今月の主題 「理解のための32題」 |
問題 1 栄養療法について,正しい組み合わせはどれか?(1)中心静脈栄養(TPN)は,1968年にS.J.Dudrickによって開発された。(2)栄養アセスメントは,1977年にJ.E.Fischerによって体系付けられた。 (3)欧米のNSTは経腸栄養の適正実施のために誕生した。 (4)わが国の栄養管理は経静脈栄養が中心に行われており,この実施に対し平成18年度の診療報酬改正で新たに加算が認められた。 (5)適切な栄養管理を,診療科間の垣根を越えて多職種で実施する集団をNSTという。 A:(1),(2)
問題 2 栄養療法の歴史について,正しい組み合わせはどれか。(1)経静脈栄養法は20世紀から始まった。(2)Dudrickらの研究成果により末梢静脈栄養法が普及した。 (3)経腸栄養は紀元前に行われた記録がある。 (4)アミノ酸輸液や脂質乳剤を開発したWretlindは「経静脈栄養法の父」と称された。 (5)Fisherらは重症肝疾患患者の肝性脳症時には必須アミノ酸が有効であると報告した。 A:(1),(2)
問題 3 高カロリー輸液実施に関連した用語の使い方について,正しい記載はどれか。(1)IVHと言う用語が世界的に用いられている。(2)中心静脈カテーテルを挿入する場合,IVHする,と言う。 (3)鎖骨下穿刺で中心静脈カテーテルを挿入する場合,IVHを入れるという。 (4)高カロリー輸液法はTPNと呼ぶ。 A:(1),(2),(3)
問題 4 わが国のNSTにつき,正しい組み合わせはどれか?(1)2005年12月末現在,日本静脈経腸栄養学会のNST稼動施設数は684施設である。(2)病院機能評価機構「V.5.0」の評価項目のなかに初めてNSTの設置が取り上げられた。 (3)日本栄養療法推進協議会の施設認定基準では,医師,薬剤師,管理栄養士,看護師,臨床検査技師の参加は必須である。 (4)日本栄養療法推進協議会の施設認定基準では,栄養療法および栄養管理に関する成績(データやoutcome)を集積することがもとめられている。 A:(1),(2),(3)
問題 5 栄養療法について,正しい組み合わせはどれか。(1)胃癌や大腸癌などの消化管の術後は,できる限り早期に中心静脈栄養を行うことが望ましい。(2)術後早期の経腸栄養により,bacterial translocationが抑制され,死亡率が有意に減少する。 (3)immunonutritionにより術後の合併症が減少するが,非常に高価であり,医療費の節減効果は期待できない。 (4)経口摂取困難な外傷や熱傷患者では,可能なら36時間以内に経腸栄養を開始すべきである。 A:(1),(2),(3)
問題 6 栄養アセスメントについて,正しい組み合わせはどれか。(1)栄養アセスメントには,SGAとODAがある。(2)SGAとは客観的栄養評価のことである。 (3)主観的包括的栄養評価とは患者自身が行うものである。 (4)身体計測は人体の体格,体脂肪,体蛋白などの構成成分を知ることのできる最も簡便でかつ重要な栄養指標である。 A:(1),(2),(3)
問題 7 栄養管理法について,正しいのはどれか。A:炎症性腸疾患では,絶食で中心静脈栄養を行う。B:脳血管障害の嚥下困難は,経腸栄養の適応である。 C:重症熱傷は経腸栄養の適応外である。 D:消化器癌手術後は中心静脈栄養の適応である。 E:末梢静脈栄養ではカテーテル敗血症の危険性がない。 問題 8 以下の症例の1日総投与量について,正しいものを選べ。症例:80歳・女性。主訴:発熱,咳嗽。 既往歴:2年前に脳梗塞発症。現在は床上での生活。 家族歴:特記すべき事項なし。 現病歴:1週間前より風邪気味で,近医受診,総合感冒薬投与されるが改善なく,今朝より体温38.0℃と上昇し当院受診。 来院時現症:身長150cm,体重45kg,胸部X線上軽度の肺炎と診断。食事摂取はほとんどできてない状態。 (1)基礎エネルギー消費量は966kcal。 (2)activity factor(AF)は1.2で,Stress Factor(SF)は1.0である。 (3)1日必要カロリーは1,352.4kcal。 (4)1日水分量は約1,600ml程度である。 (5)ビタミン・ミネラルは経口が可能となれば補充は不要である。 A:(1),(3),(4)
