医学界新聞

2016.09.05



第48回日本医学教育学会開催


パネルディスカッションの模様
 第48回日本医学教育学会大会(大会長=阪医大・大槻勝紀氏)が7月29~30日,「医学教育のグローバルスタンダードにおける大学の独自性」を主題に,阪医大(大阪府高槻市)にて開催された。本紙では,パネルディスカッション「プロフェッショナリズムの学習目標は医学教育を縦貫できるか?」(座長=名大・伴信太郎氏,JCHO横浜保土ヶ谷中央病院・後藤英司氏)の模様を報告する。

プロフェッショナリズム教育をどう縦貫させるか

 冒頭,同学会倫理・プロフェッショナリズム委員会の野村英樹氏(金沢大病院)が,本企画の趣旨説明を行った。現在,卒前教育では「医学教育モデル・コア・カリキュラム」(以下,コアカリ),医師臨床研修では「臨床研修の到達目標」(以下,到達目標)の改訂が進められている。また,専門研修では「プログラム整備基準」が見直し中であり,生涯教育においては「日本医師会生涯教育カリキュラム2016」が出された。こうした動向を受けて氏は,「この機会にプロフェッショナリズムの位置付けを医学教育の中で一貫したものにしたい」と議論の進展に期待を示した。

 文科省の佐々木昌弘氏は,2017年3月のコアカリ改訂に向けた進行状況について,プロフェッショナリズムを医師教育においていかに縦貫したものにし,なおかつグローバルスタンダードに対応できるかを念頭に議論していると説明した。国試出題基準との対応や医師として持つべき技能を中心に構成された2001年の策定時とは異なり,本改訂は,地域包括ケア推進や医師の地域偏在対策などの現状を踏まえた「社会に求められる医師像」を示す方向へとかじを切るものであり,重要な意味を持つとの見解を示した。

 コアカリと到達目標の改訂が同時期に進む今,これを「千載一遇のチャンス」と述べたのは,福井次矢氏(聖路加国際病院)。到達目標見直しの方針として,①1990年代以降の教育学で「コンピテンシー」と表現する概念に則り,②医師としてのキャリアの全段階における共通の到達目標作成の2点を掲げ,「現時点での案」として「医師としての基本的な価値観」4項目,「資質・能力」9項目を列挙した。プロフェッショナリズムについては,「知識・技術を含めるよりも,医師の行動の根底にある心構えや価値観としてとらえるのが定義上よい」と述べ,前記の4項目として示したという。氏は,「これらの項目は大学入学から生涯教育まで,医師キャリアの全期間に適応でき,各段階に応じて内容の深さを変えながら活用できる目標になる」と意義を語った。

 専門医の質向上については,日本専門医機構にて新専門医制度の設計に携わった池田康夫氏(早大)が発言した。医師の資質を含めた質の向上を目標に掲げた新制度では,「地域医療の経験を積むこと」や「リサーチマインドの涵養」を重視して盛り込んだという。質の良い専門医育成には良い指導医が必要との観点から,指導医の要件を明確化した点にも触れた。

 医師の生涯学習が幅広く効果的に行われるための支援体制に,日本医師会生涯教育制度がある。日医の羽鳥裕氏は,2016年4月に適用されたカリキュラムの改正概要を紹介。中でも83あるカリキュラムコードのうち,「医師のプロフェッショナリズム」を含むコード1~15の改訂を行い,新しい専門医制度の仕組みに円滑に対応できるようにした点を強調し,本制度の活用を呼び掛けた。

 総合討論では,「プロフェッショナリズム」の位置付けを「方向目標」でとらえてはどうかとの提言や,入学者選抜も「縦貫」の議論の対象に加えるべきとの意見が挙がった。

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