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●医療事故を防ぐ! 対策を絵に描いた餅としないために

第9回テーマ

中心静脈カテーテル挿入

本村和久(王子生協病院・内科)


 今回は中心静脈カテーテル挿入について述べたい。筆者自身が研修医のときに,この手技で大きなトラブル(頸動脈穿刺→出血→上気道閉塞)を起こしたことがある。私だけでなく,同僚,研修医が,同じ間違いを繰り返さないためには,どうしたらよいのか,医療安全を考える大きなきっかけとなった。実際に病院内でマニュアル作成を行うことにもなった1)。私がトラブルを起こした当時は,まだ医療安全に注目した日本語で書かれたマニュアルは多くなかったように思えた(海外の文献を取り寄せて学習した)が,いまは,文献に挙げるように,中心静脈カテーテル挿入に関する優れたマニュアル,文書が,インターネット上で簡単に手に入る。また,視覚に訴えたわかりやすい教材もある。紙面は限られており,詳細は,ぜひそれらを参照していただきたい2-4)

私の間違い

 私の個人的な経験から述べたい。高齢,人工透析中の女性,私が病棟主治医だった。虚血性腸炎の精査加療入院,大腸内視鏡後の大腸穿孔で,禁食,中心静脈栄養開始,発熱でカテーテル感染が疑われ,一度は抜去となったが,経口摂取できず,内頸静脈への再挿入でのことだった。指導医の介助のもと,エコーを使用しながらも,頸動脈を誤って穿刺してしまった。きちんとエコーをみて,針先を確認できていなかったのが原因だった。圧迫止血したつもりで,内頸静脈へのカテーテル確保はできたのだが,頸動脈穿刺→出血→上気道閉塞の状態となり,緊急気管内挿管,一命はとりとめ,一旦病状は回復傾向にあったが,敗血症を合併,死亡された。

間違いから学ぶこと

 このことをきっかけに院内でカンファレンスを開くことになった。医療安全の立場からの要点は,以下の3点である。
1) エコー下での穿刺
2) 広く無菌シーツを広げる
3) セルジンガー法

(つづきは本誌をご覧ください)


本村和久
1997年,山口大学医学部卒,同年,沖縄県立中部病院プライマリ・ケア医コース研修医。離島診療所である伊平屋診療所勤務,沖縄県立中部病院勤務(総合内科,救急,離島医療支援)を経て,現職。研修医のときに自ら起こした医療事故をきっかけに医療安全対策に関わる。