HOME雑 誌medicina誌面サンプル 44巻10号(2007年10月号) > 今月の主題「理解のための29題」

今月の主題

「理解のための29題」


問題01

気管支喘息とCOPDの疾患概念に関する次の記述で正しいのはどれか.1つ選べ.

A:気管支喘息はI型アレルギーで起こる.
B:気管支喘息の気道過敏性はアレルゲン特異的である.
C:COPDの概念には気管支喘息が含まれる.
D:気管支喘息とCOPDの境界例は存在しない.
E:COPDでは完全ではない気道可逆性が存在する.


問題02

喘息の疫学調査結果として誤っているものはどれか,1つ選べ.

A:日本の喘息有症率は諸外国の中でもかなり低い.
B:日本の学童の喘息有症率は10年間でほぼ2倍に増えている.
C:日本での吸入ステロイドの普及率は欧米に比して低い.
D:喘息による死亡者数は年々減少し年間3,000人未満となった.
E:喘息死亡者数の年齢別の割合は高齢者が圧倒的に多い.


問題03

わが国におけるCOPDの疫学について,正しいものはどれか.

A:推定患者数は約100万人である.
B:有病率は欧米諸国よりも低い.
C:女性の有病率は男性の1/10以下である.
D:約50%が医療機関に受診している.
E:非喫煙者においてもCOPDは稀ではない.


問題04

気道リモデリングに関与しないものはどれか,1つ選べ.

A:血管新生
B:基底膜肥厚
C:粘膜下腺過形成
D:アミロイド沈着
E:平滑筋肥大増殖


問題05

COPDの病態で正しくない記述はどれか,一つ選べ.

A:タバコが最も重要な病因である.
B:好中球,マクロファージ,CB8陽性リンパ球の肺,気道への浸潤を認める.
C:傷害を受ける部位は気道,肺胞壁,および肺血管である.
D:気流制限の主因は細気管支領域の閉塞と肺弾性収縮圧低下である.
E:気管支拡張薬には反応しない.


問題06

咳喘息(cough variant asthma)について誤っているのはどれか,2つ選べ.

A:咳感受性は亢進している.
B:発症よりも前8週間以内に,上気道炎に罹患していることが多い.
C:経過中に喘息に移行することがある.
D:治療には,吸入ステロイドをはじめとした抗喘息薬が用いられる.
E:喀痰中の好酸球に増加が認められる.


問題07

正しいものを選べ.

A:わが国のCOPD患者は約20万人である.
B:COPDの診断はスパイロメトリーで行う.
C:COPDの診断に画像検査はいらない.
D:パルスオキシメータがあれば,動脈血は必要ない.
E:COPDは肺の破壊のために起こるので,治療法はない.


問題08

高齢者喘息とCOPDの病態と鑑別について,正しいのはどれか.

A:高齢者喘息がCOPDと診断されていることはほとんどない.
B:高齢COPD患者では,気流閉塞の可逆性はみられない.
C:喘息,COPDはともに気道の炎症性疾患であり,炎症を形成するリンパ球は,喘息ではCD8陽性リンパ球であるのに対し,COPDではCD4陽性リンパ球である.
D:長時間作用型吸入抗コリン薬(tiotropium)は,高齢者喘息およびCOPDのどちらにも適応を有する.
E:高齢者喘息では,喀痰中の好酸球が増加し,eosinophil cationic protein(ECP),RANTESなどの上昇がみられるが,安定期COPDでこれらが上昇することは稀である.


問題09

喘息とCOPDの鑑別について正しいのはどれか,1つ選べ.

A:喘息患者は常時息切れを自覚している.
B:COPD患者の息切れには季節性があるのが特徴である.
C:進行したCOPD患者では栄養障害が認められることが多い.
D:喘鳴があれば喘息と診断できる.
E:胸郭変形は喘息患者でもよく認められる所見である.


問題10

喘息とCOPDにおける肺機能検査・血液ガス検査について正しいものはどれか,1つ選べ.

A:COPD患者は気道可逆性をもたない.
B:フローボリューム曲線の下行脚後半は中枢気道の状態を反映する.
C:多血症では肺拡散能の測定値が増大する.
D:喘息においてピークフロー値は午前4時頃が最高値となることが多い.
E:肺胞性低換気は低二酸化炭素血症をもたらす.


