22 U/L,ALT 18 U/L,γ-GTP 34 U/L,BUN 22.3 mg/dL,Cre 1.1 mg/dL,BS 118 mg/dL,電解質異常なし.髄液:初圧130 mmCSF,細胞数2/mm3,蛋白15 mg/dL,糖54 mg/dL.尿検査:尿潜血(-),尿糖(-),細菌(+),WBC 10/HPF.頭部CT:明らかな異常所見は指摘できず.頭部MRI:DWI強調画像で脳梁膨大部に高信号域を認める().他の条件には問題はない.

写真は本誌をご覧ください

 頭部MRI所見(DWI画像)

追加で問診する必要がないのはどれか.

A
てんかんの家族歴
B
歯科治療歴
C
膠原病の家族歴
D
子どもの先天性疾患
E
sexual activity

問題3

「急速に進行する意識障害,瞳孔不同(右>左),左片麻痺」を呈する患者について,誤った記載はどれか.

A
障害部位は中脳である.
B
頭位変換性眼振を認める.
C
いずれ四肢麻痺に進行する.
D
いずれ除脳硬直姿位が生じる.
E
右側頭葉の鉤回による圧迫がある.

問題4

意識障害における血液検査について誤っているものはどれか.

A
糖尿病の病歴がなければ低血糖症の可能性は低い.
B
血中ビタミンB1濃度が正常であってもビタミンB1欠乏症は否定できない.
C
アルコールの過量摂取は急速な血清浸透圧の上昇の原因となりうる.
D
ステロイド内服患者の意識障害では副腎クリーゼを考慮する.
E
失神で肺塞栓症を疑った場合は,臨床的なリスク評価とDダイマーの測定が重要である.

問題5

意識障害における画像検査について,正しいものはどれか.

A
意識障害患者では急変に対応するため,CT検査を施行する前に気管挿管も考慮する.
B
脳血管障害の疑いがあっても,画像検査で確定するまでは降圧を行うべきではない.
C
くも膜下出血が疑われても,頭部CT・頭部MRIで異常が見られない場合は否定できる.
D
脳梗塞超急性期の頭部MRIではT1強調画像で高信号を呈することが特徴的である.
E
近年ペースメーカー対応のMRIが開発されたので,MRI検査施行時にペースメーカー留置の有無を問診する必要がなくなった.

問題6

43歳男性.ゴルフの練習中に右後頭部痛が出現.その後も拍動性の痛みが続き,痛み止めを飲んで就寝した.翌朝,起床時からふらつきがあり,顔を洗う際に右顔面の感覚が鈍く,水を飲もうとしたが飲み込みづらかったため救急外来を受診した.
鑑別疾患として可能性が高いものを2つ選べ.

A
片頭痛
B
頸椎症
C
延髄外側梗塞
D
重症筋無力症
E
椎骨動脈解離

問題7

意識障害で搬送された患者の初期画像評価としては頭部単純CTが最も適しているが,欠点もある.その欠点を正確に表現している記述を2つ選べ.

A
脳出血超急性期の診断感度が高い.
B
脳梗塞超急性期の診断感度は必ずしも高くない.
C
放射線被曝の問題がある.
D
撮像時間が短い.
E
造影剤使用により血管系の精査を短時間で追加可能である.

問題8

痙攣発作と意識障害を主訴に救急搬送された患者.右脳出血の既往あり.頭部CTでは頭蓋内に明らかな新規病変なし.この患者の所見として矛盾するものはどれか.

A
左片麻痺
B
右向きの共同偏視
C
舌咬傷
D
髄液耳漏
E
鼻骨骨折

問題9

非痙攣性てんかん重積(NCSE)について正しい記載はどれか.

A
初期治療において迅速な酸素投与や気道確保は不要である.
B
初期治療における第一選択薬剤はプロポフォールである.
C
痙攣を伴わないてんかん活動が少なくとも5分以上続く場合と定義される.
D
遷延性意識障害の原因とはならない.
E
脳波所見は診断に役立たない.

問題10

疾患と関連する抗体の組み合わせで正しいものはどれか.

A
自己免疫性脳炎─抗NMDA受容体抗体
B
Lambert-Eaton症候群─抗筋特異的チロシンキナーゼ(MuSK)抗体
C
重症筋無力症─抗ガングリオシド抗体
D
視神経脊髄炎─抗電位依存性Kチャネル(VGKC)抗体
E
Guillain-Barré症候群─抗アセチルコリン受容体抗体

問題11

低血糖時の病態として,正しいものを2つ選べ.

