HOME > 雑 誌 > medicina > バックナンバー一覧 > 54巻8号(2017年7月号) 特集の理解を深めるための30題
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特集の理解を深めるための30題


問題1

以下のうち誤っているものを選べ.

A
生存率と死亡率を足しても必ずしも100%にならない.
B
疾患のリスク要因が各種あるなかで集団寄与危険割合を足していくと100%を超えることがある.
C
疾患を引き起こすリスク要因がある場合は有病率が高いと言える.
D
一生に一度はがんにかかる確率は累積罹患リスクで算出する.
E
発生率と罹患率はほぼ同じである.

問題2

わが国で対策型がん検診として受診を勧奨できないがん検診はどれか.1つ選べ.

A
肺がん
B
乳がん
C
胃がん
D
前立腺がん
E
大腸がん

問題3

がん治療において治療計画を立てるのに最も重要な診断情報はどれか.

A
病理組織診断(HE染色)
B
分子病理学的診断
C
病期診断(ステージング)
D
病気診断
E
病理組織診断(IHC染色)

問題4

免疫チェックポイント阻害薬の免疫関連有害事象として考えにくいのはどれか.1つ選べ.

A
間質性肺炎
B
甲状腺機能障害
C
1型糖尿病
D
高血圧
E
副腎障害

問題5

がん細胞に放射線を集中させるための物理工学的アプローチではないものはどれか.1つ選べ.

A
粒子線治療
B
強度変調放射線治療(IMRT)
C
定位放射線照射
D
加速過分割照射(1日2回照射)
E
画像誘導下放射線治療

問題6

がん患者に対しての基本的なコミュニケーションスキルとして重要でないものはどれか.1つ選べ.

A
場の設定
B
質問するスキル
C
標準化
D
指示
E
共感

問題7

60代の男性.胃がん検診にて異常を指摘され来院した.上部消化管内視鏡検査所見(通常光観察,インジゴカルミン色素撒布観察)および超音波内視鏡(EUS)写真を示す().

写真は本誌をご覧ください

 a.通常光観察,b.インジゴカルミン色素撒布像,c.EUS検査所見

推定される深達度はどれか.

A
M
B
SM1
C
SM2
D
MP
E
SS

問題8

胃がん化学療法で標準治療として使用される薬剤はどれか.2つ選べ.

A
ベバシズマブ
B
ラムシルマブ
C
トラスツズマブ
D
セツキシマブ
E
パニツムマブ

問題9

早期大腸がんの内視鏡下治療後の病理診断で追加切除の適応とならないものを選べ.

A
Mがん,脈管侵襲陰性,高分化腺がん,浸潤先進部の簇出Grade1
B
SM浸潤度500 μm,脈管侵襲陰性,低分化腺がん,浸潤先進部の簇出Grade1
C
SM浸潤度500 μm,脈管侵襲陽性,高分化腺がん,浸潤先進部の簇出Grade1
D
SM浸潤度500 μm,脈管侵襲陽性,低分化腺がん,浸潤先進部の簇出Grade3
E
SM浸潤度2,000 μm,脈管侵襲陰性,粘液がん,浸潤先進部の簇出Grade1

問題10

以下で効果予測因子が存在する抗がん剤はどれか.1つ選べ.

A
ベバシズマブ
B
イリノテカン
C
セツキシマブ
D
5-FU
E
オキサリプラチン

問題11

肝細胞がんの診断と治療で正しいものを1つ選べ.

A
dynamic CT/MRIで早期造影効果があり,門脈・平衡相で高吸収域(後期濃染)となる結節であれば,肝細胞がんの診断が可能である.
B
α-fetoproteinとCEAは肝細胞がんに有用な腫瘍マーカーである.
C
ラジオ波焼灼術とエタノール注入療法の治療効果は変わらない.
D
シスプラチン肝動注化学療法は,標準治療としてのコンセンサスが得られた治療である.
E
ソラフェニブ不応の肝細胞がんに対して,レゴラフェニブはプラセボと比較して延命効果が示された.