問題11

COPDの画像所見で誤っているものを2つ選べ.

A:tram lines
B:横隔膜平定化
C:蜂窩肺
D:crazy-paving shadow
E:saber-sheath気管


問題12

疾患と検査所見の組み合わせについて正しいのはどれか,2つ選べ.

A:喘息・血液中の好酸球増多
B:COPD・血液中の単球増多
C:RSウイルス感染で誘発された気管支喘息発作・ウイルス特異的IgE
D:アスピリン喘息・アスピリン特異的IgE
E:右心不全を伴うCOPD・血中BNP高値


問題13

救急外来で気管支喘息の中発作から大発作に対する治療法で誤っているものはどれか.一つ選べ.

A:外来受診時にパルスオキシメータを装着し脈拍,SpO2をモニターする.
B:β2刺激薬ネブライザーを20~30分おきに反復する.
C:できるだけ早期に全身性ステロイド薬の投与を開始する.
D:0.1%エピネフリン皮下注射を注意しながら施行することがある.
E:自覚症状の改善が認められたら,帰宅可能である.


問題14

COPD急性増悪の治療について,正しいものはどれか.

A:CO2貯留が認められる場合,酸素投与はできるだけ控えるべきである.
B:気管支拡張薬は,まず抗コリン薬を選択する.
C:吸入ステロイドを併用すべきである.
D:喀痰の膿性化がある場合,抗生物質を投与すべきである.
E:補助換気療法として,侵襲的人工換気療法を最初に考慮する.


問題15

気管支喘息の長期管理に関する記述で,正しいものを2つ選べ.

A:無治療で喘息症状が毎日ある場合,ステップ3(中等症持続型)以上に相当する.
B:ステップ2(軽症持続型)では,吸入ステロイド(ICS)使用は必須ではない.
C:ステップ1(軽症間欠型)では,やや症状が多いとき長時間作用性吸入β2刺激薬(LABA)を単独で用いてもよい.
D:ステップ4(重症持続型)では,経口ステロイドを積極的に早期から追加する.
E:ICSに追加する気管支拡張薬のなかでは,LABAの気管支拡張作用が最も強い.


問題16

COPDの慢性期の薬物治療について誤っているものはどれか,1つ選べ.

A:すべてのCOPD患者にインフルエンザワクチンの接種が推奨される.
B:重症COPD患者で急性増悪を繰り返すものには,経口ステロイドの投与が推奨される.
C:慢性期のCOPDの治療の目的は,症状のコントロールが中心である.
D:慢性期のCOPD患者に対する気管支拡張薬の使用は,単剤よりも併用のほうがより効果的である.
E:長時間作用型の気管支拡張薬は,短時間作用型のものよりもより効果的である.


問題17

吸入ステロイド薬(ICS)について,正しい記述はどれか.

A:ICSは,高用量を用いても副腎抑制をきたすことがない.
B:ICSは,喘息の気道炎症を抑制できない.
C:ICSは,喘息では低用量から開始したほうが効果が高い.
D:COPDでは,ICSが第一選択治療薬である.
E:COPDでは,LABA(長時間作用性β2刺激薬)とICSを併用することで死亡率が改善する.


問題18

気管支喘息とCOPDにおける薬物治療で正しいものはどれか,1つ選べ.

A:長時間作用性β2選択的刺激薬は気管支喘息の発作時,COPDの急性悪化時の第一選択薬である.
B:高齢の喘息患者では,アドヒアランスの点から長時間作用性β2選択的刺激薬(LABA)として,経口薬が最も推奨される.
C:喘息治療において,高用量ICSと低用量ICS+LABA併用を比較すると,ICS+LABA併用群のほうが優れた臨床効果を示す.
D:気管支喘息のコントローラー(長期管理薬)として第一選択薬は吸入ステロイドの定時吸入,または長時間作用性吸入β2選択的刺激薬(LABA)の単独使用である.
E:中等症以上の安定期COPDの第一選択薬は吸入ステロイド薬である.


問題19

次のうち,テオフィリンのクリアランスを低下させる(血中濃度を上昇させる)のはどれか,2つ選べ.

A:リファンピシン
B:発熱
C:喫煙
D:カルバマゼピン
E:エリスロマイシン


問題20

次のうち,COPDにおいて気管支拡張効果が最も強く,ファーストチョイスとして使用される治療薬はどれか,1つ選べ.

