今月の主題 「理解のための34題」 |
問題 1 次の各項目の文章で,正しい組み合わせはどれか。(1)昨今の耐性菌の氾濫は「環境汚染」の一つと捉えるべきである。(2)「抗菌薬を選択する」とは,その種類,用量,投与ルート,投与期間を決めることまで含む。 (3)耐性菌産生対策は看護師の,伝播対策は臨床医の努力に負うところが大きい。 (4)抗菌薬療法においては,できるだけ広域スペクトル抗菌薬を選択するように努める。 (5)細菌感染症の診断とは,感染病巣,起炎菌,患者の感染防御能の評価,重症度の評価を含む。 A:(1),(2),(3)
問題 2 発熱患者の評価と治療について,正しい組み合わせはどれか。(1)重症市中肺炎のために入院している患者が,抗菌薬投与開始後3日目に解熱していなければ,治療は無効と判断して抗菌薬を変更すべきである。(2)急性腎盂腎炎の患者が,抗菌薬投与開始後2~3日経過しても解熱しない場合は,起因菌の感受性を確認するとともに,腎実質膿瘍,腎周囲膿瘍などの合併症の存在や,尿路の通過障害などの問題が存在している可能性を検討すべきである。 (3)中心静脈カテーテル挿入中の患者がCandida albicansによる菌血症をきたした場合は,抗真菌薬の投与とともに中心静脈カテーテルの抜去が必要である。 (4)発熱,咳嗽を主訴に来院した外来患者の痰が黄色で膿性ならば抗菌薬投与の適応となる。 (5)薬剤熱では39°Cを超えるような高熱は認められない。 A:(1),(2)
問題 3 グラム染色でグラム陰性双球菌が観察された場合,推定される細菌はどれか。(1)モラクセラ・カタラーリス(2)髄膜炎菌 (3)肺炎球菌 (4)クレブシエラ・ニューモニエ (5)淋菌 A:(1),(2),(3)
問題 4 細菌検査報告書で感染症起炎菌の可能性が高い場合はどれか。A:多数の扁平上皮が確認された喀痰から黄色ブドウ球菌が検出された。B:Geckler 5群の喀痰から肺炎球菌が検出された。 C:室温で4時間保存していた尿から1ml中に105個の大腸菌が検出された。 D:下痢便から緑膿菌が検出された。 E:開放性膿から表皮ブドウ球菌が検出された。 問題 5 血液培養検査について,正しい組み合わせはどれか。(1)表皮ブドウ球菌は最も頻度が高い汚染菌である。(2)血液培養のための血液検体は検査まで冷蔵する。 (3)小児の血液培養時にはボトル当たり10mlを採取する。 (4)血液培養ボトルには抗菌薬の吸着剤入りの製品がある。 (5)汚染菌の鑑別には異なる部位での複数回の穿刺採血による検査が有用である。 A:(1),(2),(3)
問題 6 下記の起炎微生物の迅速検査に用いる検体が尿であるのはどれか。(1)インフルエンザウイルス(2)ロタウイルス (3)カンジダ (4)レジオネラ (5)ヘリコバクター・ピロリ A:(1),(2)
問題 7 TDMの対象となる抗菌薬の体内動態と抗菌作用あるいは副作用について,正しい組み合わせはどれか。(1)硫酸アミカシンを有効,安全に投与するためには,そのピーク血中濃度を高める一方,トラフ血中濃度(次回投与直前の血中濃度)はできるだけ下げる必要がある。(2)硫酸アルベカシンは,起炎菌との接触時間依存的に殺菌作用を発揮するため,ピーク血中濃度を高めるよりも,トラフ血中濃度がMIC以上を保つよう投与する必要がある。 (3)硫酸ゲンタマイシンはpost-antibiotic effect (PAE)をもつため,菌周辺の濃度が0になった後も数時間程度は殺菌作用が持続する。このため,トラフ血中濃度を必ずしもMIC以上に保たなくてもよく,腎毒性の発現を回避する意味からもむしろできるだけ下げることを旨とすべきである。 (4)塩酸バンコマイシンの抗菌力を期待するには,そのトラフ血中濃度をなるべく10μg/ml以下に設定する必要がある。 A:(1),(2)
