医学界新聞

2015.11.23



看護教員「実力養成」講座2015開催

看護実践の向上に必要な研究力の教え方


坂下玲子氏
 看護教員「実力養成」講座2015(主催=医学書院)が10月3日(大阪府大阪市・新梅田研修センター),24日(東京都千代田区・全社協灘尾ホール)の両日開催された。来春より『系統看護学講座』シリーズに「別巻 看護研究」が加わることを受けて開催された本講座は,著者の坂下玲子氏(兵庫県立大)を講師に迎え,「看護実践の向上に必要な研究力の教え方」をテーマに3時間半にわたって行われた。本紙では,24日に行われた講座の模様を報告する。

育てたい人材を明確にし,教育目標を設定する

 看護研究は,多くの大学・専門学校で指導されている。しかし研究者をめざす学生は少なく,卒後の臨床現場で義務付けられていることも多いとはいえ,ほとんどの学生にとって研究を学ぶ動機は乏しい。教員にとっても,限られたカリキュラムの時間的な制約の中での講義であり,看護研究の授業は難しいという印象を持つことが多いのではないだろうか。

 臨床家をめざす学生に向けてどのように看護研究を教えていけばよいのか。坂下氏は,まずは教員自身が養成課程で育成したい人材を明確にし,めざす人材像を基に「看護研究」の授業,教育目標を位置付けることを呼び掛けた。看護研究者でなくとも,看護職の責務として「自分のケアの意味を説明できること(看護行為に責任が持てること)」「科学的根拠に基づいた最良の看護を提供すること」「絶えずよりよいケアをめざすこと」は常に必要となる。そしてその実践は,研究技法を用いることで効果的に行えるようになる。すなわち,基礎教育において求められるのは,「研究(新たな知の創造)」能力ではなく,「看護実践を改善し,発展させていく能力」を身につけることだといえる。

 氏は,基礎研究で特に育てたい力として,①情報を探索・収集する力(文献検索と検討),②情報を正しく吟味する力(文献クリティーク),③疑問や課題を解決する力(研究計画の立案)を挙げた。氏の研究室では,実践者をめざす学生と研究を結び付けるため,EBP(Evidence Based Practice)の実践を目標とした統合看護実習を行い,実践研究(卒論)では実習を踏まえた研究的取り組みの経験をさせているという(詳細は,『看護教育』誌2015年9月号(56巻9号)特集「『看護研究』で実践力を鍛える」でも紹介)。講義の後半では,実際に氏が行っている授業のシラバス,授業のコマ数に合わせた授業設計も例示された。さらに,目標とするレベルに合わせた計画書の作成,リサーチ・クエスチョンの立て方が具体的に示された。ケーススタディの指導演習なども行われ,集まった看護教員からは「実際の指導方法を具体的に考える機会になった」「基礎教育では,実践力を高めるための研究活用を教え,学生に動機付けることの大切さをあらためて感じた」などの感想が寄せられた。

*『系統看護学講座 別巻 看護研究』は今冬発行予定

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