巻頭言

[特集] 多様化する病院経営

 医療提供体制の改革が,2013年に提出・採択可決された「社会保障制度改革国民会議報告書」と「社会保障プログラム法案」に基づき,2025年に向けて粛々と進んでいる.2014年の医療保険診療報酬改定では,「地域包括ケアシステムの構築」が医療保険の中にも取り入られ,改めて,「病院完結型の医療」から「地域完結型の医療」を目指すことが求められている.

 病院経営者は,自院の機能の見直しと地域におけるポジショニングを行わなければならない.この病院経営については,今まで病院単体の単位で議論されることがほとんどであったが,一方で個々の病院を経営する母体の医療機関を見ると,病院単体の運営を行っている医療機関が少なくなり,複数の病院,診療所や施設,もしくは,訪問看護・介護ステーション,通所サービスといった介護サービスの提供など,複数の事業体を運営している医療機関が多数を占めるようになった.

 様々な形態の医療機関が混在する中,医療機関の機能分化・強化と連携を目指す改革法案では,初めて「ホールディングカンパニー」の考え方が提案された.そして2014年6月24日,「『日本再興戦略』改訂2014」として閣議決定し,この中で「複数の医療法人や社会福祉法人等を,社員総会等を通じて統括し,一体的に経営することを可能に」する「非営利ホールディングカンパニー型法人制度」(仮称)の創設を2015年中に措置することを目指すことが盛り込まれた.

 本誌では,1992年に「保健・医療・福祉複合体」の特集を組んでから,随時,病院経営形態の変遷についても取り上げてきたが,この特集で改めて「保健・医療・福祉複合体」から「ホールディングカンパニー」まで多様化する病院経営について議論していただく.

 総論に続き,真野氏にはマネジメントの視点から多様化する病院経営形態について,話題の「非営利ホールディングカンパニー型法人制度」については,議論の当事者である武田氏と松原氏にそれぞれの考えを論じてもらった.また,2004年以降行われている公立病院改革の中で公立病院の経営については,伊関氏に紹介してもらった.病院経営の現場から,現在の状況及び考え方について,近森氏,大道氏,猪口氏の3名に病院経営に携わる立場で書いてもらった.最後に,医療法人の附帯業務の改定において海外展開が可能になったことを踏まえて,伊藤氏に取り組みを紹介してもらった.議論の一助になれば幸いである.

今村 英仁
公益財団法人慈愛会 理事長