医学界新聞

2017.11.06



第4回日本サルコペニア・フレイル学会開催


石井好二郎大会長
 第4回日本サルコペニア・フレイル学会大会(大会長=同志社大・石井好二郎氏)が10月14~15日,同志社大(京都市)にて開催された。2016年に研究会から学会に改組されて初めての大会となった今回は,753人の参加者を集め,各会場では多職種を交えた議論が行われた。本紙では,シンポジウム「医原性サルコペニアの廃絶を目指して」(座長=横市大附属市民総合医療センター・若林秀隆氏,熊本リハビリテーション病院・吉村芳弘氏)の模様を報告する。

医療者がサルコペニアの原因を作っていないだろうか

 高齢入院患者の増加に伴い,疾患の治療だけでなく,退院時まで身体機能を落とさない対応が医療機関に求められるようになっている。若林氏は医原性サルコペニアを,「医師・看護師などによって病院・施設で作られるサルコペニア」と定義し,「とりあえず」の安静・禁食,不十分な栄養管理,医原性疾患がその原因と解説した。医原性サルコペニアの予防や治療にはリハビリテーション(以下,リハ)栄養の考え方が有用だとし,「リハからみた栄養管理」や「栄養からみたリハ」の推進を提言した。

 「療法士によるリハに加え,すきま時間で起立訓練などの筋力増強訓練を行うべき」と提言したのは吉村氏。高齢入院患者の医原性サルコペニアを引き起こす「低活動」の2大要因は床上安静と運動制限だと分析した。床上安静は筋量減少やADL回復遅延,ADLの最終到達レベル低下につながるという。積極的な運動療法と栄養療法を取り入れ,医原性サルコペニアの発生,増悪を予防することが求められていると結んだ。

 回復期リハ病棟では入院中にるいそう患者が増加すると報告されている。管理栄養士の西岡心大氏(長崎リハビリテーション病院)は,「回復期病棟での医原性サルコペニアには疾患由来だけでなく,予防可能な低栄養の症例も含まれている」と現場での栄養管理の問題を提起した。低栄養患者の90%に,回復期病棟入院前から食事摂取量減少が認められたという氏の調査をもとに,入院直後から栄養サポートを行い,継続的にモニタリングすることの重要性を訴えた。

 摂食嚥下障害は大腿骨骨折での術後や誤嚥性肺炎後でも多発することから近年,神経学的メカニズムではない嚥下関連筋の生理学的変化が注目されている。前田圭介氏(愛知医大)は,入院により引き起こされる摂食嚥下障害(入院関連摂食嚥下障害;HAD)に医原性サルコペニアによる嚥下筋の筋量・筋力減少が関連すると解説。医原性サルコペニア対策としてのリハ栄養はHADの予防につながるとの見解を示した。

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