医学界新聞

2014.05.19

Medical Library 書評・新刊案内


≪眼科臨床エキスパート≫
オキュラーサーフェス疾患
目で見る鑑別診断

吉村 長久,後藤 浩,谷原 秀信,天野 史郎 シリーズ編集
西田 幸二,天野 史郎 編

《評 者》妹尾 正(獨協医大教授・眼科学)

成書との併用で縦横の知識が網羅できる外来必携の一冊

 本書は,「眼科臨床エキスパート」シリーズの角膜疾患編である。これまでの成書として確立された定番の説明だけにとどまらず,最先端の知見・技術を含む基礎知識や臨床応用,トピックスが盛り込まれている。角膜形状解析,PCRなどの遺伝子検査,前眼部OCT,電子顕微鏡,共焦点顕微鏡といった,現状でも新たな利用価値や開発が進み続けている機器の解説や実際の所見がふんだんに盛り込まれている,頼もしい一冊である。

 何よりも本書に魅力を感じる点は,その読みやすさ(使いやすさ)にあると思う。一般診療でわれわれ臨床医がとる診断・治療の過程のなかで成書や文献は,問診・診察より得られる情報から臨床経験を通して想起される診断・治療の確認や確定診断にむけたさらなる検査,ベストチョイスであろう治療法の選択を確立するための一手段として用いられている。しかし実際には日常診療のなかで素早く診断・治療を決めてゆくためには,揺るぎない知識が要求されるうえ,必ずしも自分が専門とする疾患を患う患者のみが選択的に自分のもとに来るわけではない。中には典型的な所見を呈する患者だけではなく,専門分野であっても診断がつきにくい疾患もあまたある。このような現状で,多くの成書は疾患について詳細にまとめあげたものが多い。例えば「角膜上皮欠損」→「異物」「CL障害」「アレルギー」「感染症」「薬物障害」などなど多くの原因を想起し診断・治療へと進んでゆくわけだが,鑑別が困難な場合(または治療効果が得られない場合)成書をひもとくのはやや手間がかかる(もっともこれらを繰り返してゆくことが,医師としての知識につながってゆくのだが――)。この点で本書はまとめ方がユニークで他の成書と併用し得る興味ある一冊となっている。われわれ眼科医が診療上最も得られやすい臨床所見,例えば「点状表層角膜症の鑑別」「角膜上皮欠損の鑑別」といったようにまとめあげられているのである。これまで本書のようなまとめ方は,ありそうでなかった。なぜならば,このようなまとめ方を求めると疾患や診断・治療法が大きく重複してしまい複雑かつ膨大になってしまうからである。本書はこの点をきれいに整理し非常に理解しやすくまとめ上げている。また基礎知識,所見,疾患概念,検査が先端技術や治療法を含めて段落ごとに整理されており,大変使いやすい。疾患ごとに整理された大きな成書も一冊必要とは思われるが,本書と併用することによって縦横の知識の網羅ができる外来必携の一冊である。

B5・頁320 定価:本体15,000円+税 医学書院
ISBN978-4-260-01873-9


ティアニー先生の心臓の診察
[CD-ROM付]

ローレンス・ティアニー,松村 正巳,青木 眞 著

《評 者》瀬尾 宏美(高知大教授/高知大病院総合診療部)

洗練されてわかりやすい心臓診察の「秘伝の書」

 これは単なる「訳本」ではありません。松村正巳・青木眞の両氏がローレンス・ティアニー先生という診断のマイスターをお迎えして,私たちにわかりやすく心臓の診察を伝授する「秘伝の書」です。秘伝ですが皆さんにこっそり中身をお教えします。

 本書はまずティアニー先生による問診の解説,次に松村氏による心臓の視診・触診のエッセンス,そしてティアニー先生による心臓聴診「口まね」レクチャー,最後にティアニー先生秘伝のパールでまとめられています。付属CDにはレクチャーの録音ファイルが収録されており,ティアニー先生の指導を受けているような臨場感あふれる企画です。なんと途中で日野原重明先生が登場され,ご自身のパールも披露されます。

 「知っているから聴こえる。知らなくては聴こえない」。

 心臓聴診に限らず診療のあらゆる場面で生かされるパールです。

 文章は大変読みやすく洗練されており,医学生や研修医は何度も読み込むことで専門医レベルの心臓診察を学ぶことができます。さらに看護師や臨床検査技師にも心臓診察の入門書としてお薦めいたします。私自身,循環器内科医として何年もかけて身につけてきた技術をこれほどまでに簡潔に伝えることができることにショックを受けました。指導者にとっても指導力向上に役立つ一冊と確信しています。

 次作の登場が待ち遠しい限りです。

A5・頁114 定価:本体3,500円+税 医学書院
ISBN978-4-260-01926-2


妊婦健診に一歩差がつく
産科超音波検査

谷垣 伸治 著

《評 者》小笹 幸子(聖バルナバ助産師学院教務部長)

学生,新人助産師必携コンパクトにまとまった産科超音波検査テキスト

 助産師は対象妊婦の健康診査から,ガイドラインに従って,対象妊婦を独自で管理してよいのか,産婦人科医が管理すべきかの識別ができなくてはならない。包括的な胎児の健康状態の評価法として,バイオフィジカルプロファイルスコアなどがあり,胎児心拍数モニタリングと産科超音波の所見の判読が求められている。助産師国家試験出題基準にも,母体,胎児の健康診査に必要な検査についての基礎知識として,超音波検査機器の使用法・超音波胎児計測・超音波血流計測がある。その一方,法的な整備はなく,看護では画像そのものを判読し判断する経験をしてきていない。初学者にとって,超音波画像の白黒やカラードプラの映像は,妊婦さんと同様,説明されるまで「なにがなんやら」である。

 本書は,産科超音波検査でどこを見るべきで,それはどのように描出されるのか,イメージしやすいようイラストが添えられ,正常と異常がわかりやすく対比されている。超音波検査の基本や用語の解説はよりすぐってあり,明快である。また超音波検査に関連して,モニタリング,陣痛周期,胎児下降度など覚えなくてはならない数値がやたらと多いが,ポイントとなる胎児の発育過程や計測値などがコンパクトに示されている。

 本学の妊娠期の実習では,妊婦健診の待ち時間から付き添ってお話を伺い,診察の介助後に保健相談させていただく。妊娠時期(出産予定日がどう決定され,現在の妊娠週数は妥当か),妊娠経過(母体の健康状態や子宮頸管長に問題はないか),胎児の発育と健康状態,体位,胎児付属物に異常はないかを評価する。さらに,妊婦の生活やマイナートラブルや心理状態をアセスメントし,保健相談(指導)を行う。「何も問題がない」妊婦さんでも,妊娠の時期に応じた保健指導の項目がある。これら一連の流れを体験し,その内容を教員や指導者に伝える。当日に同意を得られる妊婦さんに行うため,ぶっつけ本番。また,お待たせする時間をなるべく短くすべく,助産診断せねばならない。これらを短時間で行わなければならないという不安や焦りのなかで,本書が大いに活用されると思う。

 知識や数値が頭に入っていないとき,テキストが身近にあればと思う人も多いだろう。実習で経験を積んでいく上で,即時参照できる本書は学生にとって大変に有用である。また,実習時の学生の荷物は重いが,ユニホームのポケットにすっきり入り,すぐに取り出して確認できるのも利点である。助産師学生だけでなく,新人助産師,助産師外来を担当し始めるかたがたにもお薦めの一冊である。

B6・頁120 定価:本体2,200円+税 医学書院
ISBN978-4-260-01947-7

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