医学界新聞

寄稿

2018.11.12



【視点】

医学部留学報告会2018を企画して

上原 悠治(千葉大学医学部6年)


 「留学はしてみたい。何の準備から始めればいい? モチベーションが上がらない……」。留学を志す医学生の誰もがぶちあたる壁だと思う。

 私は大沢樹輝君(東大医学部6年),久野真弘君(慶大医学部6年)らと一緒に,短期臨床留学をした6年生による講演会・懇親会(2018年9月30日,会場=慶大信濃町キャンパス)を企画。当日は全国30以上の大学から,1年生から6年生まで150人を超える医学生が集まった(写真)。主催側のわれわれとしては,これだけの人数が集まったのは驚きであった。

 多くの医学部が国際化をうたう時代であり,留学報告会はどこの医学部でもある。しかしこれだけ多様な大学の学生がこれだけの数集まって留学報告会を行ったことは,私の知る限り初めてではないだろうか。

 懇親会では,どんな話を聞きたいかの要望を事前に聞いた上で1~6年生をグループに分けて話す時間を設け,大盛況に終わった。また許可を得た上で,「名前・大学・学年・メールアドレス・留学先」を記した名簿も作成し,集まりの後も連絡を取れるようにした。

 この報告会にはどのような需要があったのだろうか? ひとつ目は情報交換にある。インターネット上には数多くの情報があるものの,情報の質にはバラツキがあり,何を信じればいいかわからない。本の情報も古いかもしれない。最新かつspecificな情報は,現地に最近行った人に「直接」聞くのが確実なのだ。

 特に,自大学の協定校以外に留学する人にとって,今回のようにさまざまな医学生が集まる場は絶好の機会である。なぜなら,自大学の先輩から得られる情報が少ないからだ。また個々の留学先で多少の違いがあるにせよ,CV(履歴書)・PS(志望動機書)の書き方,推薦状や奨学金の取得,英語や医学知識の習得などは短期臨床留学を行う上で共通する部分がある。

 ふたつ目に,モチベーションの維持である。留学にはTOEFL,USMLEの試験などが必要とされる。しかし,一朝一夕には良い点数を取れない。同じ試験を頑張っている仲間を作って時々話すだけでも,やる気が出てくる。

 この報告会は,臨床留学に興味がある同学年のLINEグループがきっかけとなっている。私自身は,6年次に2か月間,米国へ短期臨床留学した。自大学の協定校以外に留学した際は,LINEグループで知り合った他大学の学生を事前に知っていたことで,より充実した留学生活を過ごすことができた。他にも準備から留学後まで多くの方々に助けられた。今回の報告会を企画した動機に,お世話になった方々の教えを伝えることで,「水の流れを滞らせない」ようにしたかったこともある。

 さっそく次の動きもある。「臨床以外の留学にも興味がある」という声に押され,前述の大沢君を代表に留学報告会スピンオフ企画を実施した。「MPH/MBA/PhD取得の魅力と留学へ至る道」と題し,それぞれの課程を修了した後にさまざまな場所で活躍している先生方を招いた(2018年11月10日,会場=東大医学部本館)。

 似た志を持った者同士の,大学の垣根を越えたつながりは,卒後も続いていくと思う。来年度だけでなく,同様の企画が絶えず続くことを心から願っている。


うえはら・ゆうじ氏
腫瘍内科医を志し,本紙座談会「がんのジェネラリスト 腫瘍内科医」(第3202号)に参画。6年次にはMDアンダーソンがんセンター,シカゴ大,イリノイ大で実習を行った。留学報告会主催団体への連絡はigakuburyugaku@gmail.com(メールを送る際,@は半角にしてご記入ください)まで。

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