問題 9 中心静脈栄養について,誤っているものはどれか。(1)トリプルバッグ製剤には微量元素が必要量含まれている。(2)最も安全で長期留置に適した穿刺部位は大腿静脈である。 (3)静脈切開に最も適した血管は鎖骨下静脈である。 (4)PICCは中心静脈栄養法ではない。 A:(1),(2),(3)
問題 10 静脈栄養法について,正しいのはどれか。A:静脈栄養施行期間が3週間以上の場合は末梢静脈栄養を選択する。B:脂質投与は総投与カロリーの80~90%が望ましい。 C:高度侵襲時,非蛋白カロリー(NPC)/N比は300が望ましい。 D:静脈栄養は末梢静脈栄養と中心静脈栄養に分けられ,中心静脈栄養のルートで最も普及しているのは鎖骨下静脈穿刺法である。 E:中心静脈栄養の輸液ラインにインラインフィルターは原則として不要である。 問題 11 経静脈栄養について,誤っているのはどれか。A:末梢静脈栄養において,ビタミン剤の投与は全く考慮する必要がない。B:中心静脈栄養法に必要な栄養素は糖質,脂肪,蛋白質,ビタミン,ミネラル(電解質含む)とされている。 C:わが国ではセレンの市販製剤はなく,セレン補給は一般的には行われていない。 D:脂肪乳剤はエネルギー補給(9kcal/g)として重要である。 問題 12 長期の絶食,TPN管理中の患者である。悪心・嘔吐症状に続き,傾眠,失見当識,昏睡が認められた。血糖値は正常で,バイタルサインは比較的安定していた。調べてみると数日間にわたり総合ビタミン剤の混入が忘れられていた。直ちにすべきことは何か?A:ビタミンBB:速効型インスリン10単位を静注する。 C:50%ブドウ糖20mlを静注する。 D:心電図検査を行う。 E:酸素投与を開始する。 問題 13 経腸栄養剤の選択と衛生管理について,正しい組み合わせを選べ(1)Crohn病には成分栄養剤または消化態栄養剤,肝不全・腎不全時にはアミノレバン(2)半消化態栄養剤には医薬品と食品扱いの製品があるが,どちらも成分上明らかな違いはなく処方箋が必要となる。 (3)栄養剤をチャンバーに入れてから12時間以内に投与終了できれば安全である。 (4)栄養投与チャンバーやルートを繰り返し使用する場合は,「水洗→消毒→乾燥」し衛生的な管理を実施する必要がある。 (5)RTH(ready to hang)バッグ経腸栄養製剤は,クローズドシステムとして清潔,簡便に使用でき有用である。 A:(1),(2)
問題 14 経腸栄養剤の固形化による利点は次のどれか?(1)同じ体位をとる時間が短縮するため褥瘡の予防になる。(2)経腸栄養剤投与後の腹満感がなくなる。 (3)下痢が少なくなり,介護者の負担が減る。 (4)家族の経済的負担が減少する。 (5)胃食道逆流が少なくなり誤嚥性肺炎の予防になると言われている。 A:(1),(2),(3)
問題 15 逆流誤嚥のリスクの高い症例に対する経腸栄養管理について,正しいものはどれか。A:胃内投与の場合,注入時の体位は60度ギャッジアップが良い。B:胃内投与のスピードの上限は,400ml/hrである。 C:固形化・半固形化した栄養剤の注入が有用である。 D:経鼻栄養チューブは胃内留置が望ましい。 問題 16 PEGに関して正しいものはどれか?(1)意識状態が悪く,全身浮腫を伴う完全静脈栄養(TPN)患者にPEG施行した。(2)Pull法にてPEG造設の場合,創部治癒促進のため皮膚切開はできるだけ小さいほうが良い。 (3)Pull/Push法,Introducer法ともにバンパーは造設直後以外でも,できるだけきつく締めたほうが良い (4)造設後の栄養開始は,腹部聴診し蠕動確認後に行う。 A:(1),(2),(3)