問題12

55歳の女性.
自覚症状はないが,健康診断の胸部X線写真で異常を指摘され来院した.特記すべき既往歴はなく非喫煙者であった.
胸部X線撮影にて左上肺野末梢に2 cm大の結節影を認めた.躯幹部CT検査では左肺上葉末梢に2 cm大の結節と両肺に多発小結節を認めたが,リンパ節腫大は認めず,腹部臓器にも異常はなかった.脳MRIと骨シンチグラフィでは異常を認めなかった.気管支鏡での左肺上葉結節の病理診断結果から,肺腺がん,EGFR 遺伝子変異エクソン19欠失変異陽性,と診断された.
この患者の治療で正しいものを1つ選べ.

A
シスプラチン+エトポシド併用療法
B
エルロチニブ内服療法
C
ドセタキセル単独療法
D
ニボルマブ療法
E
左肺上葉切除術+術後補助化学療法

問題13

慢性閉塞性肺疾患を背景にもつ65歳女性.
発熱,喀痰量増加,労作時呼吸困難,両上肢と顔面浮腫を主訴に平日午前の救急外来を受診した.呼吸は28回/分,安静時SpO2 91%(室内気),右前胸部で吸気末にcoarse cracklesを聴取した.
血液検査では,炎症反応高値,血清Cr 1.20 mg/dLと軽度の腎機能障害を認めた.胸部単純X線写真では右上肺野の透過性低下を認めた.胸部造影CTで右肺門部に5 cmを超える辺縁不整で内部に造影不良域を伴う腫瘤影を認めた.腫瘤影は縦隔に浸潤しており,上大静脈の狭小化を認めた.右上葉全体に浸潤影を認め,軽度胸水貯留を伴っていた.また,肝臓にも多発腫瘤影を認めた.喀痰細胞診を行い,迅速報告で小細胞がんと報告された.
この患者の今後の治療方針について正しいものを1つ選べ.

A
放射線単独療法
B
化学放射線療法
C
化学療法(CDDP+PEM)
D
化学療法(CBDCA+ETP)
E
緩和ケア治療のみ

問題14

早期乳がんに対する術後化学療法を判断する因子として適切でないのはどれか.

A
年齢
B
腫瘍径
C
リンパ節転移の個数
D
脈管侵襲
E
ホルモン受容体の発現

問題15

再発乳がん患者の治療方針を決定する際に,必要としない情報はどれか.1つ選べ.

A
原発乳がん組織のホルモン受容体発現の有無
B
原発乳がん組織のHER2 発現の有無
C
手術時の腋窩リンパ節転移の有無
D
家族構成
E
年齢

問題16

76歳男性.
検診でPSA 9.1 ng/mLと高値を指摘され受診した.直腸診・画像診断では腫瘍は明らかでなかったが,前立腺生検を施行したところ,病理ではGleason Score 3+3=6の前立腺がんであった.全身精査を行ったところ,リンパ節転移および遠隔転移は認めなかった.本症例において適切な治療を2つ選べ.