A
アドレナリン作動性症状として発汗,空腹感,感覚異常が出現する.
B
中枢神経症状として頭痛,脱力感,混乱,性格変化,痙攣,一過性記憶障害,視力異常,奇異行動など多彩な症状を呈する.
C
インスリン拮抗ホルモンとしてアドレナリン,グルカゴン,コルチゾール,成長ホルモンが分泌される.
D
血糖値が60 mg/dL以下になると,昏睡状態となる.脳波は平坦化し,蛋白合成が低下してエネルギー産生も著明に減少する.
E
脳代謝ではケトン体が利用されるため,重篤な脳障害を呈しにくい.

問題12

低ナトリウム(Na)血症の電解質異常について,誤っているものはどれか.

A
意識障害を伴う低Na血症に低血糖やけいれんが合併することがある.
B
精神疾患をもつ患者の意識障害は,解離性障害など精神科領域の疾患が原因であることが多く,身体疾患や服薬状況を評価する必要性は乏しい.
C
3%食塩水を作成する際には,生理食塩水400 mLに10%塩化ナトリウム120 mLを加えるのが,簡便な作成方法の1つである.
D
低Na血症の原因疾患の診断には,現病歴や身体所見,検査所見,ベッドサイドエコーなどを総合して評価することが必要である.
E
急速な血清Na濃度の変化が,浸透圧性脱髄症候群(ODS)を起こすと考えられているため,補正速度は最初の24時間で10 mEq/L以内にとどめるよう留意する.

問題13

敗血症性脳症について,正しいものを2つ選べ.

A
敗血症性脳症は敗血症によって生じるびまん性の脳障害である.
B
敗血症性脳症では麻痺症状を認めることが多い.
C
敗血症性脳症には特異的な治療はなく,敗血症の治療を適切に行うことである.
D
敗血症性脳症は頭部造影MR検査で診断が可能である.
E
敗血症性脳症を呈した患者であっても,予後は良好である.

問題14

肝性脳症について正しいものを選べ.

A
血中アンモニア値が正常値であれば,肝性脳症は否定できる.
B
肝性脳症の誘因として,消化管出血,便秘,蛋白質の過剰摂取などが重要である.
C
羽ばたき振戦は,昏睡度Ⅰ度から認められることが多い.
D
肝性脳症の治療の第一選択は抗菌薬である.
E
肝性脳症は初期より意識障害をきたす.

問題15

75歳男性.COPDで在宅酸素療法導入中.昨日より37.7℃の発熱,咳嗽,鼻汁を認め,今朝になって呼吸困難が出現し救急要請された.救急隊現着時,鼻カヌラ1 L/分でSpO2 82%であったため,フェイスマスク6 L/分に変更された.搬送中,徐々に意識レベルの低下を認め,来院時意識レベルGCS E2V3M4,呼吸数8回/分,血圧146/75 mmHg,脈拍数103回/分,SpO2 78%(フェイスマスク6 L/分),体温37.8℃であった.
初期対応として不適切なものはどれか.

A
気道の評価
B
酸素投与量の減量
C
心電図モニター装着
D
末梢静脈路確保
E
動脈血液ガス分析

問題16

次の文章で正しいものを2つ選べ.

A
『甲状腺クリーゼの診断基準(第2版)』では,甲状腺中毒症状の存在を前提として,中枢神経症状の合併を重視している点が特徴である.
B
甲状腺クリーゼはコントロール不良なBasedow病にのみ発生する合併症であり,生命の危機に直面した状態である.
C
粘液水腫性昏睡は橋本病において比較的頻繁にみられる合併症で,橋本脳症と呼ばれることもある.
D
粘液水腫性昏睡と確実に診断できる基準はないが,ストレス下の随時採血の結果で甲状腺刺激ホルモン(TSH)が20 μU/mL以上であれば強く疑う.
E
副腎クリーゼが疑われた際には副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)とコルチゾールの検査をオーダーし,直ちに糖質コルチコイドの投与を開始する.

問題17

60歳女性.意識障害で救急搬送された.救急隊からの情報では睡眠薬を過量服用した形跡が確認されている.処方薬はカンデサルタン(ブロプレス®)2錠/日(分1),エチゾラム(デパス®)1錠/日(眠前)の2種類のみ.
次のうち,エチゾラムの過量服用に矛盾するものを2つ選べ.

A
瞳孔2/2 mm,対光反射+/+
B
発汗過多
C
血圧110/70 mmHg,脈拍60/分
D
トライエージ®DOAで「BZO」(ベンゾジアゼピン)陰性
E
呼吸数30/分

問題18

糖尿病で通院中の70歳男性に対する熱中症の説明として適切なものはどれか.

A
「大量の汗をかくのが典型的な症状です」
B
「頭痛や嘔気などの症状も熱中症の症状です」
C
「口が乾かなければ水分の補給は不要です」
D
「スポーツドリンクを大量に飲んでいれば予防できます」
E
「屋外での活動に注意すれば大丈夫です」

問題19

心因性の意識障害(昏迷)と特に誤診しやすい疾患を2つ選べ.

