特集の理解を深めるための26題
問題1
胃食道逆流症の治療で第一選択となるのはどれか.
A H2受容体拮抗薬
B 消化管運動賦活薬
C プロトンポンプ阻害薬
D 粘膜保護薬
E 腹腔鏡下噴門形成術
問題2
45歳女性.1週間に数回以上の食後の膨満感が半年続き,来院した.上部消化管X線造影検査,上部消化管内視鏡検査,腹部超音波検査では異常を認めなかった.最も考えられる疾患はどれか.
A 食道アカラシア
B 逆流性食道炎
C 機能性ディスペプシア
D 胆石
E 胃潰瘍
問題3
過敏性腸症候群の薬物療法で,第一選択となるものはどれか.2つ選べ.
A 抗コリン薬
B 抗不安薬
C 止痢薬
D 高分子重合体
E 消化管運動調節薬
問題4
わが国におけるHelicobacter pylori (H. pylori )保険診療で正しいのはどれか.
A 上腹部症状のある患者には,まずH. pylori 感染診断を行う.
B 開放性胃潰瘍患者には,H. pylori 除菌薬処方のみで十分である.
C H. pylori 除菌治療に成功した場合,その後の内視鏡検査は不要である.
D 他院人間ドック内視鏡検査で萎縮性胃炎を指摘された患者に対して,尿素呼気試験を行い,除菌薬を処方する.
E 除菌治療前の薬剤感受性試験でクラリスロマイシン耐性菌であった場合,メトロニダゾールを含んだ二次除菌治療法を第一選択とする.
問題5
非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)潰瘍について誤っているのはどれか.1つ選べ.
A 高齢はNSAIDs潰瘍の確実な危険因子の1つである.
B NSAIDs潰瘍の高リスク群にはプロトンポンプ阻害薬(PPI)の併用を考慮する.
C 選択的COX-2阻害薬は,非選択的NSAIDsと比較して有意に潰瘍発症率が低率である.
D H. pylori 除菌療法はH. pylori 陽性NSAIDs潰瘍の治癒を促進する.
E NSAIDs投与開始予定例では,H. pylori 除菌が勧められる.
問題6
潰瘍性大腸炎の薬物療法で正しいものはどれか.1つ選べ.
A 5-アミノサリチル酸製剤の副作用には,精神症状がある.
B ステロイド剤には寛解維持効果がある.
C アザチオプリン(イムラン®)の効果発現は比較的早く,ステロイド抵抗性潰瘍性大腸炎の寛解導入に有効である.
D タクロリムス(プログラフ®)の副作用に,腎機能障害が報告されており,不可逆性である.
E インフリキシマブ(レミケード®),アダリムマブ(ヒュミラ®)使用時には,B型肝炎ウイルスの再活性化に十分注意を払う.
問題7
24歳の女性.3カ月前から頻回の下痢と腹痛が持続しており,前医で大腸型Crohn病と診断され来院した.発熱や体重減少も認め中等症~重症と診断,プレドニゾロン50 mg/日を2週間投与するも症状の改善を認めなかった.
身体所見:身長160 cm,体重45 kg,体温37.7℃.左下腹部に圧痛を認めた.
血液・血清生化学所見:赤血球数300万/μL,Hb8.5 g/dL,白血球数12,200/μL,総蛋白5.8 g/dL,総コレステロール102 mg/dL,CRP 7.6 mg/dL.
次に投与すべき薬剤はどれか.1つ選べ.
A アザチオプリン
B インフリキシマブ
C メトロニダゾール
D 6-メルカプトプリン
E 5-アミノサリチル酸製剤
問題8
下記のうち正しいものはどれか.1つ選べ.
A 感染性腸炎の初期治療は脱水,電解質異常の評価と補正である.
B 感染性腸炎の便培養陽性率は30%以上である.
C 入院患者に下痢を認めたので,便中白血球と便培養検査を行った.
D 偽膜性腸炎の初期治療はバンコマイシン(VCM)の経静脈的投与である.
E 大腸憩室炎は重症度にかかわらず入院のうえ,禁食,抗菌薬投与がよい.
問題9
寄生虫疾患と治療薬の組み合わせで間違っているものはどれか.1つ選べ.