A
経過観察(watchful wait)
B
放射線療法
C
前立腺全摘術
D
化学療法
E
凍結療法

問題17

高血圧,高コレステロール血症,心房細動のある78歳男性.
4年前に前立腺がん骨転移と診断されゴセレリン,ビカルタミドの併用療法を行い,2年間ほどPSAは検出感度以下であった.この度PSAが1年間で2.38 ng/mLまで上昇したため,CT,骨シンチグラフィを撮影したが新たな病変はなかった.泌尿器科医はビカルタミド中止による抗アンドロゲン薬除去症候群(anti-androgen withdrawal syndrome:AWS)を期待したが,2カ月後のPSAはさらに上昇し4.05 ng/mLとなった.本日泌尿器科を再受診し相談のうえ明日よりエンザルタミド160 mg/日が開始されることとなった.同日かかりつけ内科医を受診した.症状はない.
身体所見:血圧145/82 mmHg
1週間前の採血結果:Cr 0.82 mg/mL,eGFR 86 mL/min/1.73 m2,AST 28 IU/L,ALT 9 IU/L,HbA1c 6.7%,UA 6.6 mg/dL,LDL-C 140 mg/dL
現在の内服薬:アムロジピン10 mg/日,エナラプリル10 mg/日,アトルバスタチン10 mg/日,メトホルミン1,000 mg/日,アロプリノール200 mg/日
副作用マネジメントのための指導として正しいものはどれか.

A
糖尿病の悪化が多いため血糖チェックをするよう指示した.
B
腎機能の低下が多いため2週間後に採血を行う予定を立てた.
C
脱毛に備えてウィッグを買うように勧めた.
D
血圧上昇が多いため自宅での血圧チェックをするように勧めた.
E
体液貯留が多いため体重チェックをするよう指示した.

問題18

イリノテカンによる遅発性下痢予防に使用される漢方薬を選べ.

A
大建中湯(ダイケンチュウトウ)
B
牛車腎気丸(ゴシャジンキガン)
C
半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)
D
補中益気湯(ホチュウエッキトウ)
E
十全大補湯(ジュウゼンダイホトウ)

問題19

次のうち,発熱性好中球減少症(FN)について正しいものを2つ選べ.

A
FNを疑い,まず抗菌薬を開始した.
B
FNは低リスクの患者であれば外来で治療できる.
C
FNの経験的治療としてβ-ラクタム薬の単剤での治療が推奨されている.
D
FNの経験的治療としてβ-ラクタム薬とアミノグリコシドの併用療法が推奨されている.
E
FNの治療には全例G-CSF製剤を使用することが推奨されている.

問題20

マルチキナーゼ阻害薬投与後に注意すべき皮膚症状はどれか.1つ選べ.

A
痤瘡様皮疹
B
爪囲炎
C
手足症候群
D
白斑
E
乾皮症

問題21

薬剤性間質性肺炎に関して正しいのはどれか.1つ選べ.

A
薬剤投与が終わっていれば薬剤性間質性肺炎を発症することはない.
B
基本的に,被疑薬は投与中止とする.
C
ニューモシスチス肺炎との鑑別は容易である.
D
間質性肺炎の回復を待たずに化学療法を再開できる.
E
mTOR阻害薬によるGrade1の間質性肺炎は治療を中止する.

問題22

治療に伴い骨粗鬆症による骨折のリスクが増加し,デノスマブにより改善する状況はどれか.
1)閉経前乳がんに対する術後補助化学療法で閉経した患者
2)閉経前乳がんに対する術後補助療法としてLHRH agonistを投与している患者
3)閉経後乳がんに対する術後補助療法としてアロマターゼ阻害剤を投与している患者
4)前立腺がんに対するアンドロゲン除去療法(ADT)を行っている患者

A
1,2,3,4
B
1,3,4
C
2,3
D
3,4
E
4

問題23

68歳の男性.
多発肺転移・肝転移を伴うIV期非小細胞肺癌(腺がん)に対する二次治療として2カ月前からニボルマブで治療中である.治療は奏効しており,右下葉無気肺が改善傾向となっている.昨日より39℃の発熱,強い倦怠感が出現したため来院した.
身体所見:PS3,意識清明,体温39.8℃,血圧78/42 mmHg,脈拍132回/分.
血液・血清生化学所見:WBC 6,800/μL,Na 126 mEq/L,随時血糖76 mg/dL,CRP 4.6 mg/dL.
この患者の診断に必要な検査はどれか.2つ選べ.

A
抗GAD抗体
B
血液培養検査
C
抗TSH受容体抗体
D
血清ACTH・コルチゾール値
E
CEA

問題24

がんサバイバーとそのケアについて正しいものを選べ.