問題 8 抗菌薬の選択・投与方法で正しいのはどれか。(1)市中肺炎で一番頻度の高い原因微生物であるブドウ球菌を標的とする。(2)髄膜炎では髄液移行性の良い抗菌薬を選択する。 (3)血行動態が不安定なショック状態では注射薬が望ましい。 (4)抗菌薬の併用療法は常に抗菌効果を増強させる。 (5)セフェム系の抗菌薬は半減期に関係なく1日2回投与で十分の抗菌効果が得られる。 A:(1),(2)
問題 9 抗菌薬治療の効果判定で用いる項目のうち最も重要なものを2つ選びなさい。(1)主訴(2)感染臓器にかかわる徴候 (3)体温 (4)白血球数とCRP (5)画像所見 A:(1),(2)
問題 10 成人市中肺炎の治療効果判定の指標と基準のうち正しいものはどれか(1)解熱(目安;37°C以下)(2)白血球増加の改善(目安;正常化) (3)CRPの改善(目安:最高値の30%以下へ低下) (4)胸部X線陰影の明らかな改善 A:(1),(2),(3)
問題 11 予防的抗菌薬投与で正しいものはどれか。(1)抗菌薬は外科処置後に投与を開始する。(2)手術が長時間になっても追加投与は必要ない。 (3)手術部位にMRSAが検出されている場合は,バンコマイシンの予防投与の適応となる。 (4)セファゾリン(CEZ)はバクテロイデスに有効ではない。 (5)ムピロシンの鼻腔塗布は手術部位感染予防効果が高く,全例投与が原則である。 A:(1),(2)
問題 12 次のうち正しいものはどれか。A:時間依存性であるβラクタム系抗菌薬のほとんどは1日1回投与で十分である。B:ニューキノロン系は時間依存性が高いので,1回の投与量をできるだけ少なくして,1日3回投与とする。 C:アミノグリコシド系はpeak/MICが殺菌作用に関連するので,1回投与量をできるだけ減らす。 D:高齢者で腎機能障害もあるので,投与間隔を延ばすものか,減量するものかを判断して,投与する。 問題 13 耐性菌感染症の治療について,正しい組み合わせはどれか。(1)MRSAにはカルバペネム系抗菌薬を使用する。(2)PRSPには第三世代セフェム系抗菌薬を使用する。 (3)ESBL産生E.coliにはセファマイシン系抗菌薬を使用する。 (4)VREにはカルバペネム系抗菌薬を使用する。 (5)MDRPにはカルバペネム系抗菌薬を使用する。 A:(1),(2)
問題 14 ペニシリン系薬の有効性について正しいものはどれか。(1)溶血連鎖球菌はペニシリンに感受性がある。(2)ペニシリン系薬とアミノグリコシド系抗菌薬の併用は緑膿菌に対して相乗作用となる。 (3)βラクタマーゼ阻害薬とペニシリン系薬との配合剤はMRSAには無効である。 (4)ペニシリンG®は淋菌の第一選択薬である。 A:(1),(2),(3)
問題 15 以下のセフェム系薬で抗緑膿菌作用を有する2剤はどれか。(1)セファゾリン(CEZ)(2)セフォチアム(CTM) (3)セフトリアキソン(CTRX) (4)セフタジジム(CAZ) (5)セフォゾプラン(CZOP) A:(1),(2)
問題 16 カルバペネム系が通常無効な病原微生物はどれか。(1)レジオネラ(2)マイコプラズマ (3)MRSA (4)クラミジア (5)Clostridium difficile A:(1),(2),(3)
問題 17 モノバクタム系薬について正しい組み合わせはどれか。(1)グラム陽性球菌に有効である。(2)他のβラクタム系薬にアレルギーのある患者への投与は禁忌である。 (3)post antibiotic effectを期待して1日1回大量投与が望ましい。 (4)発熱患者に対するエンピリック治療としての単独投与は避けるべきである。 A:(1),(2),(3)