A
てんかん
B
脳血管障害
C
脳炎
D
中毒
E
肝性脳症

問題20

49歳の男性.けいれんを主訴に搬入された.
【現病歴】家族によれば,自宅居室内でのソファーで側臥位姿勢になりテレビを見ていたところ,突然,両側上肢を突っ張るようにけいれんさせ,そのまま反応がなくなったという.けいれんは数秒で治まり,10秒後に呼びかけに反応するようになった.患者によれば,急にめまいがして,次に気づいた時には床で臥位になっていたという.頭痛や胸痛,動悸の自覚はないものの,数カ月前から,夜間就寝中に突然,今回と同様のけいれんを起こして失禁することが数回あったという.
【来院時現症】意識清明.明らかな打撲痕なし.そのほかの身体診察で明らかな異常を認めない.
【既往歴】2型糖尿病と高血圧に対して内服加療中(詳細は不明).
この患者で疑う疾患はどれか.

A
低血糖発作
B
てんかん発作
C
洞不全症候群
D
末梢性めまい症
E
一過性脳虚血発作(TIA)

問題21

以下の病歴のうち,心原性失神を疑うべきものを2つ選べ.

A
しゃがんでいて立ち上がったときに,ふらついて意識を失った.
B
運動中に意識を失った.
C
意識を失う前に,体が温かくなり,嘔気とめまいがした.
D
めまいや気持ち悪くなったりすることはなく,いきなり気を失った.
E
生理中で下腹部痛があり,トイレの便座に座っていたところ意識を失った.

問題22

22歳の男性.忘年会に出席していた.立ち上がり数歩歩いたところで前向きに倒れたため,救急要請された.同僚の話では,転倒時数秒間,四肢をガクガクさせていたが,呼びかけに反応しすぐに覚醒したという.患者いわく,トイレに立ったところ,血の気が引いて目の前が白くなり,気がつくと倒れていたとのこと.患者救急隊接触時,意識レベルJCS 1,呼吸数18回/分,心拍数56回/分,血圧70/50 mmHg,SpO2 99%(室内気),体温35.6℃.既往歴に特記すべき事項はなく,薬剤歴もない.普段あまり飲酒はしないとのこと.悪心を訴えるが胸痛や頭痛はなく,目立った外傷はない.救急外来で優先度の低い検査を2つ選べ.

A
12誘導心電図
B
血液ガス分析
C
頭部CT
D
立位負荷試験
E
脳波検査

問題23

痙攣/てんかん発作ではなく,失神を疑う状況は以下のうちのどれか.

A
舌側面の咬傷
B
発作時に頭部が片側に回旋していた
C
発作前に既視感(デジャヴ)があった
D
長時間の座位・立位後の意識消失
E
発作後の錯乱

問題24

45歳男性.ジョギング中に失神して救急搬送.失神の前駆症状はなく,失神後に軽度嘔気の随伴はあるが胸痛はない.今回が初回の失神.救急外来でのバイタル・サインも異常はなく,診察上も特に異常なし.12誘導心電図も正常.既往歴は特にないが喫煙歴あり.本症例で短期予後不良リスクとなるものを2つ選べ.

A
ジョギング中の失神
B
前駆症状のない失神
C
失神後に嘔気あり
D
年齢
E
初回の失神

問題25

45歳男性.既往歴は特になく,現在内服している薬もない.数年前より半年に1回程度の頻度で意識がなくなっていたが,最近は2~3カ月に1回の失神が出現していた.
他院での頭部MRI検査では異常はなかったが,職場にて再度失神したため,救急車にて救急外来へ搬送された.職場では会話中に突然意識がなくなり,20秒程度で意識が回復したという.また,失神前後に麻痺などの神経症状はなく,覚醒後の意識混濁は認めなかった.
心電図,血液検査,心臓超音波検査では異常は認められなかった.次にするべき検査・処置として適切なものはどれか.

A
脳波検査
B
冠動脈造影
C
心臓電気生理学的検査
D
植え込み型ループ心電計の植え込み
E
ペースメーカの植え込み

問題26

次のうち,正しいものを2つ選べ.

A
失神において入院・帰宅のマネジメントのためには診断が必要不可欠である.
B
血管迷走神経反射と診断されれば帰宅可能である.
C
tilt試験は診断およびマネジメントのため救急外来でも実施すべきである.
D
反射性失神は病歴だけで診断してよい.
E
咳失神(cough syncope)は中年の太った男性に多い.

問題27

失神患者の診療について,正しい記述はどれか.

A
くも膜下出血は頭痛を伴わないことがあるため,頭部CTは全例で施行したほうがよい.
B
大動脈解離は疼痛がなければ否定できる.
C
起立性低血圧は失神の原因としては稀である.
D
急性失血では貧血よりも起立性低血圧を認めやすい.
E
失神患者では重篤な疾患を除外するために心臓超音波検査は必須である.

(解答は本誌掲載)