医学界新聞

2018.01.22



独自性あるカリキュラムで教育の質向上を


 日本看護系大学協議会(JANPU)主催の「看護学士課程教育の質を高めるカリキュラム開発に関する研修会」が2017年12月25日,日赤看護大広尾ホール(東京都渋谷区)にて開催された。

 JANPUでは2018年3月24日の報告に向け「看護学士課程におけるコアコンピテンシーと卒業時到達目標」(以下,「コアコンピテンシー」)の準備が進む。看護学士課程教育の質保証をめぐる動きは,2017年9月に日本学術会議が「大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準 看護学分野」(以下,「参照基準」)を報告し,翌10月には文科省が「看護学教育モデル・コア・カリキュラム」(以下,「コアカリ」)を公表。2018年度中には日本看護学教育評価機構(仮称)が設置され,2021年度から分野別認証評価が開始される予定だ。看護学教育の質保証に向け,各大学はどのような取り組みが求められるのか。演者5人の発表とパネルディスカッション(座長=国立看護大・井上智子氏,JANPU常任理事・岡谷恵子氏)によって,各大学が独自性を発揮すべきとの方向性が示された。

参照枠組みは,看護学教育の枠組みと各大学の教育理念に合致するかの視点で検討

上泉和子代表理事
 JANPUは看護学士課程教育の質保証に向け,①カリキュラム開発,②教員の資質向上,③評価の3つの循環を重視する。代表理事の上泉和子氏(青森県立保健大)は,質を保証するカリキュラム開発には「大学の理念,ポリシーに基づいた検討が必要であり,大学教員にはその能力が求められる」と語った。

 看護系大学のカリキュラム編成における前提条件として,「4年間の在学年数」と「必要な単位数124単位以上」は大学設置基準,「教養基礎13単位」および「看護専門分野の84単位」は保健師助産師看護師学校養成所指定規則によってそれぞれ定められる。したがって,各大学の裁量で自由に決められるのは27単位以上が該当する。JANPU理事の菱沼典子氏(三重県立看護大)は,カリキュラムとは法規則を満たした上で,「各大学の設置目的,教育目標を踏まえ独自に編成されるもの」と述べた。

 「コアコンピテンシー」については,JANPU看護学教育評価検討委員長の小山眞理子氏(日赤広島看護大)が経過を報告した。2010年度報告の5群20項目から発展的に改訂された今回は6群25項目となり,Ⅰ群「全人的に対象を捉える基本能力」が大きな追加となった。教育課程における6群25項目の位置付けも図示され,アドミッション・ポリシーやディプロマ・ポリシーなどとの関連性が高い,各大学が独自に考えるべき点との違いにも言及された。

 分野別評価の開始を前に各大学は,「コアコンピテンシー」「コアカリ」「参照基準」の3つの枠組みをどう参照すればよいのか。日本学術会議「参照基準」策定に携わった内布敦子氏(兵庫県立大)は,参照基準は「規制的な性格を有するものではない。教育課程の編成は各大学とその教員が責任を負うべきもの」とその性質ととらえ方を確認した。日本看護学教育評価機構(仮称)設立準備委員長の高田早苗氏(日赤看護大)は,3つの参照枠組みは作成に至る経緯や検討時の考え方が異なり,共通点もあれば独自の視点もあると指摘。参照する枠組みは「いずれか1つを選ぶのではなく,教育理念と看護学教育の哲学に合致するかの視点で検討すべき」と語った。

 「コアカリ」については,パネルディスカッションの中で座長の井上氏から,「各大学におけるカリキュラム作成の参考となるよう学修目標を列挙したもの」,「カリキュラム編成は各大学の判断により行うもの」との記載があることが紹介された。上泉氏は,「カリキュラムマネジメントは教員1人の思いだけでは難しい。質の高いカリキュラム構築には組織化を図り,各種枠組みを参照しながら取り組んでほしい」と強調した。その上で,「JANPUは,大学管理者のためのアカデミック・アドミニストレーション研修にも力を入れていく」と締めくくった。

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