A
おおむね罹患後3年が経過し,無再発である者をいう.
B
重複がんの検診より再発監視に注力すべきである.
C
ケアとして,健康行動を促す.
D
がんに対する治療の影響は数カ月間持続する.
E
サバイバーが訴える不定愁訴には取り合わない.

問題25

高齢者機能評価のツールでないものはどれか.1つ選べ.

A
CHADS2 Score
B
Performance Status
C
Geriatric Depression Scale
D
Charlson Comorbidity Index
E
Mini-mental State Examination

問題26

悪性腫瘍に伴う脊髄圧迫症候群(MSCC)の診断において,最も優先されるべき画像検査はどれか.1つ選べ.

A
全身造影CT(computed tomography)
B
骨シンチグラフィ
C
脊椎MRI(magnetic resonance imaging)
D
脊椎単純X線撮影
E
脊髄造影

問題27

53歳の女性.
転移性乳がん,多発骨転移と診断され,ホルモン治療を受けていた.肝機能,腎機能は良好である.1カ月前から骨転移の痛みが悪化し,来院2週間前から嘔気が出現.来院1週間前からまったく食事が摂れず,来院した.
内服薬:オキシコドン,カルシウム・マグネシウム・ビタミンD製剤
血液検査:Alb 2.9 g/dL,Ca 12 mg/dL,BUN 55 mg/dL,Cr 2.2 mg/dL,PTHrP 3.0 pmol/L(基準値0~1.1),PTH 4 pg/mL(基準値10~65),1,25-(OH)2D 15 pg/mL(基準値20~60)
頭部MRI:明らかな脳転移なし.この患者のカルシウム上昇の機序として最も寄与しているものはどれか.

A
異所性PTH産生
B
腫瘍随伴性体液性高カルシウム血症
C
骨融解型転移
D
1,25-(OH)2D産生
E
カルシウム製剤の内服

問題28

68歳男性.
転移性大腸がん(多発肺転移あり)に対して抗がん治療を行っていたが標準治療に反応しなくなり,2カ月前に抗がん治療を中止した.2,3週間前から安静時呼吸困難が出現し徐々に増悪してきたため,精査加療目的に入院した.特記すべき不安はない.
呼吸数24回/分,SpO2 88%,血液検査上腎機能は正常.胸部CTにて両側の多発肺転移の著明な増悪とがん性リンパ管症,少量の胸水が認められた.酸素,コルチコステロイドを開始しSpO2は安定したが,入院後3日を経過しても安静時呼吸困難のNRS(0~10)は7と改善がみられない.呼吸困難の緩和に有用な薬剤はどれか.1つ選べ.

A
モルヒネ皮下注
B
フェンタニル貼付剤
C
ロラゼパム内服
D
フロセミド内服
E
フロセミド吸入

問題29

68歳の女性.乳がん肺転移に対する化学療法を続けているが,効果や副作用の観点から,そろそろ治療の継続が難しくなってきていると主治医は考えている.今後の治療について相談していくなかで,患者から「緩和ケアのことも考えておいたほうがよいのでしょうか」という質問があった.そのときに取るべきではない対応はどれか.2つ選べ.

A
緩和ケアチームやがん相談支援センターを紹介する.
B
治療が終了になってからのことを,患者がどう考えているか確認する.
C
まだ治療の選択肢はあるから,今から緩和ケアを考える必要はないと答える.
D
自分の専門は乳がんだから,緩和ケアのことは分からないと答える.
E
これから考えられる治療の選択肢を説明し,今後についての相談を開始する.

問題30

次の療養のうち,原則として患者が必要な費用の大部分を負担する可能性があるものはどれか.

A
保険診療
B
患者申出診療
C
先進医療B
D
拡大治験
E
医師主導治験

(解答は本誌掲載)