A 赤痢アメーバ症:メトロニダゾール
B ジアルジア症:イベルメクチン
C クリプトスポリジウム症:ニタゾキサニド
D 蟯虫症:パモ酸ピランテル
E 日本海裂頭条虫症:ビルトリシド
問題10
HBs抗原陰性で,HBs抗体あるいはHBc抗体が陽性のHBV既往感染者に対して,免疫抑制剤投与や化学療法を施行する際にde novo B型肝炎を予防するための対策で正しいのはどれか.1つ選べ.
A 全例で化学療法開始前に核酸アナログを投与する.
B HBs抗原を定期的に測定し,陽性になれば核酸アナログを投与する.
C ALTを定期的に測定し,上昇すれば核酸アナログを投与する.
D HBV DNAを定期的に測定し,2回連続で陽性になれば核酸アナログを投与する.
E HBV DNAを定期的に測定し,陽性になれば直ちに核酸アナログを投与する.
問題11
C型肝炎の発がんリスク因子として誤っているものはどれか.1つ選べ.
A 男性
B 飲酒歴
C 血小板高値
D 血清ALT高値
E 肝脂肪化
問題12
自己免疫性肝炎の治療法として,誤りを2つ選べ.
A ステロイドが第一選択薬である.
B ステロイドによりALT,IgGが基準値内に改善した場合,副作用を考慮して直ちに投薬を中止する.
C 再燃する度に治療を再開することで,良好な長期予後が得られる.
D 現在,ステロイド以外の免疫抑制薬は保険適用外である.
E ステロイドを中止する際は,肝生検で組織学的炎症消退を確認するとよい.
問題13
門脈亢進症における薬物療法として正しい組み合わせはどれか.
A プロプラノロール:肝内血管抵抗の改善
B ピトレッシン:出血予防
C 肝性脳症:BCAA製剤
D ラクツロース:腸管内アンモニア生産菌の発育抑制
E 腹水治療薬:バゾプレッシンV1受容体
問題14
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の治療に関して,誤っているものを1つ選べ.
A 運動療法の際は,有酸素運動が推奨される.
B 食事療法の際は,不飽和脂肪酸摂取制限が推奨される.
C 高コレステロール血症を合併している場合は,スタチン系薬剤を考慮する.
D インスリン抵抗性のある糖尿病を合併している場合は,チアゾリジン薬を考慮する.
E 高血圧症を合併している場合は,アンジオテンシンII 1型受容体拮抗薬を考慮する.
問題15
アルコール性肝炎の重症度の判定に用いられない検査項目を1つ選べ.
A プロトロンビン(PT)時間
B 血清総ビリルビン(TB)値
C 血清クレアチニン(Cr)値
D 血清AST活性
E 末梢血白血球数(WBC)
問題16
胆石症,胆道感染症,肝膿瘍について正しいものを以下より選べ.
A 無症状胆石では,ウルソデオキシコール酸で,ほとんどの結石溶解が可能である.
B 急性胆嚢炎の重症例は,緊急手術が第一選択である.
C 急性胆管炎では,まず内視鏡的胆道ドレナージを行う.
D 化膿性肝膿瘍ではまず,抗菌薬投与で経過観察を行う.
E アメーバ性肝膿瘍ではメトロニダゾールは無効であり,経皮的ドレナージが第一選択であり,積極的に行う.
問題17
66歳男性.黄疸を主訴に来院.上腹部に軽度の圧痛を認めるが,反跳痛は認めない.血液・血清生化学,免疫学的検査所見:白血球5,900/μL,Hb13.5 g/dL,Ht 39.7%,CRP 0.8 ng/mL,ASL 56 IU/L,ALT 68 IU/L,T. bil 4.8 mg/dL,D. bil 3.5 mg/dL,ALP 555 IU/L, γ-GTP 326 IU/L, 血清膵アミラーゼ93 IU/L,リパーゼ87 IU/L, T.P 6.6 g/dL,空腹時血糖136 mg/dL,IgG 1,200 mg/dL,IgG4値145 mg/dL,CA19-9 37 ng/mL.入院後の内視鏡的逆行性胆道膵管造影で頭部主膵管に不整狭細像を認めた.本症例での所見として誤っているのはどれか.1つ選べ.
A 膵頭部腫大
B 膵周囲の被膜様構造物
C 腹部MRI拡散強調画像で低信号
D 閉塞性静脈炎
E 花筵状線維化
問題18
Performance status良好なstage IIの胃癌症例に対して推奨される治療方針はどれか.1つ選べ.
