HOME雑 誌病院 > 2013年7月号(72巻7号)巻頭言

病院 2013年7月号(72巻7号)巻頭言

特集
病院の経営統合

猪口 雄二(医療法人財団寿康会 理事長)


 近年,中小規模を中心に病院数は減り続けており,その原因として,廃止,診療所化,倒産などが挙げられる.一方では,吸収,合併などの経営統合による病院のグループ化が広がっている.

 病院のM&A(合併,買収)というと,経営の行き詰まり,継承者不在,そして悪徳ブローカーの存在など,負のイメージが強い.しかし,様々な方法で経営を統合しグループ化することは,資金調達力の強化,経営の効率化,人材の育成と供給など,多くの利点も存在する.今後さらに厳しくなると予想される病院の経営を考えると,経営統合の推進は避けられない道ではないだろうか.

 今回,「病院の経営統合」について,様々な視点から特集を組んだ.経済学におけるM&Aと医療,病院再生と統合,公立・公的病院の統廃合,海外における医療事業体のM&A,事例紹介,などである.いずれも,中小を中心とした病院の経営統合を前向きに捉えており,戦略の重要性が示されている.

 そのような中,すでに依頼した執筆も終わったと考えられる2013年5月,「病院再編に向けた新型法人」について政府が規制緩和の検討に入った,という新聞報道がなされた.国としてこのようなことを推し進めるのか,と驚きを持って読んだところである.今後も超高齢社会の進展で,医療・介護の費用は増え続けるであろう.それに対し,医療提供体制の効率化を図ることは,費用増に対する抑制効果が期待できるという側面も考えられる.

 しかしながら,どのような形態の経営統合であっても,そこに「自らの理念」を構築するとともに,それが地域の住民や利用者に理解されなければならない.単に資金的経営面だけでM&Aを推進することは,あってはならないことである.

 今回の特集「病院の経営統合」が,今後の病院医療の質の向上において,少しでも役に立てば幸いである.また,執筆いただいた皆様に深謝申し上げたい.