問題 18 アミノグリコシド系抗菌薬について,次のうち正しいのはどれか。(1)グラム陰性桿菌に対しては,静菌的に作用する。(2)アレルギー性の副作用は少ない。 (3)PAE(post antibiotic effect)がみられる。 (4)グラム陽性球菌にはすべて無効である。 (5)耐性菌の出現頻度は他の抗菌薬に比して高率である。 A:(1),(2)
問題 19 マクロライド系,ケトライド系薬剤について正しい組み合わせはどれか。(1)マクロライド系薬はマイコプラズマやクラミジアのような非定型病原体に抗菌力を有する。(2)ケトライド系薬はレジオネラ菌に適応がある。 (3)マクロライド系薬は主として腎臓で代謝される。 (4)本邦において,肺炎球菌のマクロライド耐性はいまだ軽度である。 (5)マクロライド系薬とエルゴタミン含有製剤との併用は禁忌である。 A:(1),(2),(3)
問題 20 テトラサイクリン(TC)系抗菌薬の単独投与が有効と考えられる疾患はどれか。(1)緑膿菌肺炎(2)カリニ肺炎 (3)リステリア髄膜炎 (4)日本紅斑熱 A:(1),(2),(3)
問題 21 クリンダマイシンについて正しい組み合わせはどれか。(1)腸球菌に有効(2)マイコプラズマに有効 (3)大腸菌に有効 (4)嫌気性菌に有効 A:(1),(2),(3)
問題 22 バンコマイシンの適切な使用はどれか。(1)定着しているMRSAの除菌(2)MRSA感染率が高い施設で人工骨頭置換術の予防投与 (3)消化管の選択的な除菌 (4)βラクタム薬耐性グラム陽性菌による重症感染症 A:(1),(2),(3)
問題 23 メトロニダゾールについて正しい組み合わせはどれか。(1)メトロニダゾールは,嫌気性菌感染症,偽膜性腸炎,ヘリコバクター・ピロリ感染症,トリコモナス腟炎,細菌性腟炎,ランブル鞭毛虫症,アメーバ赤痢,アメーバ性肝膿瘍の治療に有効である。(2)本邦では,トリコモナス腟炎のみが保険適用である。 (3)メトロニダゾール内服中は,煙草,酒の制限は特にしなくてよい。 (4)メトロニダゾールは中枢神経系への移行が乏しい。 (5)メトロニダゾールは,バクテロイデス属に対して優れた抗菌活性を有する。 A:(1),(2),(3)
問題 24 ST合剤が第一選択の抗菌薬になることが一般的な感染症は次のうちどれか。(1)緑膿菌感染症(2)ニューモシスチス肺炎 (3)ノカルジア感染症 (4)Aeromonas感染症 (5)腸球菌感染症 A:(1),(2),(3)
問題 25 キノロン薬について,正しいものを選べ。(1)白血球への細胞移行効率は低い。(2)投与回数を多くすると,臨床効果も高くなる。 (3)副作用は少ない薬剤である。 (4)肺炎球菌の耐性株が確認されている。 A:(1),(2),(3)
問題 26 肺炎診療について正しいものを1つ選べ。A:新しい市中肺炎診療のガイドラインでは重症度判定においてCRPは含まれない。
問題 27 胆管炎について,正しい組み合わせはどれか。(1)総胆管結石に合併することが多い。(2)重症の胆管炎で,DICを合併している症例では,内視鏡によるドレナージ術は禁忌である。 (3)原因菌としてはグラム陰性桿菌がほとんどであり,腸球菌が原因であることはきわめて稀なので,抗菌薬はグラム陰性桿菌をカバーできていればよい。 (4)細菌性肝膿瘍の原因となりうる。 (5)胆道系の術後の患者では,嫌気性菌もカバーすべきである。 A:(1),(2),(3)
問題 28 急性非複雑性腎盂腎炎について正しい組み合わせはどれか。(1) 排尿時痛,頻尿などの下部尿路感染症状を伴う。(2)多臓器不全を伴うような重症例は若い女性で多い。 (3)治療開始前の尿グラム染色でグラム陽性菌がみえたらニューキノロンを投与する。 (4)菌血症がある場合でも治療期間を延長する必要はない。 (5)治療終了後二週間以内に再発する場合は,異なる抗菌薬で治療する。 A:(1),(2)