問題 17 NSTの院内での立場について,誤っている組み合わせはどれか。(1)NSTにかかわるスタッフはすべて兼任であることが多く,本来の業務が忙しい部署・職種の参加が得られないのは止むを得ない。(2)NSTの稼動施設数は,年々急増している。 (3)NSTの歴史は浅いが,日本病院機能評価機構では,NSTを必須項目として挙げている。 (4)医師は通常忙しいので,NSTはもっぱら薬剤師や栄養士が中心となって活動している。 (5)NSTは,主治医からの依頼を受けて,実際の栄養管理を担当する。 A:(1),(2),(3)
問題 18 正しい組み合わせを選べ。(1)NST症例の選択に当たっては,主治医からのコンサルトを受ける体制が最も望ましい。(2)NSTによって栄養管理コストの上昇が予想される。 (3)わが国のNSTは専任スタッフで配置する施設が多い。 (4)NSTが栄養処方を行う場合,主治医との協議が必要不可欠である。 A:(1),(2),(3)
問題 19 次の中から,NST活動が関与することにより得られると考えられる効果を選択せよ。(1)平均在院日数の短縮(2)医療材料の適正化による削減 (3)再入院患者の増加 (4)新規褥瘡発生率の低下 (5)診療材料費の増加 A:(1),(2),(4)
問題 20 重症感染症,敗血症時の代謝に関して,正しい組み合わせはどれか。(1)重症感染症時には一般的にインスリン抵抗性を示し,高血糖を呈する。しかし骨格筋におけるインスリン依存性のグルコースの取り込みは亢進している。(2)体温が1℃上がるとエネルギー需要は5%上昇するといわれる。 (3)骨格筋の崩壊により,血中に放出された糖原性アミノ酸のアラニンは肝臓で糖新生に利用される。 (4)脂肪乳剤は肝臓のKupffer細胞に捕捉され網内系機能を抑制するという不利益があり,重症感染症,敗血症時の脂肪乳剤の投与は慎重を要する。 (5)芳香族アミノ酸(AAA)を豊富に含む製剤を投与することにより筋蛋白の崩壊を抑制することができる。 A:(1),(2)
問題 21 摂食・嚥下リハビリテーションを実施するうえで,正しい組み合わせはどれか。(1)咽頭残留を除去させる方法を探ることが重要である。(2)ゼラチンゼリーは最も飲みにくい食品である。 (3)摂食姿勢の検討は必要である。 (4)経鼻経管栄養チューブを留置したまま嚥下させても全く違和感はない。 A:(1),(2),(3)
問題 22 COPDに対する栄養療法で,正しい組み合わせはどれか?(1)COPD患者における栄養障害は肺機能の重症度とは独立した予後決定因子である。(2)COPD患者の栄養状態は,呼吸機能,呼吸筋力,免疫能などとの関連はない。 (3)COPD患者に対しては栄養療法と運動療法を併用することが重要である。 (4)COPD患者への脂肪投与量は総投与カロリーの50%以上が推奨されている。 A:(1),(2),(3)
問題 23 肝硬変患者の栄養状態と栄養療法について,正しい組み合わせはどれか。(1)健常者と比べ安静時エネルギー消費量は低下している。(2)Fischer比は病態の進行に伴い増加する。 (3)BCAA療法は,蛋白不耐症の患者のみに有効である。 (4)就寝前の軽食(LES)を組み入れた分割食が有用である。 (5)亜鉛の補充と鉄の制限が重要である。 A:(1),(2)
問題 24 慢性腎不全の栄養療法につき正しいのはどれか。(1)保存期では適度な蛋白・塩分制限,十分な熱量確保をする。(2)透析を始めたら,食事制限は不要となる。 (3)穀類の蛋白は動物性蛋白に比べて同化されやすい。 (4)糖尿病では,腎不全の程度によらず糖尿病食を続ける。 (5)MIA症候群では,炎症などの治療が低栄養改善に必要である。 A:(1),(2)
