Editorial

アイディアと価値は
“組み合わせ”から生まれる!

身体所見とPOCUS、コラボレーションの時代へ
亀田 徹
安曇野赤十字病院救急科

 何もないところから、いきなりよいアイディアが思い浮かぶことはないといわれています。新しいアイディアは、既存の概念、知識に基づいているはずですし、“組み合わせ”から生まれる場合が多いものです。

 さて、身体所見は、医学の歴史とともにあります。一方で、超音波検査が臨床に本格的に導入されてから、半世紀近くが経過します。身体所見、超音波検査ともに歴史があり、独自に発展していった部分は大きいでしょう(もちろんこの半世紀のなかでは、身体所見の確かさ、そして超音波検査所見の意義を確かめるために、身体所見は超音波検査の力を、超音波検査は身体所見の力を、それぞれ借りることはあったはずです)。

 これまで超音波は、「超音波検査」とあるように、「検査」としての意味合いが強かったのは事実で、これからも「超音波検査」として、検査室でスクリーニングや精査が、専門家の手によって引き続き行われます。

 また、ベッドサイドエコーも超音波検査の一つですが、「ちょいあて」「聴診器代わり」と呼ばれているように、検査室での超音波検査とは別の見方がされています。とはいえ、身体所見は「診察」として、ベッドサイドエコーは「検査」として、分けて考えられる場合が多いのではないでしょうか。

 そして近年、超音波装置は小型化し、ポケットサイズのエコーも広く普及し、聴診器のように、一人ずつの医師の手に届く価格になるのは、そう遠くはないと言われています。またPoint-of-Care超音波(point of care ultrasound ; POCUS)というコンセプトの普及がすすみ、超音波は「検査の一つ」とは別に、「診察の一部」として意識されるようになってきました。

 つまり、今後の診察は、「病歴+身体所見+POCUS」いうスタイルが一般的になってくるでしょう!

 ということは、一人の医師が、身体診察に続きPOCUSを行うことになりますので、これからは「身体所見」と「POCUS」を組み合わせる意義について、さまざまな観点から検討が行われるようになるでしょう。

 本特集では、各領域の第一線でご活躍の先生方にご執筆いただいた素晴らしいお原稿から、そのヒントをたくさん読み取ることができます。

 さあ皆さん、身体所見とPOCUSという“組み合わせ”から、よりよいアイディアを想起し、新たな価値を創造してゆきましょう!

 身体所見とPOCUSのコラボレーション、これからの未来が大変楽しみであります。