医学界新聞

2017.01.16



日本臨床疫学会発足記念講演会開催


 日本臨床疫学会発足記念講演会(会場=東京都文京区・東大弥生講堂)が2016年12月18日,福原俊一会長(京大/福島県立医大)のもと行われた。講演会には立ち見も出るほどの参加者が集い,各臨床領域の次世代の臨床研究を担う演者らによるセッションや,ビッグデータを活用した臨床研究の現状と展望に関するシンポジウムにて,活発な議論が交わされた。

臨床疫学によって,医療が直面する諸課題解決に貢献を

福原俊一会長
 講演会の終盤,同学会の代表理事でもある福原氏が,学会設立の経緯やミッションについて語った。日本は急速な高齢化に伴う人口構成の変化により,医療提供体制に関する大きな政策転換を求められている。それに伴い,早期発見・早期治療によって寿命の延伸を目的としてきた医療のゴールは,与えられた寿命をいかにより良く生きるかを考える方向へとパラダイムシフトが起きた。治療と予防の両方を担う今後の医療においては総合診療医や総合内科医の重要性がますます高まると語った氏は,「医療」だけでなく「医学」にもパラダイムシフトが必要だと指摘。臨床現場で活躍する医師は切実で意義の高いリサーチ・クエスチョンを持っていながら,科学的研究を行うためのリテラシーや方法論を十分には有していないことから,新たな学術基盤が必要であり,臨床疫学研究がその基盤となり得るのではないかと期待を寄せた。

 また,上流に基礎研究,下流に臨床を位置付け,基礎研究の成果を臨床へと応用するトランスレーショナルリサーチモデルには限界もあると考察。疫学や遺伝学などの知識を結集し,データベースを活用したアプローチが重要になるとの考えを示した。そうしたアプローチの一例として,日本や米国,欧州などが合同で行ったDialysis Outcomes and Practice Patterns Study(DOPPS)を紹介した。この観察研究の結果が世界の診療現場や,診療報酬改定などの政策に影響を与え,施設の研究参画意欲や若手臨床医の意識まで変えたと述べ,観察研究やデータベース研究の持つ可能性に言及した。氏は,日本でも近年アクセスが可能になってきたビックデータの活用について触れ,ついに臨床疫学の適時が到来したと喜びを見せた。

 今後の学会の活動に関しては,医療者だけでなく,企業や行政などの専門家も一堂に会し,対等な立場でお互いを高め合う「場」を提供していきたいと語った。さらに,中立的・領域横断的な立場から,データベース研究の標準的方法論を提示していくことにも意欲を見せ,会場内の参加者に協力を呼び掛けた。第1回の年次学術大会は,康永秀生氏(東大)を大会長に2017年9月30日~10月1日,東大(東京都文京区)にて開催予定だという。

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