問題 25 次のうち,誤っている組み合わせはどれか。(1)Crohn病では,protein energy malnutritionや微量栄養素の欠乏を生じる。(2)Crohn病では,成分栄養療法が第一選択の治療法とされている。 (3)栄養療法を行う場合,5‐アミノサリチル酸製剤やステロイド剤などの薬物療法は併用しない。 (4)成分栄養剤には十分量の微量元素が含まれている。 (5)Crohn病の緩解期には,水溶性食物繊維の摂取を制限する必要はない。 A:(1),(2)
問題 26 末期癌患者の栄養療法について,正しい組み合わせはどれか。(1)悪液質に陥っても最期まで高カロリー輸液を実施しなければならない。(2)できるだけ経口栄養で行い,輸液はあくまでも補助的手段である。 (3)医原性栄養障害の場合,適切な栄養管理を実施しても日常生活活動性(ADL)や生活の質(QOL)の回復は望めない。 (4)その医療行為が本当に患者・家族のためになっているか,その功罪を常に見極めることが大切である。 A:(1),(2),(3)
問題 27 食道癌術後の栄養管理について誤った組み合わせはどれか。(1)TPNにより1病日からREEの1.5倍のエネルギー量を投与する。(2)経腸栄養は5~7病日以降から徐々に開始する。 (3)TPNにより感染性合併症は低下する。 (4)経腸栄養のfull strengthは15~20kcal/kgと低めに設定する。 A:(1),(2),(3)
問題 28 肝胆膵手術の周術期管理にて間違っているのはどれか。(1)一般的に肝切除術は早期に経口摂取が可能である。(2)糖尿病合併例はカロリー制限を主体とした管理をする。 (3)尾側膵切除術では,消化管再建があり,早期経口摂取が困難なため,栄養障害が問題となることが多い。 (4)分岐鎖アミノ酸(BCAA)製剤は筋蛋白の崩壊の抑制による蛋白代謝を改善する。 (5)腸管免疫の観点から,術後早期に経腸栄養もしくは経口摂取を開始する。 A:(1),(2)
問題 29 大腸癌の周術期栄養管理で,正しいものはどれか。(1)大腸癌の術前は低栄養状態の症例が多い。(2)術後早期より十分な糖質補給が必要である。 (3)たいていの場合は中心静脈栄養が必要である。 (4)大腸癌の手術侵襲は一般的に中程度である。 (5)Harris‐Benedictの式などから必要エネルギー量を決定する。 A:(1),(2)
問題 30 小児の経腸栄養について,正しい組み合わせはどれか(1)乳児の推定エネルギー量は,総エネルギー消費量とエネルギー蓄積量から求める。(2)人工乳の蛋白質利用効率は,母乳の蛋白質利用効率より低い。 (3)人工乳は,乳児にとって理想的な栄養源である。 (4)non‐protein kcal/Nが150以下で,小児の蛋白代謝が効率よく行われる。 (5)完全静脈栄養時のエネルギー必要量は,経口栄養時と同じエネルギー量を投与する必要がある。 A:(1),(2)
問題 31 在宅静脈栄養法について,正しい組み合わせはどれか。(1)中心静脈カテーテルを使用する。(2)カテーテル敗血症の予防のたに,医師または看護師が定期的に家庭を訪問する。 (3)輸注法は連続投与より間歇投与のほうが患者の生活の質が改善する。 (4)治療上必要な注射薬は,できるだけ輸液製剤に混注して持続投与する。 (5)脳血管障害などで摂食障害がある場合は,早期退院のために実施する。 A:(1),(2),(3)
問題 32 在宅経腸栄養について,誤っている組み合わせはどれか。(1)経鼻栄養管理は長期間の栄養管理に有用である。(2)経皮内視鏡的胃瘻造設(PEG)は,全身麻酔が必要な手術である。 (3)経腸栄養により下痢・腹満が出現したら経腸栄養を中止する。 (4)在宅成分栄養経管栄養法指導管理料は,経鼻栄養で流動食を注入した場合に算定できる。 A:(1),(2),(3)
(解答は本誌掲載)
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