●医療事故を防ぐ! 対策を絵に描いた餅としないために | ||
第1回テーマ
誰が見てもわかる指示書きを目指して
本村和久(沖縄県立中部病院地域救命救急センター)
研修現場と医療事故
新医師臨床研修が始まって,もうすぐ2年である。未熟な研修医ゆえ(そうでなくても事故はいつでも起こりえるが)の間違い,失敗はある。私自身,多くの間違い,失敗を経験しながら,学んできた。
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≪看護師から指摘された問題点について≫ 1) 処方箋の文字が読みとれない。 2) 臨時紙処方箋などにサイン漏れがある。 3) 内服薬,静注薬の用量,単位(mg,mlなど)が漏れている,略語がある。 4) 途中開始の薬剤が次回の定期処方から漏れる。 5) 錠剤か粉末か,剤形が明記されない。 6) 処方箋が重複して出される。 7) 処方入力されているが,指示表に記入がない,または内容が入力のものと違う。 8) 口頭指示後の指示記載がない。 9) 指示整理がなされていない。 10) 追加指示が前ページに書かれている。 11) 医師のサインが不明瞭。 |
≪一般的な注意≫ 1) 診療録開示,監査にたえうるものである必要がある。 2) 医療従事者の誰もが理解可能でなければならない。 3) サイン(署名)は忘れずに,またあとで問い合わせできるよう,楷書で,PHS番号も記載する。 4) 処方箋は,指示と同時にオーダーする。 5) 口頭指示は原則として禁止,やむを得ず,口頭指示を看護師が受ける場合は,指示を行った医師,受けた看護師,指示受けの時間を記載する必要がある。医師は速やかに指示を記載する。 6) 指示棒は至急(看護師に口頭でも伝えること)が赤,普通が黄色である。 7) 記載指示の訂正は,二重線で消すこと(訂正前の指示が見えるように) 8) 記載指示を変更する場合は,<生理食塩水に変更>のように明記すること。 9) 原則として,新しい見開きになったら指示を整理する。 10) 患者名を記載,またはインプリンターを押す。マニュアルをいくら作っても読んでもらえないことには,始まらない。 |
誰もが使いやすい形を考え,今後も改訂を繰り返す予定である。
参考文献
1)Volpp KGM, Grande D:Residents' suggestions for reducing errors in teaching hospitals. N Engl J Med 348(9):851-855, 2003
2)Bates DW, et al:Effect of computerized physician order entry and a team intervention on prevention of serious medication errors. JAMA 280(15):1311-1316, 1998
本村和久
1997年,山口大学医学部卒,同年,沖縄県立中部病院プライマリ・ケア医コース研修医。沖縄の離島診療所である伊平屋診療所勤務,沖縄県立中部病院内科後期研修医を経て,2003年より沖縄県立中部病院勤務(総合内科,救急,離島医療支援)。研修医のときに自ら起こした医療事故をきっかけに医療安全対策に関わっている。