問題 29 血管内カテーテル感染について正しい組み合わせはどれか。(1)血液培養でブドウ球菌を検出した場合,ペニシリンで治療する。(2)血液培養でブドウ球菌を検出した場合の 治療期間は7日間である。 (3)点滴治療開始後3日間たっても改善しない場合は,転移性感染症を疑う。 (4)化膿性脊椎炎を合併した場合の治療期間は6~8週間必要である。 (5)血管内カテーテル感染を疑った場合の血液培養は1セットで十分である。 A:(1),(2)
問題 30 既往歴のない65歳男性が救急車で運ばれた。市中の細菌性髄膜炎が鑑別診断として考えられたが,どの抗菌薬を「初期治療 presumptive therapy or empirical therapy」として投与するのが適切か。あてはまるものをすべて選べ。ただし,その地域の肺炎球菌のペニシリン耐性は,intermediate(PISP)とresistant(PRSP)を合わせて60%程度とする。また,患者の腎機能は正常とする。患者は薬剤アレルギーはない。A:メロペネム 500mg 静注8時間ごとB:アンピシリン 2g 静注 4~6時間ごと C:バンコマイシン 1g 静注12時間ごと D:ST 合剤(15mg/kg/日)を静注で6時間ごとに分配して投与 E:シプロフロキサシン300mg 静注12時間ごと F:セフトリアキソン2g 静注12時間ごと G:アミカシン200mg 静注12時間ごと H:クリンダマイシン600mg 静注8時間ごと I:エリスロマイシン500mg 静注6時間ごと J:ペニシリン G® 2,400万単位/日 静注で4時間ごとに分配して投与 問題 31 性感染症について正しい記載はどれか。(1)淋菌感染症と診断した場合,クラミジア感染の合併を念頭におき,抗菌薬の選択を行う。(2)自覚症状がなければ性感染症の抗菌治療は必要ない。 (3)性感染症では男性に比べ,女性のほうが症状は出やすい。 (4)淋菌感染症ではキノロン耐性など薬剤耐性が問題になっている。 (5)クラミジアや淋菌感染症患者では咽頭感染を認めることがある。 A:(1),(2),(3)
問題 32 発熱性好中球減少症(fibril neutropenia:FN)について正しい組み合わせはどれか。(1)FNでは肺炎を起こすことが最も多い。(2)FNに対するG-CSFの投与は予後を改善する。 (3)FNに対してカルバペネム系薬を投与している場合,解熱後は直ちに中止する。 (4)FNに対して抗菌薬が無効の場合は真菌感染も疑われる。 A:(1),(2),(3)
問題 33 手術部位感染予防について,正しい組み合わせはどれか。(1)乳腺手術では予防抗菌薬投与により,非投与と比較し手術部位感染は有意に低率となるため,予防抗菌薬の使用は必須である。(2)下部消化管手術では嫌気性菌も抗菌範囲に含む第二世代セフェム薬が適応となる。 (3)予防抗菌薬は術直後に使用する。 (4)長時間手術では抗菌薬を術中再投与が必要となる。 (5)予防抗菌薬は米国では24時間以上使用することは勧められていない。 A:(1),(2),(3)
問題 34 結核の標準療法について,正しい組み合わせはどれか。(1)必ずイソニアジドとリファンピシンを含む多剤併用療法で行う。(2)症例ごとに治療期間を変える。 (3)副作用の少ない3剤併用で開始するレジメンを出来るだけ選択する。 (4)経口剤であるエタンブトールより注射剤であるストレプトマイシンを使用するほうがよい。 (5)妊婦にはピラジナミドやストレプトマイシンは使用禁忌である。 A:(1),(2)
(解答は本誌掲載)
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