Editorial

「病院総合医」と「家庭医」の規範的統合
藤沼康樹
医療福祉生協連 家庭医療学開発センター

①診断未確定だが、入院が必要な患者
 在宅療養中の患者が発熱して、バイタルサインに問題がある。何らかの原因の「菌血症」ではないか。あるいは、状況からは「誤嚥性肺炎」も「尿路感染症」もありうるといった場合に、入院を相談する電話を病院にかけたとしよう。
「わかりました。何科のドクターにおつなぎしましょうか?」
「え~と、内科で……」
「どの内科でしょう?」
といった電話口でのやりとりは日常茶飯事であったが、強力な総合診療科と連携するようになって話が早くなった。なぜなら、このような患者の問題が地域で生じやすいことを、病院総合医はよく知っているからである。

②診断はついているが、経過が非定型的な場合
 たとえば、「市中肺炎」と診断して外来で治療を開始したものの発熱が長引き、このまま治療継続したほうがいいのか、あるいは入院させて経過観察したほうがいいのか、判断が難しい場合である。病院に入院の相談で電話をかけると、
「すいません。肺炎球菌性肺炎で、外来で抗菌薬を使用して経過みてたんですけど、熱が下がらず本人が不安がっているもので、入院をお願いしたいんですけど」
「ああ、菌も確定しているし、抗菌薬を◯◯に変更して、もう少し経過みてください」
「えっと、本人が不安がっているんですけど」
「変更して数日経過みてダメなら、もう一度電話ください」
といったやりとりもよくあった。しかし、強力な総合診療科があると話が早い。なぜなら、入院の理由は医学的な適応だけでないことと、診療所でこういう患者を抱えることの困難性をよく知っているからである。

 あげれば枚挙にいとまがないが、家庭医と病院総合医の有機的な連携が可能なのは、トレーニング過程で共通項が多く、価値観や患者観が共有できていることに影響されており、総合診療がインクルーシブ(包括的)な専門医療であることについての「規範的統合」ができるていることに基づいている。

 家庭医は、病院総合医にお願いするばかりではない。たとえば①②のケースでは、診断未確定で入院依頼するにしても、血液培養や喀痰培養を実施しておくことは入院医療のサポートにつながる。むろん、不必要な入院を防ぐのは、家庭医の役割である。そして、病院での治療途中でやむなく退院し「在宅医療」に移行する場合、病院総合医は家庭医のチームにその後を安心して委ねることができるだろう。

 「家庭医」と「病院総合医」が“同じトレーニングプロセス”を共有していることが、地域包括ケア時代の真の病診連携につながるのである。