HOME雑 誌medicina誌面サンプル 44巻10号(2007年10月号) > 連載●外来研修医教育への招待
●外来研修医教育への招待

第10回

研修医の外来診療はマイナスばかり??

山本 亮(佐久総合病院 総合診療科)
川尻宏昭(名古屋大学医学部附属病院 在宅管理医療部 地域医療センター)


 これまでの数回ではケースを挙げながら,「緊急度」,「見逃してはいけない」,「頻度」という軸を使い,さらにフォローアップという「時間軸」も利用して外来教育を行っていく方法について述べてきました.ここまで読み進めていくと,「研修医が外来診療を行うことは大変だなあ」,「患者さんにとって時間もかかるしあんまりよくなさそうだなあ」と思われている方も多いかもしれません.本当に,研修医が外来診療を行うことはマイナスばかりなのでしょうか? 今回は,研修医が診察することでよかったケースについて,少し考えてみたいと思います.


■ケース

30代,男性
予診用紙の主訴:おなかが痛い.

 カルテは分厚く,中を見てみると,過敏性腸症候群にて心療内科定期通院中.このところ頻回に救急外来を受診している.昨日の夜も午前1時ごろに,救急外来に腹痛を主訴に来院し,整腸剤が処方されている.

研修医:(これまでも何度も同じ主訴で受診しているし,今回もおなじような腹痛なのかな?)先生,この患者さん診察しても良いですか? 昨日の夜も同じ訴えで救急外来を受診されていますし,これまでも同じ主訴で来院されています.
指導医:30代にしては分厚いカルテですねえ.過敏性腸症候群で心療内科に通院している方だね.今回も腹痛で受診ですか.まあ,いつもの痛みなんだろうね.このごろ受診が頻回になっているみたいだから,何か生活状況に変化があったかどうかは,注意して話を聞いてみてください.まあ,いろいろとあるようなら,心療内科に行ってもらうようにしましょう.ね,先生.ほら,特に,今日は外来混んでいるから,あんまり時間をかけないようにね.
(診察室へ)
研修医:Bさん,こんにちは.今日担当させていただきます,研修医のAです.よろしくお願いいたします.今日はどうされましたか?
患者:おなかが痛くって.
研修医:Bさんは,ときどきおなかが痛くなるみたいですが,いつもと同じような痛みですか?
患者:いえ,昨日の昼ごろからおなかがずっと痛くって,いつものしくしくするような痛みとは違うように思います.いつもと違う痛みなんで,昨日の夜も受診しまして,みてもらったんですが…….「いつもと同じ腹痛で,心配ない」と言われました.でも,そのあともよくなりませんし,ちょっと違うんです.
研修医:そうですか…….いつもと違う感じなんですか…….(困ったな…….そう言われてもな……)で,どこが痛むんですかね?

(つづきは本誌をご覧ください)


山本 亮
1996年筑波大学医学専門学群卒.同年佐久総合病院初期研修医.初期研修終了後2年間の一般内科研修後,無床の国保診療所にて3年間勤務.昨年度聖隷三方原病院にて緩和ケア研修を行い,現在,佐久総合病院総合診療科医長として診療と研修医教育に関わりながら,緩和ケアチーム,末期がん患者の在宅訪問診療も行っている.

川尻宏昭
1994年徳島大学医学部卒.同年,佐久総合病院初期研修医.2年間のスーパーローテーションおよび2年間の内科研修の後,病院附属の診療所(有床)にて2年間勤務.2001年10月より半年間,名古屋大学総合診療部にて院外研修.その後,佐久総合病院総合診療科医長として,診療と研修医教育に従事.2006年12月より現職.