A:β2刺激薬
B:抗コリン薬
C:抗アレルギー薬
D:吸入ステロイド
E:去痰薬


問題21

ロイコトリエン受容体拮抗薬について,誤った記述を1つ選べ.

A:CysLT1受容体を選択的に拮抗阻害し,抗喘息作用を発揮する.
B:投与後24時間で気管支拡張作用を認めることがある.
C:好酸球に作用し,局所浸潤・増殖を抑制し,気道炎症を抑制する.
D:運動誘発喘息患者に対し,発作の予防に使用が薦められる.
E:ロイコトリエン受容体拮抗薬は,吸入ステロイド薬と同様に喫煙の影響をみる.


問題22

慢性閉塞性肺疾患(COPD)の生活指導について,正しいものはどれか,2つ選べ.

A:COPDの治療において禁煙は必須である.禁煙により,その後の肺機能の低下速度が改善することがわかっている.
B:患者が体に悪いとわかっているのに,喫煙をやめようとしないのは,毎日ニコチンの離脱症状にさらされ,タバコを吸うと離脱症状が改善するという経験を繰り返しているからである.
C:インフルエンザワクチン,肺炎球菌ワクチンともに,ワクチン接種によりCOPD患者の死亡率を低下させる.
D:COPDの運動療法において,最も重要なものは呼吸筋の運動である.
E:体重減少は,COPDの予後を悪くする因子である.カロリーを十分補うことで,COPD患者の予後を改善することができることが判明している.


問題23

COPDにおける呼吸リハビリテーションの効果に関して誤ったものはどれか,1つ選べ.

A:呼吸困難の軽減
B:健康関連QOLの改善
C:非侵襲的換気療法併用による効果の増大(重症例)
D:疾患進行(FEV1経年的減少)の抑制
E:入院回数の減少


問題24

以下で正しいのはどれか,1つ選べ.

A:高度の呼吸困難はHMV開始条件の1つである.
B:NPPV患者で最も多いのが,神経・筋疾患である.
C:睡眠時無呼吸症候群はHMVの適応とならない.
D:PaCO2増加がなければ,HMVの適応とならない.
E:NPPVは患者家族の協力が得られれば可能である.


問題25

治療ガイドラインに合致した治療を行っているにもかかわらず,症状の改善しない治療抵抗性の喘息患者を診た場合,考慮すべき原因あるいは対策のうち,正しいと思われるものはどれか,2つ選べ.

A:治療は正しいので,そのまま根気よく効果が現れるまで待つ.
B:患者本人が治療薬を指示通り使用していない可能性があり,再度本人に確認し必要に応じて再指導を行う.
C:COPDなどの合併症の有無を再検討し,COPDの合併があれば長時間作用型吸入抗コリン薬などの追加を検討する.
D:心臓喘息を喘息と誤診しているので,利尿薬を追加する.
E:治療抵抗性なので,吸入ステロイドを増量して対応する.


問題26

アスピリン喘息について正しいのはどれか,2つ選べ.

A:発作の誘発にはⅠ型アレルギー反応が関与する.
B:解熱鎮痛薬による発作誘発歴がない場合にはアスピリン喘息は否定できる.
C:鼻茸を合併する頻度が高い.
D:発作時には,コハク酸エステル型ステロイド薬の静注が奏効する.
E:吸入ステロイド薬を用いた慢性管理が奏効する.


問題27

妊娠中の喘息管理について,正しいものはどれか,2つ選べ.

A:母体や胎児に影響があるような重症発作のコントロールのためには,妊娠中であっても全身性ステロイドの投与を行うべきである.
B:長期管理薬の第一選択薬は,テオフィリンである.
C:発作時の治療でまず行うのは,短時間作動型吸入β2刺激薬の頓用である.
D:妊婦の重症度は,通常より1ランク重くする.
E:妊婦は,症状の変化が少ない.


問題28

中等症のCOPDに対して,使用すべき第一選択薬の種類はどれか,2つ選べ.

A:テオフィリン
B:抗コリン薬
C:吸入ステロイド薬
D:β2刺激薬
E:マクロライド


問題29

気管支喘息患者の麻酔に使用するのに適さない薬剤を2つ選べ.

A:ハロタン
B:イソフルラン
C:セボフルラン
D:チオペンタール
E:ケタミン


(解答は本誌掲載)