医学界新聞

2017.07.31



安心の医療を提供する手術室マネージメント

第42回日本外科系連合学会の話題より


 重大な手術関連有害事象を防ぐためには,多職種による手術室マネージメントが欠かせない。第42回日本外科系連合学会(6月28~30日,ホテルクレメント徳島他)では,パネルディスカッション「手術室マネージメント――安心の医療を提供するためのチームのちから」(座長=九州がんセンター・藤也寸志氏,大船中央病院・真船健一氏)において,医師・看護師らが各施設の実践を紹介した。

 川崎市立多摩病院では,2012年より手術室バリアンス報告制度を開始。再手術・手術時間延長等の13項目に基準を定め,逸脱例をバリアンス事例として報告義務化している。同院の朝倉武士氏は,リピート事例の洗い出しや事例を踏まえたシミュレーション教育を行うことが,手術室の安全性向上や透明性確保に寄与していると述べた。

 「測れないものは改善できない」。全例を分母とした定量的評価の必要性を訴えたのは,岩手県立中央病院の宮田剛氏だ。同院では2016年から,手術部における手術オカレンスと,消化器外科における手術合併症の全例報告制度を実施している。両報告制度によって医療安全上の問題点が明確化され,マーキング未実施数の減少などの改善効果があったことを明らかにした。

 手術・麻酔医療の質を保つには看護師の関与が不可欠だが,多様な業務に追われて患者に向き合えない状況がある。聖隷浜松病院では,看護師が本来の業務に集中できるよう,手術部関連職種への業務移行を実施。医療機器に精通する臨床工学技士が清潔補助業務を担うほか,事務員5人体制で予定手術の調整や統計作成を担う。同院の鳥羽好恵氏は,「多職種が,単に医師の補助ではなく,“自ら動いて判断する”ことの誇りを持てる環境づくりが重要」と強調した。

 その他,看護師が参画する周術期カンファレンス,内視鏡外科手術のライセンス制度などの取り組みが各施設から報告された。総合討論では,バリアンス/オカレンス報告制度導入の準備の仕方や,運用を形骸化させないための工夫が話し合われた。

パネルディスカッションの模様

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