医学界新聞

2014.05.26

診療所看護師の育成体制を考察


 プライマリ・ケアの充実が叫ばれている今,地域の医療を支える診療所看護師の役割はますます重要になっている。しかし,これまで診療所看護師の役割・能力は十分な議論がなされてこなかったために明確化されておらず,看護基礎教育・卒後教育のいずれにおいても,診療所看護師としての能力を開発する体制が整っていない現状がある。第5回日本プライマリ・ケア連合学会(大会長=岡山家庭医療センター奈義ファミリークリニック・松下明氏,2014年5月10-11日,岡山県岡山市)にて企画されたシンポジウム「診療所看護師育成を考える」(座長=石橋クリニック・石橋幸滋氏)では,診療所看護師に求められる役割と能力,それらを身につけるために必要な教育体制が議論された。

構造化された教育体制が求められる

 シンポジウムではまず,厚労省医政局看護課看護サービス推進室の島田陽子氏が診療所看護師の育成に関連する制度の動向を解説。また,岡山県看護協会の石本傳江氏から,地域ケアを担う看護師の育成体制の現状として,同県での取り組みが紹介された。

 プライマリ・ケア機能を担う診療所の医師・看護師を対象に行った調査結果を基に,診療所看護師の果たすべき役割と必要とされる能力について報告したのは,森山美知子氏(広島大大学院)だ。氏は,診療所看護師が担うべき役割として,(1)外来機能:個人および家族の健康を守る役割,(2)在宅支援機能:人々が住み慣れた場所で安心して療養でき,最期を迎えることを支援する役割,(3)地域支援機能:地域の健康問題に対処する役割,(4)診療所をマネジメントする役割を列挙。その上で,それらの役割を果たすために必要な基本能力として,「地域で生活する人々の尊厳と権利を擁護する能力」「継続的な人間関係を維持するためのコミュニケーション能力」「家族志向を実践する能力」「専門職者として研さんし続ける能力」などを挙げた。氏は,「在宅医療,地域医療へとシフトしていく中では,戦略的にプライマリ・ケアを担う診療所看護師を育成していくことが必要。構造化された教育体制が求められる」と指摘。看護基礎教育課程においてプライマリ・ケアに関する実習の導入,保健師教育と地域看護学を充実させることの他,診療所に勤務する看護師に向けた卒後教育プログラムの作成などを提言した。

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