A 手術のみ
B 手術→術後補助化学療法
C 手術→術後補助放射線療法
D 化学療法のみ
E 緩和療法
問題19
大腸がんの標準治療であるFOLFOX+抗EGFR抗体薬療法で用いない薬剤はどれか.1つ選べ.
A オキサリプラチン
B パニツムマブ
C ベバシズマブ
D 5-フルオロウラシル(FU)
E セツキシマブ
問題20
進行肝臓がんの薬物療法について誤っているのはどれか.
A 根治的治療後の再発抑止目的で,HBV感染者に対する核酸アナログ療法あるいはHCV感染者に対するインターフェロン療法が行われている.
B 肝動脈化学塞栓療法は,肝切除や局所療法の適応外病変で,基本的に門脈血流が保たれている症例のほとんどで選択されている.
C Vp3,Vp4の脈管浸潤を伴う場合には,動注化学療法あるいは分子標的薬が適応となる.
D 肝動脈化学塞栓療法不応でChild-Pugh分類Bの場合は,分子標的薬が推奨されている.
E 全身化学療法でsurvival benefitが証明された殺細胞性抗癌剤は存在しない.
問題21
癌の痛みに対するオピオイドの使用に関して,正しいものを2つ選べ.
A 医療用麻薬は適切に使用すると身体依存や精神依存は生まれない.
B オピオイドローテーションの際に,フェンタニルパッチをはがしたら,速やかにモルヒネの持続静注を始める.
C ロキソプロフェンなどのNSAIDsで効果がない場合,弱オピオイドのトラマドールの使用を考慮する.
D モルヒネ塩酸塩は腎機能障害がある患者の場合,効果が遷延するために減量を考慮する.
E コデインリン酸は麻薬処方箋なしに処方できる.
問題22
機能性ディスペプシアに使用することの多い漢方薬はどれか.2つ選べ.
A 六君子湯(リックンシトウ)
B 葛根湯(カッコントウ)
C 麻黄湯(マオウトウ)
D 半夏瀉心湯(ハンゲシャシントウ)
E 抑肝散(ヨクカンサン)
問題23
うつ病と抗うつ薬について誤っているものはどれか.2つ選べ.
A 選択的セロトニン再取り込み阻害薬の主な副作用は嘔気,下痢などの消化器症状である.
B 三環系抗うつ薬は口渇,便秘,心筋伝導障害などが出現しやすい.
C 自殺の危険を防ぐため,若年者であっても抗うつ薬は積極的に用いるべきである.
D 抗うつ薬を急激に中断した場合に起こりやすい症状は嘔気,めまい,頭痛などである.
E うつ病患者に消化器症状が出現することは稀である.
問題24
炎症性腸疾患(IBD)患者の妊娠・出産に関する次の記述のうち,正しいものを1つ選べ.
A 妊娠可能年齢のIBD患者では,妊娠・出産に関する事前の説明や,計画的な妊娠が重要である.
B 妊娠IBD患者に対する投薬は,胎児に対する奇形など合併症の危険があるため,妊娠が判明したら基本的に投薬を中止する.
C 抗TNFα抗体は高分子量の抗体製剤で,胎盤を通過しないため,胎児への影響を考慮する必要がない.
D IBD合併妊娠の早産,低出生体重時のリスクは,特に寛解期妊娠で増加する傾向がある.
E 海外のエビデンスでは,投薬の有益性が危険を上回るとされているので,妊娠前に特に本人家族に治療のメリット・デメリットについて説明は行わず,妊娠後も治療継続を主治医が決定した.
問題25
大腸内視鏡前処置に関して正しいものはどれか.1つ選べ.
A 腸管洗浄液は不味いので好みのフレーバーを添加したほうがよい.
B 腸管洗浄液を半量の水で溶解すれば,受容性は高まりほぼ同等の効果が得られる.
C 大量の腸管洗浄液投与は,腎不全患者では禁忌である.
D 高齢者では,PEG-ELSよりもリン酸ナトリウム錠剤による前処置法が望ましい.
E PEG-ELS投与直後の鎮静下内視鏡検査は危険を伴う.
問題26
ルビプロストンの使用について誤りはどれか.2つ選べ.
A 便中水分含量を増加させる.
B 大腸壁刺激による反射性排便を促す.
C 便秘に伴う腹部不快症状には影響しない.
D 腸管上皮のClC2の賦活作用により薬効が発現する.
E 排便促進効果は,服用して48時間以内に90%以上の症例で確認される.
(解答は本誌掲載) |