医学界新聞

2017.04.10



新専門医制度下の循環器専門教育


 新専門医制度下の基本領域(19領域)に関しては,2017年8月頃の専攻医募集開始,2018年4月の研修開始が予定されており,その後のサブスペシャルティ専門研修についても現在急ピッチで準備が進められている。第81回日本循環器学会学術集会(3月17~19日,金沢市)では,会長特別企画「新内科専門医制度施行を控えての循環器専門医教育」 (座長=広島大・木原康樹氏,榊原記念病院・吉川勉氏)において新専門医制度下におけるサブスペシャルティ領域研修の課題が議論された。


 日本専門医機構が定めた新整備指針では,サブスペシャルティ専門研修について以下の方針が固まっている。

①プログラム制/カリキュラム制のいずれも可。
②研修施設群の形成は必須ではない。
③基本領域とサブスペシャルティ領域の連動研修(並行研修)を可能とする。

 これらを踏まえ,冒頭で座長の木原氏が新専門医制度の最新動向を説明。①については「従来のカリキュラム制に時間軸(○年目に△を習得)を加味したのがプログラム制」と両者の違いに言及した上で,「内科学会は原則としてプログラム制で進める意向。内科関連13学会にはカリキュラム制を支持する意見もある」と解説した。

外部団体による監視と緊張関係が必要とされるエビデンス

 米国における専門医教育の概要を紹介したのは香坂俊氏(慶大)。米国では,社会全体で必要とされる医師および各領域の専門医数をACGME(卒後医学教育認可評議会)が推定し,そこから各施設で研修可能なフェローの数が割り出される。研修の内容については,ACGMEの指針に従って学会の専門部会がカリキュラムを作成。「大枠を決めるが,あとはプログラムを信頼する」のが米国の特徴だという。ただし,その信頼が裏切られた場合には厳罰が待っている。ACGMEの査察により,名門大学であっても業務改善命令やプログラム認定取り消しを受けた実例を提示。外部団体による監視を必要とするのは,「医師は“自分が苦手とする領域”を客観的に把握できていない」というエビデンス(JAMA. 2006〔PMID: 16954489〕)があるからだと強調した。香坂氏は「ACGMEなど外部団体と学会・施設の間には強い緊張関係がある」と指摘。一方,日本は学会が専門医制度に主体的に関与する方向に舵を切ったことに触れ,「緊張感を“学会”という枠内で維持できるかどうかが,最大の課題ではないか」と考察した。

循環器専門医は3つのコース,18年6月プログラム公表予定

 続いて,日本における新専門医制度下の卒前・卒後教育に関して各氏が口演を行った。医学教育については寺﨑文生氏(大阪医大)が登壇。クリニカル・クラークシップの充実が今後求められる中,モデル・コアカリキュラムの重要事項を中心に解説した。

 岩永善高氏(近大)は新内科専門医制度の概要を説明。前述の通り,専門医機構の新整備指針において基本領域とサブスペシャルティ領域の連動研修(並行研修)が認められた。これにより内科専門研修は,①内科標準タイプ,②サブスペシャルティ重点研修タイプ,③内科・サブスペシャルティ混合タイプに大別されると述べた()。

 内科専門研修とサブスペシャルティ専門研修の連動研修(並行研修)の概念図(日本内科学会ウェブサイトより一部改変)(クリックで拡大)

 循環器専門医カリキュラムの今後については白山武司氏(京府医大)が報告。新専門医制度は基本領域とサブスペシャルティ領域の2階建て構造となり,3階に該当する専門研修は設けていない。これを踏まえ循環器関連学会では,標準的な「循環器専門医」に加え,心血管インターベンションの習得に重点を置く「循環器専門医・CVIT認定」,不整脈治療デバイスの習得に重点を置く「循環器専門医・不整脈認定」という3つの専門医コースを想定している。また,心臓血管外科専門医,小児循環器専門医からの移行措置についても,研修年限の短縮や内科的疾患の追加研修などの可能性も含めて検討中であるとした。

 続けて,CVIT専門医に関して原英彦氏(東邦大医療センター大橋病院)が,不整脈専門医に関して池主雅臣氏(新潟大)がそれぞれ現状を説明。いずれの領域も治療の進歩によって習得すべき知識や技術の拡大,専門分化が進んでいると考察し,新制度においてこれらの専門性をどう担保するか,課題が提示された。

 新たな循環器専門医制度に関しては,「2018年6月のプログラム公表,2019年4月からの症例登録開始」を見込んでいるという。

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